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ストリートマジックへの道【4日目】〜実践編②〜

どーも、えきぞちっくです( ᐛ)ノ

このシリーズでは、駆け出しマジシャンである僕が初めてのストリートマジックを成功させるまでを記事にしていきます。

前回の記事はこちら↓↓

新宿の道端で50数本のフォークを並べる。

回収する。

ひたすら並べる。

ひたすら回収する。


そんな奇行を繰り返す僕に、1人の男性が話しかけてきた。

「何かやってるの?」

顔を上げると、50代くらいのサラリーマンがこちらを見ていた。

飲み屋帰りのようだ。

顔が赤く、少し呂律も回っていない。

「フォーク並べてます」

少し余裕があるような惚けた返事をする。

内心は初のお客さんチャンスでブチ上がっている、なんてことは全く感じさせないスマートな対応だ。

「何かやるの?」

興味あり、といった様子だ。

すかさず僕は、

「見ていきますか?」

とフォークを差し出す。

おじさんはフォークを受け取る。

よしきた!

早速僕は、フォーク曲げのルーティンを始める。

なんの変哲もないただの100均のフォークが、みるみるうちに曲がっていく。

おじさんはなかなか良いリアクションをしてくれた。

僕の脳内もアドレナリンで溢れてくる。

そのままフォーク曲げは佳境を迎え、最後にフォークの頭が折れて地面にカチャンと落ちる。

はぁ〜と目を丸くして驚くおじさんの様子を見て、僕も満足気である。

「いやぁ〜すごいねぇ〜」

と、おじさんは喜んでくれた。

ご満悦な僕。

その流れで少し世間話をしていると、後ろからおじさんの連れと思われる2人組がやってきた。

「今すごいもの見せてもらったんだよ!」

しかし、後から来た2人組はフォークにはほとんど興味を示さず、ほらいくぞ、と通り過ぎてしまう。

おじさんは「ありがとね」と一言残し、その2人組と一緒にその場を去っていった。


大成功である。

誰がなんと言おうと僕にとっては大成功だ。

お客さんがあまりに理想通りの良いお客さんだったというのは大きいが、こんなにも上手くいくとは思ってもいなかった。

フォーク並べ大作戦さまさまである。


完全に自信をつけテンションも上がった僕は、再度フォーク並べを始める。


またしばらくすると、今度は1人の女性が声をかけてきた。

「何かしてるんですか?」

20代前半と見られる若い女性で、飲み屋帰りではないようだ。連れの姿もない。

「フォーク並べてます」

あたかも鉄板の返しかと言わんばかりのように先程と同じ返事をする。

彼女は先程のおじさんよりも興味深々と言った様子で前屈みでこちらを見ている。

「ちょっと見ていきます?」

そう言うと、

「お金取りますか?」

と聞いてきた。

「お金は別に要りませんよ。見て欲しくてやってるだけなんで」

そう言って彼女にフォークを渡し、フォーク曲げのルーティンに入る。

始まる前から既に楽しそうな表情の彼女を見て、こちらも手に力が入る。

彼女の目の前、はたまた女性の手の中でだんだんとフォークが曲がっていく。

次々と見せられる現象に彼女はすごく良いリアクションをしてくれる。

文章で表現するのが難しいくらい無邪気というか、純粋な反応を見せてくれる。

手を叩きながら「わぁー!」なんてされたら、こっちが恥ずかしくなってしまう。笑

この子良い育ち方をしてるんだろうなと勝手に想像する。

最後のクライマックスまで彼女はすごく楽しそうだった。

記念に、と言ってぐにゃぐにゃに曲がって折れたフォークを渡すと、彼女は徐に財布を取り出し、

「これで暖かいのでも食べて下さい」

と千円札を差し出してきたのだ。

「いやいや、お金は結構ですから」

さすがの僕もお金をもらう心の準備はできていなかった。

本当にただただ実力を試してみたかっただけだったから。

お金を貰えるほどのレベルだとは思ってもいない。

しかし、彼女はその千円を引っ込めようとしない。

そこまで言うならとその千円を受け取った。

「頑張って下さい」

そう言って彼女は満足そうな顔でその場を去っていった。


天使だった。

彼女はまさしく天使だった。

まさかこんなところで人の暖かさに胸を打たれるとは。

真冬の寒さを忘れる程の感動だった。


その後、しばらくまたフォーク並べを続けるも、それ以降立ち止まってくれる人は無く、近くで泥酔の酔っ払いが暴れ出したので撤退することにした。


結果、2時間のフォーク並べで2人が声をかけてくれた。

ストリートマジックとしては効率は悪いのかもしれない。

しかし今の自分のベストを尽くし、2人の人を自分のパフォーマンスで喜ばせることができたのは僕にとって忘れられない経験となった。



これが僕の初ストリートマジックの話である。


こんなにも良いお客さんに恵まれることはなかなかないのかもしれないが、これからも自分のパフォーマンスで人を笑顔にしたいと心の底から思った。

目の前の人が「わぁ!」と喜びの声を上げてくれる瞬間は、全てが報われる気がする。

もっと自分の腕を磨いて、さらにたくさんの人を笑顔にしていきたい。

あの日天使に貰った千円札は今でも大事にしまってある。

僕の一生の宝物である。


終わり( ᐛ)





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