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隠れ家の不良美少女 80 タコパ

器具と材料が揃ったので、たこ焼きパーティを始める。
俺は実家で多少の経験があったので、なんとなく焼いてみた。
希和はやりたくてうずうずしている。
「希和もやりた〜い!」
「ほら」素材と道具を渡す。
希和は難しい顔をして、生地を入れた。 たこ焼き器にビヤッと広がる。
「むずい!」
希和は小学生のような顔で、必死に焼いている。
俺と希美子さんは顔を見合わせて笑った。

なんとか慣れてきて食べられそうになったので、希美子さんはハイボールを出してくれた。俺は今夜も泊まりになるようだ。
チーズやウインナーなども焼いた。
「楽しいねえ」希和は満面の笑みで食べている。
希美子さんもたこ焼きをつまみにお酒を飲んでいる、とても楽しそうだ。
俺も嬉しくなった。

「これからは希和がキナコである事を秘密にするのが大変だと思います」
「そうね、いくらメイクしても隠せないことだって出てくるわよね」希美子さんも頷いた。
「ですから、昼間は秩父のガレージハウスに居てもらうことが増えるかもしれません」
「それは仕方ないわね」
「車が来たら、夜にはここに帰って来ることができるようになります」
「お世話をおかけします」希美子さんは頭を下げた。
「出来るだけ、希和が希美子さんと一緒に居れるように努力します」
「有難うございます」
「お母さん、希和はずっと一緒がいいのに」希和は口を尖らせる。
「そうね、お母さんもそうだけど、お仕事は頑張らなくちゃあね」
「分かった、希和は頑張るよ」

土曜になり、希和は歌のレッスンに天空カフェへ来た。
レコード会社が決まった事や色々と報告する。
千草さんはレコーディングに向けたレッスンを新たに初めてくれた。
希和はしっかりと上達しているようだ。
俺は少し安心した。

ガレージハウスに戻ると希和は食事の準備を始める。
「希和、大丈夫か?」
「多分…………」
俺は不安になる。

サラダとパスタを作るのに2時間ほど経過する。
「出来た〜!」
「希和特製パスタだよ」
俺は胃薬をそっと後ろのポケットに隠す。
食べてみると、意外においしかった。

胃薬は飲まなくてもよさそうだ。

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