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売れるから棚に並ぶのではなく、棚に並ぶから売れる

「こんな全然売れないもの棚に並べられるか!」…。
消費財業界に身を置く人であれば一度は聞いたことがあるセリフではないでしょうか?

売れないものは棚には並べて貰えない…そりゃあそうでしょう。コンビニでもスーパーでも小売りはお金を払って土地を借りてそこに建物を立て、棚を設置しているわけです。そして棚の数は有限です。

だからこそ棚には最大限売れるものを並べないと彼らもビジネスが立ち行かなります…。

という事で我々マーケターは消費者が求めているものは何か?何故求めているのかを考え、見極め、「これなら売れるぞ!」という商品を開発をします。そして売れるからこそ小売りも「おたくの商品売れているらしいね~うちも取り扱うわ~!」となり、どんどん配荷(お店の棚に並ぶこと)が拡大するわけです。

普通の流れで考えたらこれこそが健全な気もしますね?
しかしながら実は消費財業界では「売れるから棚に並ぶのではなく、棚に並ぶから売れる」という側面も存在するのです。

このnoteでは「棚に並ぶことの重要性」について書こうと思いますが、下記いくつか注意点です。

(1) このnoteはできる限りマーケティング業界では一般的な考えを基に書いているつもりですが、それでも多少は「俺のマーケティング」が入っているのでご容赦願います。

(2) このnoteに書いている考えは消費財の中でも特に購買頻度高く、計画購買性が低いカテゴリに当てはまります。耐久消費財やラグジュアリー商品になってくると相関関係が低くなります。

(3) このnoteを読んで納得したからと言ってマーケターの方は絶対に営業に「棚に並ぶからこそ商品は売れるようになるんすよ~」とイキって言わないでください。八つ裂きにされます。大切なことだからもう一度言います。良いか?絶対に自分から言ってはいけないぞ?お父さんとの約束だぞ?

棚に並ぶから売れる②

売上を分解してみる

では早速ですが「売れるから棚に並ぶのではなく、棚に並ぶから売れる」という話に入る前に、そもそも売上というものがどういった要素から構成されるかを考えてみましょう。

私が消費財でマーケティングの仕事を始めた際に売上の構成要素は大きくは、
「売上=配荷 x オフテイク x 単価」と教わりました。
※配荷=全国で何店舗に商品が並んでいるか?
 オフテイク=1店舗あたりの平均売上個数
 単価=商品1個あたりの金額

今でも普段の仕事の中ではこの要素の数字を追いかけることが多いですが、今回の話をする上では売上の構成要素を…
「売上=購入者数 x 購入頻度 x 1回購買あたり購入金額」

棚に並ぶから売れる③

と考えまして、そこからさらに分かりやすくするために、
購入者数を「1年間に何人が購入するか?」
購入頻度を「購入者は平均して1年間に何個購入するか?」
1回購買あたり購入金額を「商品1個あたりの平均購入金額はいくらか?」
と読み替えてみて下さい。

そうすると(1年間の)売上の構成要素は
「売上=1年間の購入者人数 x 購入者1人あたり平均購入個数 x 平均購入単価」
となります。

棚に並ぶから売れる④

そしてこの「購入者1人あたり平均購入個数」の数字を上げるためには、商品自体が良いものであることや、TVCMを打つことなども重要ですが、そもそも沢山のお店の棚に並べる必要があるというのが今回のお話です。

【Point】
売上を分解していきましょう。そうしましょう。

購入者1人あたり平均購入個数を分解してみる

購入者1人あたり平均購入個数を上げるにはどうしたらいいか?を考える上で重要なのが「購入率」です。購入率とはざっくりいうと「100人いたらそのうち何人がその商品を購入しているか?」ということを数値化したものです。

そして購入率が上がると、購入者1人あたり平均購入個数も上がると言われています。これはダブルジョパティの法則と呼ばれておりまして、「市場浸透率が低いブランドは、購買頻度も低くなる」という法則です。浸透率≒購入率、購買頻度≒平均購入個数と考えて頂いてほぼOKです。

え?じゃあ何故「市場浸透率が低いブランドは、購買頻度も低くなるの」と思うかもしれませんが、そこはもう「そういうものだからしゃあないねん」と理解して下さい。

棚に並ぶから売れる⑤

「なるほど!分かったじゃあ購入率を上げたら良いのね!」となったところで購入率を上げるにはどうしたらいいのか?それは購入確率を上げる事がポイントになってきます。

…ん?購入率?購入確率?なにそれ?何が違うの?と思うかもしれませんが、購入率がざっくり言うと「100人いたらそのうち何人がその商品を購入しているか?」なのに対して、購入確率は「商品が10個並んでいたらその中からある特定の商品を選ぶ確率」になります。

これで「ほっほ~なるほどなるほど!そりゃあ確かに購入確率が上がったら購入率もあがるよね!」と感じてくれたかと思います。

だってそうでしょう?例えば世の中に石鹸がAブランドとBブランドの2つしか種類がない場合と100個種類がある場合だと、AブランドとBブランドによっぽどの差がない限りは確実に購入確率はどちらのブランドも前者の方が絶対に高いですよね?そして前者の方がそれぞれのブランドの購入率(100人あたり購入者数)は高いですよね?
※ここでひょっとしたら「え?じゃあ購入率があがったら、それって購入者数も上がることを意味するから、さっきの売上の公式に書いてあった1年間の購入者人数のところにも購入率は効いてくるやん!」と感じたかと思いますが私はその通りだと考えています。ダブルで効いてきます。ただこの辺りは正直あまり詳しくないので誰か教えてください。

ということで購入率を上げるには購入確率を上げる!
…「購入確率」が如何に重要かが分かったかと思います。

棚に並ぶから売れる⑥

「はいはい、分かったよ!どうせこのあとはその「購入確率」とやらを分解するんだろ?」と思った方…安心して下さい。その通りですよ。

分解は続きますよ…ジョイントフェチですから…分解しないとガマンできないんだ!

棚に並ぶから売れる⑦

【Point】
分解ィッ!!分解ィィィィィイッ!!

購入確率を分解してみる

分解ばかりで疲れたかと思いますが、もうしばらくお付き合いください。
さて、次に購入確率を分解してみましょう。

購入確率…すなわち商品が10個並んでいたらその中からある特定の商品を選ぶ確率」は「Mental Availability」と「Physical Availability」の2つで構成されます。
※購入確率を上げるためには本当はもう一つ「価格」という重要な要素があります。似たような商品が10個並んでいて、「どれもあまり変わらんな~」と思った場合、まず価格の安いものを購入するというのはよくある事かと思います。ただ、ここでは敢えて価格は考えないでおきましょう!
(価格まで入れると私の能力では説明がグチャグチャになるから)

話を戻しまして「Mental Availability」と「Physical Availability」…ん?…ここで英語?と思われるかもしれませんがご容赦願います。いい感じの日本語訳が思い浮かびませんでした。

棚に並ぶから売れる⑧

そしてこの2つを上げることが購入確率を上げる上で非常に重要です。
Mental Availabilityとはざっくり言うとその商品の事を知っているか?興味があるか?好きか?です。適切なタイミングで適切な媒体を通して適切なターゲットに適切なコミュニケーションの広告を打つ事でこの数字が上がります。

Mental Availabilityについては以上です。
※次のPhysical Availabilityの話がこのnoteのキモなので、Mental Availabilityについては、ここでは今回は敢えて長く書きません。あと適当に書きましたが「適切なタイミングで適切な媒体を通して適切なターゲットに適切なコミュニケーションの広告を打つ事」は物凄く大変で難しいです。これがキッチリと出来る人はそれだけで一生食っていけます。

そしてPhysical Availabilityですが…待っていました!これこそが「棚に商品が並んでいるかどうか」です。

【Point】
Mental Availabilityについて思いっきり省きましたが本当にすごく重要なので、私の事は嫌いになってもMental Availabilityのことは嫌いにならないでください!!

Physical Availability

先ほどPhysical Availabilityを「棚に商品が並んでいるかどうか」と説明しましたが、これはメチャクチャ重要です。何故ならそもそも棚に商品が並んでいなかったら商品を購入する事が出来ないからです。

どれだけTVCMを打って消費者が「あぁ~ブランドAの石鹸買いた~い!」と思い、Mental Availabilityが爆上がりな状態であったとしても、棚にブランドAの石鹸がなかったら消費者は購入のしようがないのです。

さらにPhysical Availabilityは消費財の中でも特に購買頻度高く、計画購買性が低いカテゴリに関しては非常に重要です。

例えばあなたがコンビニで何かペットボトルの飲み物を購入する際に、あなたが選んだ商品は、昨晩その商品のTVCMを見て美味しそうと思ったから購入しましたか?それともたまたま棚にその商品が置いてあって、パッケージを見て美味しそう、或いは今の気分にはこれが合っている!と思ったから購入しましたか?

恐らく後者ではないでしょうか?

ペットボトルの飲み物はまさに前述の「消費財の中でも特に購買頻度高く、計画購買性が低いカテゴリ」であり、このカテゴリの商品に関しては消費者はほぼ棚の上で商品の事を認識し、購入を決めています。

なお、カテゴリによっては実は90%近くがこの「非計画購買」とも言われています。
※衝動買いとの大きな違いは、先ほどの例で言うと「何かしらの飲み物は買う。但しそれが何かはまだ決めていない」というところです。衝動買いは飲み物を買う事すらも決めていません。

なのでPhysical Availabilityを上げると商品の事を知る可能性が高くなるので、トライアル率(新規購入率)が上がります。同時に、多くの消費者は複数のスーパーやコンビニを使っているので、より多くのお店に商品が並んでいることでリピート率も上がります。

【Point】
殆どの場合、残念ながら消費者は棚の上で商品を知り、決めています。

棚ではAIDMAが完成している

という事で棚に商品が並び、Physical Availabilityが上がると購入確率が上がる。そして購入確率が上がると購入率があがる。購入率が上がると購入者1人あたり平均購入個数が上がる。

つまり沢山の棚に商品が並ぶと、購入者1人あたり平均購入個数が上がる・・・!色々と説明してきましたが図に纏めるとこんな感じです。

棚に並ぶから売れる⑨

これで「売れるから棚に並ぶのではなく、棚に並ぶから売れる」の公式が完成や!となる訳です。

改めてではありますが「棚の上に商品が並ぶことのパワー」って凄いですよね…!パワー!(ごめん、言いたかっただけ)

棚に並ぶから売れる⑩

あと何が凄いってマーケターなら皆が知っているAIDMAの考え方って棚に商品が並ぶだけで一気通貫で実は完成しているんですよね。

例えばですがスーパーで買い物中に…

【Attention】
あ、味噌が切れていたな…と思い味噌の棚に行く。棚に並んでいる商品を知る。この時「NEW」みたいなPOPがあるとアテンションが上がりなおさら目を引く。

【Interest】
パッケージの表面が魅力的なブランドAの商品に興味を持つ。

【Desire】
パッケージ裏面の商品説明を見て「良いな・・・欲しい」となる…でも一旦は棚に戻す。

【Memory】
他のも見たけど、「やっぱり初めに手に取った醤油が良いな…」となる。ブランドAの味噌を買い物カゴに入れる。

【Action】
購入する

といった感じです。
※味噌汁は家庭の味とかあるし計画性高いかも…間違っていたらごめん。

棚に並ぶから売れる⑪

【Point】
棚に商品が並ぶだけで一気通貫でAIDMAは完成する。

マーケターが見るのは消費者だけでいいの?

マーケティングの仕事をしていると「マーケターは消費者のことを第一に考える」という事をよく耳にします。勿論それは正しいのですが、外資系消費財メーカーとかの場合だとマーケティングがPLの責任を持っているんですよね。

なので本来考えなきゃいけないのは「マーケターは消費者のことを第一に考える」かつ「しっかりと売れる商品を世の中に出す」という事だと思います。

そして「しっかりと売れる商品を世の中に出す」ためには消費者が欲しい商品であることは大前提で、その上で小売りが棚に並べたくなくなる、並べやすい商品を出すことが重要なのではないでしょうか?

そもそもマーケティングがPLの責任を持つ以上は、本来は4Pの全てに意識を傾ける必要があるので、Product開発においてはPlaceの観点からも優位なものを考える必要はありますよね!

マーケティングはPromotionだけ…そんな風に思っていた時期が私にもありました。

棚に並ぶから売れる⑫

【Point】
Placeを制する者はマーケティングを制する!…知らんけど。

おわりに

今回、私のnoteを最後まで読んで下さった皆様に深く感謝を申し上げると共に、このnoteが皆様にとって有益な情報であり、活用して頂けるものであり、価値のあるものになればと思います。

また、私自身まだマーケティングの仕事を初めて5年弱であり勉強中の身ですので本noteに対して何かご意見ございましたら是非勉強の機会を頂けましたら幸いです。

なお、消費財のマーケティングの仕事は非常に面白い仕事ですし、もし今のキャリアに疑問を持っている方がいらっしゃいましたら、門戸は狭いものの一応未経験でも採用している会社はございますので、是非挑戦してみて下さいませ。

最後に宣伝ではございますがマーケティング未経験からの転職に少しは役に立つnoteのリンクになります。再現性はそれほど高くはないのですが興味があれば是非ご覧下さいませ。

改めて最後まで読んで下さりありがとうございました。

【Point】
マーケティングは面白い!

プロレタリア (Twitter:@ExploitedSide

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