見出し画像

ベンチャーの闇

株式会社における「役員会」と「監査役会」の設置義務について教えて下さい。

株式会社における役員会と監査役会の設置義務は、以下のようになっています。

  1. 役員会の設置義務

  • 取締役が3名以上いる株式会社は、原則として取締役会を設置しなければなりません(会社法第326条第2項)。

  • ただし、公開会社でない株式会社であって、定款に取締役会を置くことを定めていない場合は、この限りではありません(会社法第326条第1項)。

  1. 監査役会の設置義務

  • 大会社(資本金が5億円以上または負債総額が200億円以上の株式会社)は、監査役会を設置しなければなりません(会社法第328条第1項)。

  • 公開会社(株式を公開している会社)も、監査役会を設置する必要があります(会社法第328条第2項)。

  • 上記以外の株式会社は、定款で定めれば、監査役会を設置することができます(会社法第326条第2項)。

  1. 委員会設置会社の場合

  • 指名委員会等設置会社(委員会設置会社)は、取締役会、指名委員会、監査委員会、報酬委員会を必ず設置しなければなりません(会社法第2条第12号、第400条第1項)。

  • この場合、監査役会は設置できません(会社法第327条第5項)。

以上のように、株式会社の規模や種類によって、役員会と監査役会の設置義務が異なります。株式会社の健全な運営と監督のために、これらの機関の適切な設置と運用が求められています。

上場準備の際には、監査役会は必要でしょうか?

はい、上場準備の際には、監査役会の設置が必要です。

  1. 上場会社の要件

  • 金融商品取引法上、上場会社は「公開会社」として扱われます(金融商品取引法第2条第16項)。

  • 会社法上、公開会社は大会社でなくても監査役会の設置が義務付けられています(会社法第328条第2項)。

  1. 上場審査基準

  • 東京証券取引所の上場審査基準においても、監査役会の設置が要求されています。

  • 東証プライム市場、スタンダード市場、グロース市場のいずれにおいても、新規上場申請者は監査役会を設置していることが求められます(有価証券上場規程第437条第1項第3号、第4号)。

  1. コーポレートガバナンスの観点

  • 上場会社には、より高度なコーポレートガバナンスが求められます。

  • 監査役会は、取締役の職務執行を監査し、会社の業務の適正性を確保する重要な機関です。

  • 上場準備段階から監査役会を設置し、適切に運用することは、上場後の企業価値向上につながります。

したがって、上場を目指す企業は、早い段階から監査役会を設置し、実効性のある監査体制を整備することが重要です。

役員会設置の場合、役員は全員が社内の役員であるべきでしょうか?

役員会(取締役会)を設置する場合、必ずしも全員が社内の役員である必要はありません。社外取締役を選任することで、コーポレートガバナンスの強化につながると考えられています。

  1. 社外取締役の意義

  • 社外取締役とは、会社法上、「当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役又は執行役その他の使用人でない取締役」と定義されています(会社法第2条第15号)。

  • 社外取締役は、経営の監督機能を強化し、利益相反を監視し、経営の透明性を高める役割を期待されています。

  1. 社外取締役の選任義務

  • 東京証券取引所の上場規程では、プライム市場上場会社は、独立社外取締役を少なくとも2名以上選任することが義務付けられています(有価証券上場規程第436条の2)。

  • また、スタンダード市場上場会社も、独立社外取締役を少なくとも1名以上選任する必要があります(有価証券上場規程第437条第1項第5号)。

  1. 社外取締役の選任の効果

  • 社外取締役を選任することで、経営者に対する監督機能が強化され、経営の透明性や公正性が向上すると期待されています。

  • 社外取締役は、社内の情報に加えて、外部の視点から経営への助言を行うことができます。

  • 社外取締役の選任は、投資家や市場からの信頼を得るためにも重要です。

以上のように、役員会を設置する場合、社内の役員だけでなく、社外取締役を選任することが望ましいと考えられています。特に上場会社においては、社外取締役の選任が義務付けられているケースもあります。社内外のバランスを考慮した取締役会の構成が、効果的なコーポレートガバナンスの実現につながるでしょう。

上場の際には、A種やB種等々の株式は、普通株に切り換えなければならないのですか?

上場の際に、A種やB種などの種類株式を普通株式に転換する必要があるかどうかは、株式の種類や内容、上場審査基準などによって異なります。

  1. 種類株式の内容と上場審査基準

  • 種類株式には、議決権の有無や剰余金の配当、残余財産の分配などに関して普通株式と異なる内容を定めることができます(会社法第108条)。

  • 東京証券取引所の上場審査基準では、議決権に制限のある種類株式が存在する場合、その種類株主を適切に保護するための措置が講じられていることが求められます(有価証券上場規程第437条第1項第2号)。

  1. 種類株式の転換

  • 種類株式を発行している会社が上場する際、その種類株式の内容が上場審査基準に適合していない場合、普通株式への転換が必要となる可能性があります。

  • 例えば、議決権に制限のある種類株式が存在し、種類株主の保護措置が不十分だと判断された場合、上場のためにはその種類株式を普通株式に転換することが求められる可能性があります。

  1. 種類株式の取扱いの検討

  • 上場を目指す企業は、種類株式を発行している場合、その内容と上場審査基準との整合性を検討する必要があります。

  • 必要に応じて、種類株主との協議を行い、種類株式の普通株式への転換や、種類株主の保護措置の強化などを検討することが重要です。

上場の際のA種やB種などの種類株式の取扱いは、個々の企業の状況によって異なります。上場審査基準への適合性を確保しつつ、種類株主の利益にも配慮した対応が求められます。上場準備の早い段階から、種類株式の取扱いについて検討し、必要な措置を講じることが重要だと言えるでしょう。

優先株というのは、通常、A種、B種を指しますか?

はい、優先株式は通常、A種、B種などの種類株式を指します。

  1. 優先株式の意味

  • 優先株式とは、剰余金の配当や残余財産の分配について、普通株式に優先する内容を持つ株式のことを指します。

  • 優先株式は、会社法上の種類株式の一種であり、A種、B種、C種などと呼ばれることが一般的です。

  1. 優先株式の内容

  • 優先株式には、配当優先権、残余財産分配優先権、議決権の有無や内容など、様々な権利内容を定めることができます。

  • 例えば、A種優先株式は普通株式よりも高い配当優先権を持ち、B種優先株式はA種優先株式よりもさらに高い配当優先権を持つ、といった設定が可能です。

  1. 優先株式の活用

  • 優先株式は、資金調達の手段として活用されることが多いです。

  • ベンチャー企業などでは、優先株式を発行することで、普通株式の議決権割合を維持しつつ、資金調達を行うことができます。

  • また、M&Aにおいて、被買収企業の株主に優先株式を交付することで、買収後の権利関係を調整する手段としても活用されます。

優先株式は、A種、B種などの種類株式として発行され、普通株式とは異なる権利内容を持つ株式のことを指します。企業の資金調達やM&Aなどの場面で活用され、柔軟な株式設計を可能にする手段として重要な役割を果たしています。

未上場会社に投資をしているベンチャーキャピタルは、当該会社がIPOが不可能になったり、会社経営が危ぶまれたときに、どういった対応を取ることが一般的でしょうか?

ベンチャーキャピタル(VC)が投資先の未上場会社において、IPOが不可能になったり、会社経営が危ぶまれたりする状況に直面した場合、一般的に以下のような対応を取ることが考えられます。

  1. 追加投資の検討

  • 会社の事業計画や経営改善策を精査し、追加投資によって会社の立て直しが可能と判断された場合、追加の資金提供を行うことがあります。

  • ただし、追加投資には慎重な判断が求められ、他の株主との合意形成も必要になります。

  1. 経営陣の刷新

  • 会社の経営状況が悪化している場合、VCは経営陣の刷新を求めることがあります。

  • 新たな経営者を招聘したり、VCから人材を派遣したりすることで、経営の立て直しを図ります。

  1. 事業の売却や譲渡

  • 会社の事業の一部または全部を、他社に売却や譲渡することで、投資回収を図ることがあります。

  • 事業の売却先を探索し、M&Aなどの手段を通じて、投資資金の回収を目指します。

  1. 清算や破産手続き

  • 会社の経営状況が極度に悪化し、他の手段での立て直しが困難な場合、清算や破産手続きに移行することもあります。

  • その際、VCは残余財産の分配において、優先株式の権利を行使し、可能な限り投資資金の回収を図ります。

  1. 他の投資家との協調

  • VCは、他の投資家とも協調しながら、投資先会社の経営改善や投資回収の方策を検討します。

  • 株主間協定などに基づいて、株主間の利害調整を図りつつ、最適な対応を模索します。

VCは、投資先の未上場会社の状況に応じて、柔軟な対応を取ることが求められます。追加投資や経営陣の刷新、事業の売却や譲渡、清算や破産手続きなど、様々な選択肢を検討し、投資資金の回収と企業価値の最大化を目指すことが一般的です。

損金扱いにして、その会社がキャッシュアウトして破綻するまで放置することなんてありますか?

損金処理をして、意図的に会社をキャッシュアウトさせ破綻するまで放置することは、ベンチャーキャピタルとしては極めて例外的であり、一般的ではありません。

  1. ベンチャーキャピタルの責務

  • ベンチャーキャピタルは、投資先企業の成長と企業価値の向上を通じて、リターンを得ることを目的としています。

  • 投資先企業を意図的に破綻させることは、ベンチャーキャピタルの責務に反する行為であり、市場からの信頼を失うことにつながります。

  1. レピュテーションリスク

  • 投資先企業を意図的に破綻させることは、ベンチャーキャピタルのレピュテーションを大きく毀損する可能性があります。

  • 他の投資家や起業家からの信頼を失い、将来的な投資機会を逸することにもなりかねません。

  1. 法的責任

  • 投資先企業の意図的な破綻は、法的責任を問われる可能性があります。

  • 善管注意義務や忠実義務に違反し、株主としての責任を果たしていないと判断される恐れがあります。

  1. ベンチャーエコシステムへの影響

  • ベンチャーキャピタルが投資先企業を意図的に破綻させることは、ベンチャーエコシステム全体への悪影響も懸念されます。

  • スタートアップ企業への投資を萎縮させ、イノベーションの創出を阻害する可能性があります。

したがって、ベンチャーキャピタルが損金処理を行い、投資先企業を意図的に破綻させることは、非常にレアなケースであり、一般的な対応とは言えません。ベンチャーキャピタルは、投資先企業の成長と価値向上に向けて、誠実に支援・協力することが求められています。

盗人に追い銭みたいに見えました。

ご指摘の通り、損金処理をして投資先企業の破綻を放置することは、「盗人に追い銭」という表現がよく当てはまります。

  1. 投資家責任の放棄

  • 損金処理後に投資先企業を放置することは、投資家としての責任を放棄していると言えます。

  • 企業の立て直しや価値向上に向けた努力を怠り、自らの損失回避だけを優先するようにも見えます。

  1. モラルハザード

  • このような行為は、モラルハザードを引き起こす可能性があります。

  • 投資リスクを軽視し、安易に損失処理を行うことで、投資判断の規律が失われてしまう恐れがあります。

  1. 企業価値の毀損

  • 投資先企業を放置することは、結果的に企業価値を毀損し、他の株主や従業員などのステークホルダーに悪影響を及ぼします。

  • 企業の再生可能性を検討することなく、安易に見切りをつけることは望ましくありません。

  1. 資金提供者としての役割

  • ベンチャーキャピタルは、単なる資金提供者ではなく、経営支援や成長支援を行う存在でもあります。

  • 投資先企業が困難な状況に陥った際こそ、ベンチャーキャピタルの真価が問われると言えるでしょう。

ベンチャーキャピタルには、投資先企業の成長と価値向上に向けて、誠実に取り組むことが求められています。損金処理後に企業を放置することは、「盗人に追い銭」のように、本来の役割を放棄しているように見えてしまうでしょう。ベンチャーキャピタルは、投資家としての責任を果たし、企業の再生可能性を追求することが重要です。

いよいよ会社の精算が必要な場合、優先して資金が確保されるには、優先順はありますか?

会社の清算において、残余財産の分配には一定の優先順位が定められています。この優先順位は、会社法や倒産法などの法令に基づいて決まります。

  1. 担保権付債権

  • 会社の資産に対して担保権を持つ債権者は、その担保権の範囲内で優先的に弁済を受けることができます。

  • 例えば、不動産に抵当権を設定している銀行は、その不動産の売却代金から優先的に回収を行います。

  1. 優先債権

  • 一定の要件を満たす債権は、優先債権として扱われ、一般の債権よりも優先的に弁済を受けることができます。

  • 例えば、共益費用(管財人の報酬など)や日本国の税金などが優先債権に該当します。

  1. 一般債権

  • 上記以外の債権は、一般債権として扱われ、残余財産の分配において同順位で按分されます。

  • 取引先への買掛金や未払金などが一般債権に該当します。

  1. 劣後債権

  • 契約により、他の債権よりも弁済の順位が劣後すると定められた債権は、劣後債権として扱われます。

  • 例えば、社債の中には、一般債権よりも弁済順位が劣後するものがあります。

  1. 株主への分配

  • 債権者への弁済が終わった後、残余財産があれば、株主に分配されます。

  • この際、優先株式を発行していれば、優先株主が普通株主よりも優先的に分配を受けることができます。

以上が一般的な優先順位ですが、個別の事案によって異なる場合もあります。例えば、会社更生手続きにおいては、更生計画に基づいて優先順位が定められることがあります。また、株主間の契約によって、残余財産の分配方法を別途定めることも可能です。会社の清算に際しては、これらの優先順位を踏まえつつ、適切な手続きを進めていくことが重要です。

借りているオフィスの家賃や敷金、退去に伴う現状復旧の費用は含まれますか?

オフィスの家賃、敷金、現状復旧費用の取り扱いは、会社の清算手続きにおいて重要な論点となります。

  1. 家賃

  • 会社が清算手続き開始後も、オフィスを使用し続ける場合、家賃は管財人等が管理する財団から優先的に支払われます。

  • これは、清算手続き開始後に発生した債務(共益債権)として扱われるためです。

  • ただし、清算手続き開始前の未払い家賃は、一般債権として扱われます。

  1. 敷金

  • オフィスの賃貸借契約に基づいて預けている敷金は、会社の資産として扱われます。

  • 清算手続きにおいて、敷金は原則として会社に返還されることになります。

  • ただし、未払い家賃がある場合、賃貸人は敷金をその弁済に充当することができます。

  1. 現状復旧費用

  • オフィスの退去に伴う現状復旧費用は、原則として会社が負担することになります。

  • この費用も、清算手続き開始後に発生した債務(共益債権)として扱われ、財団から優先的に支払われます。

  • ただし、現状復旧の範囲や金額については、賃貸借契約の内容や、オフィスの状態などを踏まえて、賃貸人との協議が必要となります。

  1. 財団債権としての扱い

  • 上記の家賃(清算手続き開始後の分)や現状復旧費用は、いわゆる財団債権として扱われます。

  • 財団債権は、清算手続きにおいて、一般債権よりも優先的に弁済を受けることができます。

以上のように、オフィスの家賃、敷金、現状復旧費用は、会社の清算手続きにおいて重要な論点となります。これらの費用は、財団から優先的に支払われる可能性がありますが、個別の事情によって取り扱いが異なる場合もあります。清算手続きを進める際には、これらの点についても適切に対応していくことが求められます。

その際に、役員が負うべき責任はどのようなものでしょう?

会社の清算手続きにおいて、役員は様々な責任を負う可能性があります。主なものは以下の通りです。

  1. 善管注意義務・忠実義務違反による責任

  • 役員は、会社に対して善管注意義務と忠実義務を負っています(会社法第330条、民法第644条)。

  • 清算手続きにおいても、これらの義務に違反し、会社に損害を与えた場合には、損害賠償責任を負う可能性があります。

  1. 第三者に対する責任

  • 役員が、悪意または重過失により、法令・定款に違反する行為を行い、第三者に損害を与えた場合、損害賠償責任を負うことがあります(会社法第429条第1項)。

  • 例えば、清算手続き中に、債権者を不当に差別したり、特定の債権者に優先弁済を行ったりした場合などが該当します。

  1. 刑事責任

  • 役員が、背任行為や債務超過を知りながら営業を継続するなどの行為を行った場合、刑事責任を問われる可能性があります。

  • 例えば、特定の債権者に弁済をして他の債権者の利益を害する行為は、背任罪に該当する可能性があります。

  1. 債権者に対する個人責任

  • 清算手続き開始後に、役員が債権者に対して弁済をした場合、その弁済が財団に属すべきものであれば、役員は債権者に対して個人責任を負う可能性があります。

  • これは、「違法配当」の一種として扱われます。

  1. 適時適切な清算手続きの遂行責任

  • 役員は、会社の清算手続きを適時適切に遂行する責任を負います。

  • 必要な清算手続きを懈怠したり、不適切な清算事務を行ったりした場合、役員はその責任を問われる可能性があります。

会社の清算手続きにおいて、役員は上記のような様々な責任を負う可能性があります。役員は、善管注意義務・忠実義務を踏まえつつ、適正な清算事務を遂行することが求められます。また、債権者の利益に配慮し、公平な債権の弁済を図ることも重要です。役員は、これらの責任を十分に理解し、適切な清算手続きを進めていく必要があります。

会社が不振に陥った理由が、経営者や役員の放漫経営や株主への報告義務の欠如等にあると考えられた場合は、株主はどのような対応を取るべきでしょうか?

経営者や役員の不適切な経営や義務違反が会社の不振につながったと考えられる場合、株主は以下のような対応を取ることが考えられます。

  1. 株主総会での説明要求・質問

  • 株主は、株主総会において、経営者や役員に対して、会社の経営状況や不振の原因について説明を求めたり、質問を行ったりすることができます。

  • 経営者や役員は、株主の質問に対して誠実に回答する義務があります(会社法第314条)。

  1. 株主代表訴訟の提起

  • 役員の義務違反により会社に損害が生じた場合、株主は、会社に対して役員の責任追及を求める訴えを提起することができます(会社法第847条)。

  • これを株主代表訴訟と呼び、株主が会社に代わって役員の責任を追及する制度です。

  1. 役員の解任請求

  • 株主は、役員の職務執行に不正の行為や法令・定款違反の重大な事実があるときは、その役員の解任を請求することができます(会社法第854条)。

  • 解任請求には、発行済株式の3%以上の保有が必要です。

  1. 清算手続きにおける関与

  • 会社が清算手続きに入った場合、株主は、清算手続きの適正性を監視し、必要に応じて意見を述べることができます。

  • 例えば、清算人の選任や清算計画の承認など、重要な局面では株主総会の決議が必要となります。

  1. 損害賠償請求

  • 役員の義務違反により株主が直接損害を被った場合、株主は役員に対して損害賠償を請求することができます。

  • ただし、この場合の損害は、株主個人に生じた損害である必要があります。

  1. 監督官庁への通報

  • 役員の不正行為や法令違反が明らかな場合、株主は監督官庁(金融庁など)に通報することも考えられます。

  • 監督官庁による調査や処分が行われれば、役員の責任追及がより実効性を持つことになります。

株主としては、これらの手段を適切に組み合わせ、会社の不振の原因究明と役員の責任追及を図ることが重要です。ただし、個別の事案によって、適切な対応は異なります。必要に応じて、弁護士などの専門家に相談しながら、慎重に対応を検討することが求められます。

役員が、個人的な支出などを会社の経費を用いていた場合は、どういった罪が考えられますか?

役員が会社の経費を私的に流用していた場合、以下のような罪が成立する可能性があります。

  1. 背任罪(刑法第247条)

  • 役員が、会社の経費を個人的な支出に充てることは、会社の財産を管理する任務に背いて会社に損害を与える行為と考えられます。

  • この場合、背任罪が成立する可能性があります。

  • 背任罪は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。

  1. 業務上横領罪(刑法第253条)

  • 役員が、会社の経費を個人的な支出に充てることは、業務上預かった会社の財産を横領する行為とも考えられます。

  • この場合、業務上横領罪が成立する可能性があります。

  • 業務上横領罪は、10年以下の懲役に処せられます。

  1. 特別背任罪(会社法第960条第1項)

  • 役員が、自己または第三者の利益を図る目的で、会社の経費を個人的な支出に充てることは、特別背任罪に該当する可能性があります。

  • 特別背任罪は、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金に処せられます。

  1. 詐欺罪(刑法第246条)

  • 役員が、会社の経費を私的に流用するために、虚偽の経費申請を行ったり、架空の取引を作出したりした場合、詐欺罪が成立する可能性があります。

  • 詐欺罪は、10年以下の懲役に処せられます。

  1. 文書偽造罪(刑法第155条)

  • 役員が、経費の私的流用を隠蔽するために、虚偽の書類を作成したり、真正な書類を変造したりした場合、文書偽造罪が成立する可能性があります。

  • 文書偽造罪は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。

役員による経費の私的流用は、会社の財産を侵害する重大な犯罪行為です。上記のような罪が成立する可能性がありますが、具体的にどのような罪が適用されるかは、個別の事案の内容によって異なります。会社としては、このような不正行為を発見した場合、速やかに調査を行い、必要に応じて刑事告訴や民事訴訟などの法的措置を検討することが求められます。

そういった行為について、監査役はそれを知りながら、株主総会などで経営に問題がないと報告した場合は、どのような罪になりますか?

監査役が、役員の不正行為を認識しながら、株主総会で経営に問題がないと虚偽の報告をした場合、以下のような罪が成立する可能性があります。

  1. 虚偽報告罪(会社法第976条第1項)

  • 監査役が、株主総会において、虚偽の陳述をした場合、虚偽報告罪に該当します。

  • 虚偽報告罪は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。

  1. 特別背任罪(会社法第960条第1項)

  • 監査役が、役員の不正行為を認識しながら、それを報告しないことは、自己または第三者の利益を図る目的で、任務に背く行為と考えられます。

  • この場合、特別背任罪が成立する可能性があります。

  • 特別背任罪は、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金に処せられます。

  1. 証憑隠滅罪(刑法第104条)

  • 監査役が、役員の不正行為を隠蔽するために、関連する証拠を隠滅した場合、証憑隠滅罪が成立する可能性があります。

  • 証憑隠滅罪は、3月以上5年以下の懲役に処せられます。

  1. 犯人蔵匿罪(刑法第103条)

  • 監査役が、役員の不正行為を知りながら、その事実を隠蔽し、役員の刑事責任を逃れさせるような行為を行った場合、犯人蔵匿罪が成立する可能性があります。

  • 犯人蔵匿罪は、3年以下の懲役または20万円以下の罰金に処せられます。

監査役は、会社の業務執行を監査し、不正行為を発見・防止する重要な役割を担っています。監査役が役員の不正を知りながら、株主総会で虚偽の報告を行うことは、監査役の義務に反する重大な違法行為です。このような行為は、上記のような罪に該当する可能性があり、厳しい処罰の対象となります。

監査役は、役員の不正行為を発見した場合、速やかに取締役会や株主総会に報告し、適切な措置を取ることが求められます。また、必要に応じて、監督官庁への報告や刑事告発なども検討しなければなりません。監査役は、その職責の重大性を認識し、適正な監査と報告を行うことが重要です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?