二作品同時演出という暴挙を成す意味
新作 / 再演の稽古がはじまりました。どうぞ宜しくお願い致します。
Twitterで宣伝も兼ねて色々書こうかと思ったが、最近パパパっと文字を書いてパパパっと公開、ムムムっと反応を待つ、みたいな流れが、自分の生活リズムと嚙み合わず、久々にブログ形式で書いてみる事にします。文字数制限無いので、油断せず、あまり長くならないように気をつけます。お付き合いいただけますと幸いです。万博設計の橋本匡市です。
さて、私は演出家としてこの場にいさせて頂いております。
演出家は、俳優の身体、戯曲に書かれた言葉、用意された空間、そして訪れる(であろう /と強く願う)観客との間に漂う紐の在り方、美しい結び方を考える人だと思っております。
稽古場で積み重ねる時間の中で、より強く、より確実に、緊張感のある紐の在り方と、その紐を伝っていく熱を見つけ流れていけば、作品は自ずと命を宿すように感じる。経験上、それはおそらく間違いないです。
なので、稽古の時間は見えない紐をとにかく探す時間なので、終わると動いていないのになんだかんだ疲弊している。私は親譲りの「人より眼球が少しだけ、いや、結構早く動く」という謎の特殊体質の持ち主でして、せっかくの体質をこれでもかと使う事になり、稽古が終わると視野狭窄状態になってしまうのです。
なのに、今回、二作品同時上演という暴挙に出てしまった。疲れるの分かっているのに。先日は二作品連続で昼夜稽古だったので、終わったら何も考えたくないという気持ちにしかならなかった。とにかく目が眠いのでスマホを見るのもままならない。早速かい!という気持ちになった。
二作品上演という旗揚げ以来の暴挙のわけは、万博設計満10周年公演だからというのは非常に大きな理由ですが、個人的な目的として一つ、演出としての新たな地平に少しでも手を触れるべく挑戦している事案があったりします。
それは、解像度を(強制的に)下げて見える地平と解像度を(がんばって)上げて見える地平を繋ぐ演出方法の確立です。
劇場には観客(または消費者)として、私が知っている人も知らない人も、好きな人も嫌いな人もやってくる。やってきてほしい。と切に願っております。
ただ、私は40歳も越えてきて、独善的(この場合は良い意味です)に作品を作る勇気もなくなり、できるだけ多くの人により良い環境(作品の紐を手繰り寄せやすいと言う意味です)を用意し、作品に触れて感じてほしいという思いが強くなっております。
そんな事を感じている事もあり、最近の現場では、演出として稽古場にいて「いつもの私」という地平からの一方向の視点だけではこの作品には足りないなと感じちゃったりして、色々試しております。その総決算としての今作です。じゃあ多くの人が多くの目で演出すりゃいいじゃんという案も無くは無いと思いますが、見るべき地平(俳優、戯曲、空間)は一つなので、その地平を違った地平から見てしまうと、作品自体を乱視で見るような作品になってしまう。これは避けたいのです。船頭多くして船山に上る、ですね。
ゆえに「いつもの私」という地平から見えるという視野を信じつつ、その幅をがんばって、さらには強制的に広げる事で、同じ地平を同じ地平から、できるだけ多様に映る世界として提示してみたい。たぶんそれは、思っているより美しく、思っている以上の奥行きのある作品として提示できるようになるはずなのだと。まだ出来てないから分からないけれども。などなど。実験です。
40代からの作劇をサバイブする為に、何よりより良き作品を劇場に用意できるように、必死で新演出方法の確立をしようとしているので、早死にするかもしれません。生きてる間に見にきてください。
次回は「鮟鱇婦人」「YO RU TO RO TO RO」の二作について書きたいと思っています。色々書いておきたい事が沢山あります。少しでも琴線に引っかかるようでしたら、是非劇場で目撃してください。言葉では伝わらない事を作っていくのが稽古場の醍醐味なのです。チケット発売は9月15日18時です。早めのご予約お待ちしております。
それではまた。
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【公演情報】
万博設計13/14 10周年記念公演【再演×新作】
「鮟鱇婦人」×「YO RU TO RO TO RO」
●「鮟鱇婦人」●
作・演出:橋本匡市 出演:中田彩葉
病気がちで、笑う事が滅多に無い母を心配する幼い娘の由宇子。
あの手この手で母を笑わせようとするが、全く笑わない。
そんなある日、授業の一環で観た落語「死神」に衝撃を受け、弟子入りを志願する。
笑いの力で母を勇気づける事を目標にしてきた由宇子であったが、母は話す事すらままならなくなってしまう。
由宇子の目的も、身体も、そして時代も、ゆるやかに、でも確実に変わっていく。
グリム童話『死神の名付け親』をベースに初代三遊亭圓生が作った落語『死神』を使用し、
2013年に千田訓子一世一代一人芝居として上演した「鮟鱇婦人」が、中田彩葉の一人芝居として現代に蘇る
●「YO RU TO RO TO RO」●
作:サカイヒロト(WI'RE) 演出:橋本匡市
出演:千田訓子・空本奈々・槇なおこ・古後七海(以上万博設計)・加藤智之 (DanieLonely)
世界中いたるところに、突如「ドア」が出現した。
ドアを開けた人々はどこかへ消え、決して戻ってはこない。
そんなパニックの中、とある地方都市のとあるイベントの中止が決定した。
製作途中の巨大モニュメントも取り壊されることとなり、シートをかけられたまま。
解体作業の開始を明日に控えた深夜、モニュメントの設計者がふと思いたって現場を訪れると、
そこにはすでに何人もの先客がいた。
現場監督、イベント反対派、マスコットキャラクター、モニュメントの幽霊。
地上70メートルの足場の上、行き場のない5人は来なかった未来に想いをめぐらす。
▶︎会場 ウイングフィールド 〒542-0083 大阪府大阪市中央区東心斎橋2丁目1−27
▶︎日程 2023年
11/11(土) 鮟鱇 14:00 / YORU 19:00
11/12(日) YORU 13:00 / 鮟鱇 18:00
11/13(月) 鮟鱇 13:00 / YORU 18:00
▶︎チケット
・YORU一般 前売 3,500円 / 当日 4,000円
・鮟鱇一般 前売 3,000円 / 当日3,500円
・18歳以下(要証明書) 500円
・2作品セット(予約のみ) 6,000円
・初・万博観劇 2,800円
*初めて万博設計の公演を観劇する方限定のチケット。自己申告制
*2作品を観劇する場合は5,600円
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