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新型コロナと「リモートエコノミー」~サーキットブレイカー中のシンガポールで思うこと【4】

こんにちは、在シンガポールの中村です。シンガポールでは、Migrant Workers(発展途上国からシンガポールに出稼ぎで働いているブルーカラー層)の感染はまだ高いままですが、いわゆる市中感染は一桁の日も多く、TCM(針・漢方)、ヘアサロンやお菓子屋さん等、「生活必需品」で無いため、いったん営業停止になっていた業態が段階的に営業を再開する等、若干明るい兆しが見え始めています。一方で、このまま順調に進み、6月1日にサーキットブレイカーが終わったとしても、残念ながら全く元通りの世の中にはならないでしょう。直近2カ月間で、多くのことが変わりました。

1.新型コロナ禍でのキーワード

世界中の大半の人々が「Stay Home」生活になっている中、今後のNew Normalの鍵を握るキーワードが幾つか出てきています。仕事においては「リモート」がその筆頭です。アメリカを代表するテック企業数社は、ロックダウン明けも、必ずしも出社の必要が無い職種の社員は「在宅勤務」を継続すると発表しています。特にTwitter社は、コロナ終息後も永久に在宅勤務可能としました。今回のクライシスで大変なことが多い一方で、今までの仕事社会のレガシー・ひずみが一気に是正される点は、歓迎されてしかるべきと思います。特に、日本は「職場で”顔”をみせること」が仕事の大前提となっている文化的な背景もあり、「フレックスタイム」や「在宅勤務」がなかなか浸透しませんでしたが、新型コロナを契機に、ある意味、リープフロッグ的に進むでしょう。

一方で、今までの仕事スタイルに沿って形成されていたビジネス社会が崩れるため、著しく縮小する若しくは「消える」ビジネスと伸びるビジネスの明暗がはっきり分かれてくると思います。

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2.激減するビジネス

まず「オフィス」そのものの意味合いが大きく変わります。NY、東京、シンガポール等、大都市の一等地にオフィスを構える必然性は減るでしょう。例えば、日本では「丸の内の◆◆ビル」にオフィスがあることが営業的に重要な意味を持つ社会ですが、今後も在宅勤務が継続するとしたら、高い家賃で都心に大きなオフィスを持つ必要性はありません。特に背伸びをして借りていた中堅・ベンチャー企業は途中解約(不要なフィックスコストの最たるものが家賃)、体力のある大手企業も同じ条件で更新はしないでしょう。この流れが進むと下記のビジネスは必然的に激減すると思います。

●オフィス周辺のレストランやカフェ:既にランチやお茶需要は激減
●オフィス&ショッピングセンター内のテナント:そもそも、こういったMixデベロップメントが減る可能性
●電車やバス等の通勤交通手段:通勤者が減れば、当然、減る
●国内外への出張関連:飛行機、ホテル、旅行代理店、コーポレートクレジットカード。「通勤」とは別の意味で、本当に必要な出張が今までどの程度あったのか?見直す好機と言えるでしょう
●オフィスユーティリティ・ファシリティ(什器含む):電気・水道、コピー機、電話等々。関連して「受付」や「お茶だし」は消滅するのでは
●オフィスデザイン・内装関連:普通に考えて、減るでしょう
●通勤用の服飾関連:スーツ、靴、化粧品、アクセサリー等々。アパレルや化粧品メーカーは早急に注力商材を変更するでしょう

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3.増えるビジネス

一方で、自宅から円滑にビジネスが行わることを支えるビジネスは間違い無く、伸びると思います。

●「物理的な対面」を代替するビジネス:オンライン会議等
●ペーパーレス:デジタル名刺、eサイン。ハンコ文化が変わる好機
●デジタルセキュリティ:家庭仕様のIT環境をオフィスレベルに
●IT関連全般:ソフトだけではく、ハイスペックなPC等ハードも
●在宅勤務を快適にするビジネス仕様の机・椅子
●都心部以外の不動産販売・レンタル:独立した仕事部屋が持てる広めの物件がオフィス需要が減る一方で伸張
●住宅地のレストラン:特にランチ需要
●インスタントコーヒー・紅茶:スタバでのラテマネーがシフト
●宅配:既にパンク状態では

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社会に大変な痛みをもたらしている新型コロナですが、特に日本では、以前から掛け声はあるものの、なかなか浸透しなかった「ワークライフバランス」、「東京一極集中の是正」や「地方創生」を一気に推し進める可能性があると思います。

Afterでは無く、「Withコロナ」の時代になるとしたら、仕事社会においてリアルな「場」が持つ意味合いは、間違い無く大きく変わる。非効率な側面もありつつ「直接会って話す」のが人間の根本的なコミュニケーション・ビヘイビアである以上、この変化は革命的なもので、適応できるかどうかでビジネスの命運が分かれるでしょう。

この変化に自分自身が振り落とされないようにするとともに、社会変容への考察を続けていきたいと思います。

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