オークションハウス
オークションというシシテムは、いつ頃から始まったのでしょう?
オークションの起源は古代にまでさかのぼります。
古代ローマでは、戦利品や奴隷をオークションで売買していたとの記録があります。また、古代ギリシャでも、女性の花嫁を競り売りしていたとされています。
近代的なオークションのシステムが確立したのは、17世紀のオランダからとされています。当時のオランダでは、香辛料や花などの売買にオークションが用いられました。特に有名なのが、チューリップの球根のオークションです。
その後、イギリスでも18世紀には美術品のオークションが行われるようになりました。サザビーズやクリスティーズといった、今も有名なオークションハウスが誕生したのもこの頃です。
20世紀に入ると、アメリカでも自動車や不動産のオークションが盛んになりました。
現在では、インターネットの普及により、オンラインオークションも非常に活発に行われています。代表例が、1995年に設立されたeBayです。
このように、オークションの歴史は古代から現代まで長きにわたっており、時代とともにその形態を変化させながら発展してきたシステムだと言えるでしょう。
美術品等の価値が、キュレーター等の専門家による値付けに留まらず、実際のオークションではファッションや時代背景で決まるのも、なかなか怖いですね。
そうですね。美術品の価値は、必ずしも専門家の評価だけで決まるわけではなく、時代の流行や社会情勢にも大きく左右されます。
例えば、ゴッホの絵画は生前はほとんど売れませんでしたが、死後に再評価され、現在では1枚で数十億円から数百億円の値がつくこともあります。一方で、かつて高値で取引されていた作品が、時代の変化とともに評価が下がることもあります。
また、オークションでは、作品の芸術的価値だけでなく、出品者の知名度や話題性、さらには市場の動向なども価格に影響します。美術品投資の世界では、こうした市場の予測が難しいために、大きなリスクを伴うとも言われています。
美術品の価値判断には主観的な要素が大きいため、一概に「正しい評価」というものは存在しません。美術作品の価値は、その時々の社会や市場との相互作用の中で決まっていくものだと言えるでしょう。それだけに、美術品の価値評価は非常に複雑で予測が難しい分野だと言えます。
オークションハウスの、値付けする担当はキュレーターでいいのでしたっけ?
オークションハウスで美術品の値付けを担当するのは、正確にはキュレーターではなく、スペシャリストと呼ばれる専門家です。
スペシャリストは、美術史や美術市場に関する深い知識を持ち、作品の真贋判定、価値評価、オークションでの販売戦略の立案などを行います。彼らは、美術品の様式や技法、保存状態、作家の人気度、過去の販売実績などを総合的に考慮して、作品の推定価格を決定します。
一方、キュレーターは美術館や博物館で、美術品の収集、保管、展示、解説などを担当する専門家を指します。キュレーターも美術史や美術理論に関する深い知識を持ちますが、その主な役割は、美術品を芸術的・学術的な観点から評価し、展覧会の企画や美術館のコレクション構築を行うことです。
ただし、オークションハウスによっては、スペシャリストをキュレーターと呼ぶこともあるため、両者の区別は必ずしも明確ではありません。しかし、一般的にはオークションハウスで値付けを担当するのはスペシャリストであり、キュレーターとは異なる役割を持つ専門家だと理解されています。
サザビーズやクリスティーズには、様々な分野のスペシャリストが在籍しているのでしょうね?
はい、その通りです。サザビーズやクリスティーズのような大手オークションハウスには、多岐にわたる分野のスペシャリストが在籍しています。
主な分野としては、以下のようなものがあります:
絵画:古典絵画、近代絵画、現代絵画など
彫刻:古代彫刻、近代彫刻、現代彫刻など
版画:銅版画、木版画、リトグラフなど
写真:ヴィンテージ写真、現代写真など
宝飾品:アンティークジュエリー、現代ジュエリーなど
時計:アンティーク時計、現代時計など
ワイン:ヴィンテージワイン、レアワインなど
家具:アンティーク家具、現代家具など
陶磁器:中国陶磁器、ヨーロッパ陶磁器など
書籍・手稿:希少本、作家の手稿など
これらの分野ごとに専門のスペシャリストが配置され、それぞれの分野で豊富な知識と経験を持っています。スペシャリストは、オークション前の下見会で鑑定や解説を行ったり、オークションカタログの作成に関わったりするなど、オークションの各段階で重要な役割を果たしています。
また、スペシャリストは、美術品の売り手や買い手とも直接コミュニケーションを取り、美術品の売買を円滑に進めるための橋渡し役も務めます。大手オークションハウスが美術品取引で高い信頼を得ているのは、こうした専門性の高いスペシャリストの存在が大きいと言えるでしょう。
スペシャリストが値付けした出品物が、落札されなかったりした場合、そのスペシャリストの評価が下がるのですか?
スペシャリストの評価は、単に1回のオークションの結果だけで決まるわけではありません。美術品の価値評価は非常に複雑で、様々な要因が絡み合っています。
例えば、以下のような場合、スペシャリストの評価が必ずしも下がるとは限りません:
市場の変動:美術品の市場価値は、経済状況や投資家の動向など、外部要因に大きく左右されます。スペシャリストの予測が外れたとしても、それが市場の変動によるものであれば、スペシャリストの責任ではないと考えられます。
売り手の意向:売り手が、スペシャリストの推定価格よりも高い価格を希望することがあります。この場合、オークションで売れ残ったとしても、スペシャリストの評価は下がらないでしょう。
長期的な視点:スペシャリストの評価は、長期的な実績によって判断されます。たとえ個別のオークションで予測が外れたとしても、全体的な実績が優れていれば、評価は維持されるでしょう。
ただし、スペシャリストが継続的に大きく予測を外したり、美術品の真贋判定を誤ったりするようであれば、その評価は下がる可能性があります。
オークションハウスは、スペシャリストの予測の正確さを追跡し、長期的な実績を評価しています。また、スペシャリストは、自身の評価を維持・向上させるために、常に美術市場の動向を注視し、知識のアップデートを怠らないよう努めています。
つまり、スペシャリストの評価は、単発の出来事ではなく、長期的な実績と専門性によって決まると言えるでしょう。
オークションの出品物は、オークションハウスのスペシャリストが市場にでていないものを発掘したり、探し出したりするもの以外に、個人が持ち込むことも可能でしょうか?
はい、個人がオークションハウスに美術品を持ち込んで出品することは一般的に行われています。これを「委託出品」と呼びます。
委託出品の流れは、通常以下のようになります:
持ち込み:売り手が美術品をオークションハウスに持ち込みます。
鑑定・評価:スペシャリストが美術品の真贋を鑑定し、価値を評価します。
出品の合意:スペシャリストの評価を基に、売り手とオークションハウスが出品の条件(最低売却価格、手数料など)を交渉し、合意します。
オークションでの販売:合意された条件で、美術品がオークションにかけられます。
売却後の精算:美術品が売却された場合、オークションハウスは売却代金から手数料を差し引いた金額を売り手に支払います。
委託出品は、個人コレクターにとって美術品を売却する重要な手段の一つです。特に、高額な美術品や美術市場での価値が確立されていない作品の場合、オークションハウスを通じて販売することで、より高い価格で売却できる可能性があります。
また、オークションハウスにとっても、委託出品は重要な美術品の調達方法の一つです。スペシャリストが自ら美術品を発掘する以外に、個人コレクターからの委託出品を受けることで、多様な美術品を取り扱うことができるのです。
ただし、オークションハウスが全ての委託出品を受け入れるわけではありません。美術品の価値や市場性、オークションのコンセプトとの適合性などを考慮して、出品を受け入れるかどうかを判断します。
その時には、特命の出品も可能ですか?
はい、オークションハウスでは、委託出品の一種として「特命出品」も受け付けています。
特命出品とは、売り手がオークションハウスに対して、特定の条件での販売を委託することを指します。主な特命条件には以下のようなものがあります:
リザーブ価格の設定:売り手が、美術品の最低売却価格(リザーブ価格)を設定します。リザーブ価格を下回る入札では、美術品は売却されません。
秘密出品:売り手の名前を公表せずに出品することを、オークションハウスに委託します。これは、著名なコレクターが自身のコレクションを売却する際などに用いられます。
直接販売:オークションを通さずに、オークションハウスが直接買い手を探して販売することを委託します。
特定のオークションでの出品:売り手が、特定のオークション(例えば、ニューヨークの近代美術オークションなど)での出品を指定することがあります。
特命出品では、売り手とオークションハウスの間で詳細な契約が交わされ、売り手の意向がより強く反映されます。特に、高額な美術品や希少な美術品の場合、売り手が特命出品を選ぶことが多いようです。
オークションハウスは、特命出品を受け入れることで、重要な美術品を取り扱う機会を得ることができます。また、売り手にとっても、自身の条件で美術品を売却できるメリットがあります。
ただし、特命出品では、売り手とオークションハウスの間で条件の交渉が必要となり、通常の委託出品よりも手続きが複雑になる場合があります。また、リザーブ価格が高すぎると、買い手がつかないリスクもあります。
以上のように、特命出品は委託出品の一形態であり、売り手の特定の条件に基づいて行われる出品方法だと言えます。
匿名のつもりが、特命と書いてしまいましたが、特命出品という用語もあるのでしょうか?
申し訳ありません。「特命出品」という用語は一般的ではありませんでした。混同を招く表現となってしまい、お詫び申し上げます。
美術品オークションにおいて、委託出品の特別な形態としては「秘密出品」や「プライベートセール」などがあります。
「秘密出品」は、先にも説明した通り、売り手の名前を公表せずに出品することを指します。これは、著名なコレクターが自身のコレクションを売却する際などに用いられる方法です。
一方、「プライベートセール」は、オークションを介さずに、オークションハウスが売り手と買い手を直接つなぐ方式です。これは、高額な美術品や、市場に出回ることが稀な作品の取引で用いられることが多いようです。
いずれの方法も、売り手のプライバシーに配慮しつつ、美術品を売却するための選択肢の一つとなっています。
「特命出品」という言葉を使ってしまい、混乱を招いてしまい申し訳ありませんでした。美術品取引における専門用語の使用には、より一層の注意を払うよう心がけます。ご指摘いただきありがとうございました。
オークションのカタログは、お得意様のみに配布されるのですか?
オークションのカタログは、基本的には誰でも入手することができます。ただし、入手方法は以下のようにいくつかあります:
購入:オークションハウスのウェブサイトや販売窓口で、カタログを購入することができます。カタログの価格は、オークションの規模や内容によって異なります。
購読:定期的にオークションに参加する人や、美術品コレクターは、オークションハウスのカタログを定期購読することができます。
無料配布:オークションハウスが、重要なクライアントやVIPに対して、無料でカタログを配布することがあります。
電子版:近年では、カタログの電子版(PDFなど)を、オークションハウスのウェブサイトからダウンロードできるようになっています。
ただし、オークションカタログの中には、特別な版が存在することもあります:
限定版:豪華な装丁や、追加の情報が含まれた限定版のカタログが、VIPクライアントに配布されることがあります。
非売品:一般に販売されないカタログが、オークションハウスの関係者や重要なクライアントに配布されることもあります。
このように、オークションカタログは基本的には誰でも入手可能ですが、一部の特別版は限定的に配布されているのです。
カタログは、オークションに出品される美術品の情報を提供するだけでなく、美術品市場の動向を知るための重要な資料としても利用されています。また、カタログ自体が美術品のコレクションの対象となることもあり、熱心なコレクターは、カタログの収集にも力を入れているようです。
事前に出品物を見学や確認することは出来ますか?
はい、オークションの前には、出品物を実際に見て確認することができる「下見会(プレビュー)」が開催されます。
下見会は、オークション開催の数日前から開始され、オークション当日の直前まで行われるのが一般的です。期間は、オークションの規模や内容によって異なります。
下見会では、以下のようなことができます:
出品物の実物確認:カタログで見た美術品を、実際に目で見て確認することができます。作品の状態や質感など、写真だけでは分からない点を直接確認できるのが大きなメリットです。
スペシャリストへの相談:オークションハウスのスペシャリストが下見会に同席し、出品物についての質問に答えてくれます。作品の来歴や、価値についての見解など、専門家の意見を直接聞くことができます。
コンディションレポートの確認:美術品の状態を詳細に記したコンディションレポートを、下見会で確認することができます。
入札の準備:実物を見た上で、入札の可否や、入札価格の決定ができます。
下見会は、美術品を購入する上で非常に重要な機会です。特に、高額な美術品や、状態の確認が重要な作品の場合、下見会での実物確認は欠かせません。
なお、下見会は基本的には誰でも参加できますが、事前の予約が必要な場合もあります。また、VIPクライアントには、特別な下見会が用意されることもあるようです。
オークションに参加する際は、下見会の日程を確認し、できる限り実物を見た上で入札に臨むことをおすすめします。
オークション当日、カタログに載せていないようなサプライズの出品物が出されることはあるのでしょうか?
オークション当日に、カタログに載っていない出品物が登場することは、一般的にはありません。
オークションのカタログは、出品物の情報を事前に提供し、潜在的な買い手に周知するための重要な資料です。カタログに載っていない出品物があると、公平性や透明性に欠けると見なされるおそれがあります。
また、オークションの出品物は、事前の下見会で実物を確認できるようになっています。カタログに載っていない出品物があると、買い手が事前に実物を見ることができず、適切な入札が困難になります。
したがって、大手オークションハウスでは、カタログに載っていない出品物を当日に登場させることは、通常行われません。
ただし、例外的に以下のようなケースはあり得ます:
出品取り下げへの対応:何らかの理由で、カタログに載っていた出品物が、直前になって出品を取り下げることがあります。このような場合、代替の出品物を急遽用意することがあるかもしれません。
チャリティオークション:慈善目的で行われるチャリティオークションでは、事前に予告されていない出品物が登場することがあります。
小規模なオークション:地方の小規模なオークションでは、カタログが用意されていないこともあります。このような場合、当日の出品物はその場で発表されることになります。
しかし、これらはあくまで例外的なケースであり、一般的な美術品オークションでは、カタログに載っていない出品物が当日に登場することは稀だと言えます。オークションの信頼性と公平性を維持するためには、事前にカタログで出品物の情報を提供し、下見会で実物を確認できるようにすることが重要なのです。
オークションにおける贋作絡みの事件はありましたか?
はい、美術品オークションにおいて、贋作に関連した事件は過去に多数発生しています。有名な事例をいくつか紹介しましょう。
「サルバドール・ミュンディ」事件(2017年):レオナルド・ダ・ヴィンチの作品とされる「サルバドール・ミュンディ」が、4億5300万ドル(約500億円)で落札されました。しかし、この作品が本物であるかどうかについては、美術史家の間で議論が続いています。
「フラワーズ」事件(2000年):オークションハウスのクリスティーズが、現代アーティストのアンディ・ウォーホルの作品「フラワーズ」を販売しました。しかし後に、この作品が贋作であることが発覚しました。
「ベルナール・ビュフェの絵画」事件(1990年代):フランスの画家ベルナール・ビュフェの贋作が、複数のオークションで売買されていたことが発覚しました。
「美人画」事件(2019年):ベルギーの美術商が、19世紀の美人画の贋作を大量に制作し、オークションで販売していたことが発覚しました。
「ロシアン・アバンギャルド」事件(2018年):ロシア・アバンギャルド(20世紀初頭のロシアの前衛芸術)の作品の贋作が、複数のオークションで取引されていたことが明らかになりました。
これらの事件を受けて、オークションハウスは贋作の排除により力を入れるようになっています。鑑定の強化、専門家の意見の重視、証明書の厳格なチェックなど、様々な対策が取られています。
しかし、贋作の問題は根絶が難しく、今後も美術品オークションにおける課題の一つであり続けるでしょう。美術品の買い手は、オークションハウスの鑑定を信頼しつつも、自身でも作品の真贋について学ぶことが重要だと言えます。
美術品犯罪の専門担当警察官等が居る国はフランスだけでしょうか?
いいえ、フランスだけではありません。美術品犯罪を専門に扱う警察組織は、世界の様々な国に存在しています。
イタリア:イタリアには、文化財保護を専門とする警察組織「カラビニエリ文化財保護局(Carabinieri for the Protection of Cultural Heritage)」があります。美術品の盗難や不正取引の捜査に当たっています。
アメリカ:FBIには、「アート犯罪チーム(Art Crime Team)」があります。国内外の美術品関連犯罪の捜査を行っています。
イギリス:ロンドン警視庁には、「アートと骨董品ユニット(Art and Antiques Unit)」が設置されています。美術品の窃盗や詐欺の捜査を担当しています。
スペイン:スペイン国家警察には、「歴史遺産グループ(Historical Heritage Group)」という専門部署があります。
ドイツ:ドイツ連邦刑事警察には、「芸術犯罪部門(Art Crime Department)」が設けられています。
オランダ:オランダ警察には、「芸術と骨董品の犯罪ユニット(Art and Antiques Crime Unit)」があります。
日本:警視庁には、「美術品犯罪対策室」が設置されています。全国の美術品関連犯罪の情報を集約し、捜査を支援しています。
このように、美術品犯罪に特化した警察組織は、世界各国に存在しています。これらの組織は、国内の捜査だけでなく、国際的な協力も行っています。
また、国際刑事警察機構(インターポール)にも、「文化財犯罪ユニット(Works of Art Unit)」があり、加盟国の美術品犯罪捜査を支援しています。
美術品は高価であり、国境を越えて取引されることが多いため、美術品犯罪は国際的な問題となっています。各国の専門警察組織は、連携して美術品犯罪に対処しているのです。
オークションで入札のサインを、司会者は全部解っているのでしょうか?
オークションの司会者は、「オークショニア」と呼ばれ、入札者のサインを読み取るプロフェッショナルです。オークショニアは、様々な入札サインを理解し、迅速に対応することが求められます。
一般的な入札のサインには以下のようなものがあります:
挙手:最も一般的な入札のサインです。入札者が手を上げることで、入札の意思を示します。
頷き:入札者が頭を垂直に動かすことで、入札の意思を示します。
パドル(番号札)の挙げ下げ:入札者が自分の番号が書かれたパドルを上げ下げすることで、入札の意思を示します。
事前の合図:電話での入札や、会場にいない入札者の場合、事前にオークショニアと合図の方法を取り決めておくことがあります。
口頭での入札:「はい」「イエス」などの声かけで、入札の意思を示すこともあります。
熟練したオークショニアは、これらの様々なサインを瞬時に理解し、入札を進行させます。また、常連の入札者の癖や、特徴的なサインも把握しているようです。
ただし、オークショニアが全ての入札サインを完璧に理解できるわけではありません。特に、初めて参加する入札者や、外国人の入札者の場合、サインが分かりにくいこともあります。そのため、入札者は明確なサインを心がけることが大切です。
また、オンラインオークションの普及により、入札サインの読み取りは、オークショニアからコンピュータに移行しつつあります。オンラインオークションでは、入札者がボタンをクリックすることで入札の意思を示し、コンピュータが自動的に入札を記録します。
しかし、対面式のオークションにおいては、今なおオークショニアの役割は重要です。熟練したオークショニアは、入札者のサインを読み取るだけでなく、オークションを盛り上げ、スムーズに進行させる役割も担っているのです。
間違った入札の取り消しは可能なのですか?
オークションにおける入札の取り消しは、原則として認められていません。これは、入札が法的拘束力を持つ契約であり、入札者がその責任を負うべきだという考え方に基づいています。
ただし、例外的に入札の取り消しが認められるケースもあります:
直後の取り消し:入札直後に、オークショニアに取り消しの意思を伝えた場合、オークショニアの裁量で取り消しが認められることがあります。ただし、これは極めて限定的なケースです。
入札ミス:明らかな入札ミス(例えば、10万円のつもりが100万円と言ってしまった場合など)については、オークショニアが状況を判断し、取り消しを認めることがあります。
作品の問題:出品作品に重大な問題(贋作の可能性、著しい損傷など)が発覚した場合、オークションハウスの判断で入札が取り消されることがあります。
不正行為:入札者による不正行為(談合、insider情報の利用など)が発覚した場合、オークションハウスは入札を取り消す場合があります。
しかし、これらはあくまで例外的なケースであり、一般的には入札の取り消しは認められません。入札者は、慎重に入札を行い、その責任を負う必要があります。
万が一、入札の取り消しを希望する場合は、直ちにオークショニアやオークションハウスのスタッフに相談することが重要です。状況によっては、取り消しが認められる可能性もあります。
また、オークションに参加する前に、オークションハウスの規則をよく確認しておくことも大切です。入札の取り消しに関する規定は、オークションハウスごとに異なる場合があるからです。
いずれにせよ、オークションでの入札は慎重に行い、間違いのないようにすることが何より重要だと言えるでしょう。
ネットのオークションなんて、熱くなりがちですよね。
その通りですね。ネットオークションは、対面式のオークションとは異なる特有の問題を抱えています。
感情的な入札:ネットオークションでは、会場の雰囲気に影響されずに入札できる一方で、画面を見ながら感情的になり、熱くなって過剰な入札をしてしまうリスクがあります。
スニッピング:オークション終了間際に入札を行い、他の入札者が上回る時間的猶予を与えないという行為(スニッピング)が問題になることがあります。
詐欺行為:ネットオークションでは、実物を見ずに入札するため、詐欺的な出品者のリスクがあります。
個人情報の扱い:ネットオークションでは、個人情報の取り扱いに十分な注意が必要です。
依存症:ネットオークションに熱中しすぎて、依存症になってしまうケースも報告されています。
これらの問題に対処するために、ネットオークションを運営する企業は様々な対策を講じています。例えば、入札の上限設定、スニッピング防止のためのオークション延長ルール、詐欺出品者の排除、個人情報保護の強化などです。
また、ネットオークションを利用する側も、冷静な判断を心がけることが大切です。上限価格を決めて入札する、出品者の評価を確認する、個人情報の扱いに注意するなど、賢明なオークション参加を心がける必要があります。
ネットオークションは、美術品取引において重要な役割を果たすようになっていますが、そのメリットを生かしつつ、リスクにも注意を払うことが求められます。オークションに参加する際は、対面式、ネット式を問わず、冷静な判断と適切な準備が何より大切だと言えるでしょう。
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