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小惑星探査機「はやぶさ」が帰還して早10年!

2010年6月13日、小惑星探査機「はやぶさ」が幾つもの困難を経て、地球に帰還しました。「はやぶさ」の帰還は、世界各国で話題になり、日本でも一度に3本もの「はやぶさ」に関する映画が公開されるなど一大ムーブメントになりました。「はやぶさ」のニュースを知り、宇宙の道を目指すようになったという知り合いも多くいます。

では、「はやぶさ」はどこへ行き、どこから地球に帰ってきたのか。そのミッションの全体像を今日は改めて説明していきます。

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1.「はやぶさ」の行き先と目的

「はやぶさ」は、地球から3億キロ離れた直径540mの小惑星を目指しました。発見された当時は1998SF36と呼ばれ、後に「イトカワ」と命名されました。この名前は、日本の宇宙開発を主導した糸川英夫先生に因んで付けられました。

イトカワは地球の軌道近くを回っている小惑星の一つで「近地球型小惑星」に分類されます。

※では、なぜ「小惑星」を探査するのだろうか?
 地球などの岩石で出来た惑星は、元は小惑星のような小さな岩の塊でした。それ
 らがお互いに衝突などを繰り返すことにより大きな惑星になりました。しかし、
 内部の物質はドロドロに溶けて元々の成分を失っています。そこで、小惑星を
 探査することで、変質していない物質、つまり太陽系が誕生した時の物質を採取
 することができるのです。

小惑星探査機「はやぶさ」は主に5つの目的を持って、開発・運用されました。
「はやぶさ」と呼ばれる前は「MUSES-C」という正式名称で呼ばれていました。また、広く<探査機>として知られていますが、本来の名称は「工学実験機」とも呼ばれ、宇宙探査をする上で必要な技術を獲得することも一つの目的でした。では、5つの目的を大きくみていきます。

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「はやぶさ」では推進剤(燃料)として、イオンエンジンという新しい技術が使用されました。イオンエンジンは、一般的なエンジンに比べて燃料の効率が良いので、搭載する燃料が少なくなり軽量化することができます。「はやぶさ」では、世界で初めて3台を同時運用しました。

「はやぶさ」は、目的地の小惑星に向かう際、地球の引力を利用して、軌道と速さを変えました。これは、一般的に探査機で使われる技術で「スイングバイ」と呼ばれます。スイングバイは、ちょうどハンマー投げのようなイメージです。地球がハンマーを回す人で、ハンマーが探査機だと考えると分かりやすいと思います。力強く回されたハンマーは、人から手を離される(=スイングバイ)と、物凄いスピードで飛んでいきます(=加速)。「はやぶさ」の功績は、世界で初めてイオンエンジンを使用し、スイングバイを行ったことです。

目的地についた「はやぶさ」は、小惑星との距離や間隔を自ら計測して、姿勢を変えていきます。探査機が自ら周りの状況を判断して、動作することを「自律誘導(航行)」と言います。今でこそ、巷で騒がれている「AI」に近いかもしれません。

1番の見せ所は「小惑星のサンプル採取」です。「はやぶさ」から飛び出した<サンプラーホン>と呼ばれる装置で表面に弾丸を打ち、舞い上がった砂を採取する方式を取りました。(以下のキャプションでは、背景と同化して分かりにくいかも。。)

探査が終われば、地球へ向けて帰還です。「はやぶさ」は、採取したサンプルをカプセルに詰めて、地球に持ち帰ります。これは、月以外の天体のサンプルを採取するという世界初の試みでした。

2.「はやぶさ」の道のり

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2003年5月9日、「はやぶさ」は鹿児島県内之浦にある発射場からMーVロケットで打ち上げられました。その後、5月19日には、イオンエンジンを使用したスイングバイを世界で初めて行い、成功。約2年の航行後、2005年9月12日に目的地である小惑星「イトカワ」に到着しました。11月には、着陸を行うものの、姿勢が崩れて、横倒しになっていたことが後に判明。姿勢を取り戻すものの、燃料漏れや1ヶ月の通信途絶など数々の困難を乗り越えて、2010年6月13日、オーストラリアのウーメラ砂漠に帰還しました。

3.「はやぶさ」の研究成果と次のミッション

「はやぶさ」がイトカワに行ったことで得られたことは、、、、

・想像以上に岩だらけの土地だったこと
・イトカワがどのようにして形成されたのかというメカニズム
・隕石が小惑星からやってきているものであることがはっきりと証明

ということでした。

また、カプセルの中には、イトカワの砂が1500粒が入っており、それらは全て番号が付けられ管理されています。

そして、2014年12月3日、「はやぶさ」の後継器である「はやぶさ2」が打ち上げられました。無事に着陸と調査を終え、今地球に帰還している途中です。今年12月、初代「はやぶさ」と同じくオーストラリアのウーメラ砂漠にサンプルの入ったカプセルを落とす予定です。「はやぶさ2」は、また別の機会に説明します。


またまた、長くなってしまいましたが、「はやぶさ」のミッションがいかに困難なものだったかということを再認識しました。12月には「はやぶさ2」が地球にサンプルを持ち帰る予定です。その瞬間に立ち会えると思うと、今からでも楽しみです。

<参考図書>
はやぶさ 吉田武 著 幻冬舎新書

(↑こちらの資料も参考にしました。非常に分かりやすいので、ぜひお読みください)

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