星降る夜のセレナーデ 第47話 お兄ちゃん?
食事を終えた二人はログハウスへ戻って来る。黒いミニバンはすでに帰って来ていた。
「ママ〜、ただいま〜」志音ちゃんは美夜子さんへバタバタと駆け寄っている。
「お帰りなさい、楽しかった?」
「うん、楽しかったよ、ループ橋やダムにも行ったよ、それからモヒくんの先輩がやってるレストランでキノコハンバーグを食べたよ」嬉しそうに報告している。
「良かったわねえ、真人くん大変じゃなかった?」美夜子さんはチラッと俺を見た。
「全然大変じゃなかったです、ただ…………」
先生がソファーからグッと体を起こして俺を見る。
「ただ………?」
「お店にピアノがあるんですけど、志音ちゃんがあまりに上手なので、先輩と二人で固まってしまいました」
「なんだ、そんな事かあ〜」先生はソファーに力なく寄りかかった。
「志音ちゃん、まさか真人くんの先輩がいる所で『モヒくん』とか呼んでないでしょうね」
「呼んでないよ、ちゃんとお兄ちゃんって呼んでるよ」
「そう………」美夜子さんは少し安心したようだ。
するとまた先生がソファーからグッと顔を起こしてこっちを見る。
「そうか!志音は一人っ子だからお兄ちゃんができて良かったなあ〜」何度も頷いた。
美夜子さんと志音ちゃんは二人で顔を見合わせると、少し呆れた表情だ。
「お疲れ様でした、俺帰ります」3人に向かって軽く会釈した。
「モヒくん、今日はありがとう、楽しかったよ」志音ちゃんがペコリと頭を下げた。
俺はログハウスを後にした。自宅のガレージへ車を停めて外へ出る。
季節は春から初夏になろうとしていた。最近は時間が経つのが早い、しかし充実しているので気持ちはとても良い。とりあえず早く仕事を覚えたいと思っている。
「俺もいつか作曲家になれるんだろうか?」独り言が漏れてしまう。
部屋に戻りD T Mの本を読んだ、何となく仕組みがわかったような気がする。
これを自分で自由に使いこなせたらいいだろうなあと思った。
翌日は休みだった。しかし俺はスタジオの整理をしたくてログハウスへとやって来た。
テラスにいる志音ちゃんは、Tシャツとミニスカートでイチゴを食べている。
とても可愛くてキラキラしているように見えた。
「おはよう志音ちゃん」手を振る。
「おはようモヒくん、今日は休みじゃないの?」首を傾げた。
「うん、でもスタジオの整理をしたいと思ってね」
「そうなんだ」
「来週からコンピュータのシステムが入るから、今のうちに整理しときたいんだ」
「ふ〜ん、そうなんだ、でもとーたんはまだ寝てるよ?」
「じゃあ、ここで少し畑の管理をしておくよ」
俺は畑の柵を開けて中へ入る。収穫できる野菜や、植え付けた苗で、賑やかな畑になっていた。
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