ラグビー
エリス少年をご存じだろうか?いわゆるラグビーの発祥とされる人物である。Wikipedia「ウィリアム・エリス」の項ではこのように記述されている。
いろいろ事情があるとはいえ、この文だけ見ればガ○キチである。しかしながら、このエピソードを読んだとき、似たようなことが自分にもあったな、とふと思い出した。
小学5年の20分休みにはクラス対抗でサッカーをすることが日課になっており、その日は我々2組と1組との試合があった。
試合は大抵、各クラスにいるサッカー少年団の人が仕切っていた。たしかその時はこちらの方が団員が多かったように思う。
こちらに有利な試合だったのだ。
いつのまにかこちらが一点を決めて、相手チームのキックオフは毛利だった。
突然、毛利が足元のボールを抱えて走り出した。
僕たちは呆気に取られた。すぐに毛利を追いかけるが、あまりに突然のことなので脳の処理が追いついていない。
正直おふざけの感じではなかった。毛利はサッカー少年団に入っていない。サッカーの試合でそんな大胆なふざけ方ができるとは思えなかった。
なにより、まったく文脈がなかったのだ。
もちろんエリス少年の話など小学生が知るわけないし、「ボールを持つ」という考えに至るような出来事は何一つ、なかったはずだ。
全員で毛利を追いかける。ゴール前で待機していたクラスメイトが、ゴール内に突進する毛利を捕まえた。
僕も加勢した。その後相手も加勢して、全員でひとつのボールを奪いあう形になった。
そのときだった。
相手チームは全員で毛利を押し始めたのだ。それは僕が人生で初めて組んだモールだった。
僕ははじめ、まったく意味がわからなかった。なぜ彼らは毛利を押しているのだろう。
するとクラスメイトのひとりが横で叫んだ。
「おまえらっ!毛利ごと押し込む気だな!?」
きみ適応早くない?
モールは少しずつ、しかし確実にゴールの中に押しこまれていった。
「はい、決まった決まった!」
気づくと毛利はゴールポストの横にいて、僕らはネットの中にいた。
この小学校でおそらく、はじめてラグビーが行われた瞬間だった。
そのわずか1年後、日本ラグビーは南アフリカから大金星を挙げることになる。
その成功の裏にはエリス少年、そして毛利ーニョの奇行があったことを忘れてはならない。
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