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母の葬儀をした

実母が亡くなり初めて喪主として葬儀を行いました。2023年夏の終わり。62才で生涯を閉じました。大腸がんでした。

2023年の春に大腸がんがステージ4(末期)で見つかりました。その年のお正月会ったときには、そんな大病を抱えているとは到底想像もできないくらいいつも通りだったので全く予想もしない突然のがん宣告でした。お腹を開けてみると肝転移に腹膜播種。いわゆる「がんの種まき」が終わった状態で絶望的な状況ではありましたが、母は手術や化学療法を頑張ってくれて、なんとか私達家族に半年間のお別れの猶予を与えてくれました。

がんは交通事故などとは違い、分かってからすぐに亡くなる病気ではありません。緩やかに死に近づいていくため、家族との別れの時間を取ることができます。それが良さでもあり、辛さでもありました。良かった点は、母と何度も話せたり、お葬式の準備や母の願いをゆっくり聞けたこと。つらい点は、いつ病状が悪化するか常にヒヤヒヤしながら生活しなければいけないという点です。仕事をしていても、友人と遊んでいても、常に母のことが脳裏にあり100%楽しめることはありませんでしたし、常にストレスがかかっているので仕事の効率も落ちていたように思います。本人はもちろん辛いでしょうが、同じように家族も辛い日々を過ごしました。母と残りの時間を過ごせる一方で、徐々に悪化していく母の病状を目の当たりにしていくというのもなかなか酷なものでした。

何歳になっても挑戦はできる!と伝えたくて家族全員を誘って登った富士山。
数年前はこんなにも元気だったのに。

母が亡くなる前にやってよかったこと

  1. 伝えたいことをすべて伝える

  2. お葬式の準備(本人の希望、内容ぎめ、相見積もり)

  3. 檀家をやめる

母が亡くなる前にやって本当によかったなと思うことは上記3点です。

まずは伝えたいことをすべて伝える。後悔のない別れはないというのは真理だと思いますが、少しでも後悔の少ない別れにするために、本人に伝えたいことはすべて伝える。それができたとき、自分はかなり心が軽くなりました。もう伝えたいことはすべて伝えた。これでいつ亡くなっても心の準備はできている。そう思えることができました。伝えることができるまで、常に心はザワザワしていました。次会いに行けるまで元気でいてくれるかな?とか常に考えてしまっていましたが、伝えてからはそういう心のざわつきが少し減ったように思えます。伝えたと言ってもシンプルなことで、これまでの感謝とか、愛してくれてありがとうとか、お母さんの子で良かったとか。普段気恥ずかしくて言えなかったことをすべて伝えました。やるのは一瞬、後悔は一生。今でも伝えられて本当によかったと思っています。

2つ目はお葬式の準備です。本人にどんなお葬式がいい?とか、お友達は誰を呼びたい?とか。正直こちらに関しては元気なときに笑いながらやっておくべきことだとは思いましたが、我々はできていなかったので(こういう話題って難しい…)、でも後悔のないお葬式にしたかったのでやりました。お葬式に関しては正直残された者のためにやるものだとは思いますが、その中でも本人の意向は反映させたいと思いました。また、実際に本人に聞いてみた感想としては、そうやって着々とお葬式の準備を進めている姿を見て死後の不安なども和らいでいたようにも思えます。親は特に子供の負担を気にすると思いますから、お葬式がバタバタしなさそう、というのは大きな安心になったかと思います。

3つ目は檀家をやめるです。自分は知らなかったのですが、私たちの家は祖父の代からお世話になっている菩提寺(=お世話になっているお寺)があり、そのまま抜けていないのでもし母のお葬式をやるとなるとその菩提寺にお願いする必要があるようでした。ただ、母からの提案もあり、檀家をやめました。

  1. お墓はその菩提寺には無く、法事のときのみの薄い付き合い

  2. 私は実家から離れており、菩提寺にお葬式を頼むとなるとスケジュール調整など何度も菩提寺に出向く必要があり大変

  3. 昔ながらのお寺でお布施の目安なども無く現代の感覚にそぐわない

上記が主な理由です。2番目の理由が最もインパクトが大きいと感じました。例えば菩提寺がある場合はその菩提寺にお葬式を頼むことになるので、お葬式の日程が菩提寺側のスケジュールに左右されることになります。ただでさえお葬式は「お葬式会場のスケジュール」、「火葬場のスケジュール」の2つの空いているところを探す必要があり、それに加え菩提寺のスケジュールも加味するとなるとさらに日程を決めるのが難しくなります。一方で菩提寺が無い場合はお坊さん紹介サービスなどを通じて希望の日程で空いているお坊さんを手配することができるため利便性がかなり良いです。なお、菩提寺がある場合はこの紹介サービスは使えません。また、この紹介サービスを使った場合はお布施の目安が明示されていることが多く、お布施の金額で悩むこともありません。すべてが明瞭で非常に現代に合ったやり方だと思いました。

寺院紹介サービスを使ったときのお布施の目安

葬儀をする上で参考にしたもの

父はお葬式を2回喪主としてやっておりましたが、母の件でかなり消耗していた、母の看病に専念してもらいたい、前回からかなり期間が空いていた、これらの理由から今回は私が喪主を務める事になりました。ただもちろん初めてですし、父もほとんど何をやったか忘れていたのでお葬式について勉強するところから始めました。その時一番参考になったのが以下のYoutubeチャンネルです。

一般葬と家族葬の違いは?とか、葬儀社の選び方、喪主のマナー、葬儀費用の勘所、葬式の意味、お坊さんとの付き合い方、など一通り学ぶことができました。

富士山からの景色。飛行機の上から見る景色のよう。

お葬式の内容を決める

お葬式は数十万円から数百万円かかるイベントですので、複数社から見積もりを取って金額の肌感を掴むのは重要です。結婚式は準備に時間が取れるのでみなさん当たり前のように複数社から見積もりを取り比較をすると思いますが、お葬式となると死後数時間以内にすべてを決める必要があるため複数社比較する時間はありません。そのため事前に内容を決めた上で見積を取り、比較することは後悔しない、ぼったくられないために非常に重要です。

見積もりを取るためにはお葬式の内容を決める必要があります。一般葬(通夜+告別式;親族だけでなく会社の人など幅広く参列者を迎える)、家族葬(主に親族だけで行う)、一日葬(告別式のみ)、のようなお葬式の形式から、自宅安置か施設安置か、参加人数、湯灌の有無、装飾用のお花のランクや棺のランクなどです。結婚式のようにオプションがたくさんあります。

私たちはまず母の要望を聞き、それをベースに内容を決めました。母の希望はとにかく手間のかからないお葬式で、一日葬形式の家族葬、少しだけ友人を呼ぶ、遺体は施設安置が希望でした。残された者への配慮というか、母はどんなときでも母だなぁと。

母の希望を踏まえて、私たちの希望として自宅安置、古式湯灌の2つを追加することにしました。母はあと一回自宅に帰りたいと切望していたので施設安置ではなく、自宅安置にしました。そしてこれは正解だったと思います。一日葬にしたため、通夜がありませんでした。通夜というのは親族みなで集まり故人との最後の夜を過ごす別れの儀式です。自宅安置でしたので、親族や友人が訪れてくれて、最後は一緒の家で寝ることができて、宗教的な儀式こそはありませんでしたが、とても暖かい最後の夜をゆっくり過ごす事ができました。湯灌に関しては実際にお湯を使って遺体を清めるフル湯灌はなんか嫌でしたので(そんな遺体を触ってほしくない)、親族全員で体を布巾で拭き上げる古式湯灌を追加しました。こちらは追加で費用がかかるのですが、丁寧にみんなで母の体を清めることができて、ある意味心の区切りになったというか、気持ちの整理の時間としてとても良かったと思います。

見積もりを取る

お葬式の内容が決まったので見積もりを取りました。今回は、

  • 祖父の代から使っているいつもの葬儀業者

  • イオンのお葬式

の2つの業者で見積もりを取りました。条件は以下です。

  • 一日葬形式の家族葬(親族を中心に呼び、告別式のみ行うお葬式)

  • 参列者は20人前後

  • 自宅安置

  • 古式湯灌

  • 告別式後に食事あり

以下が地元の葬儀業者とイオンのお葬式の見積結果です。葬儀費は大きく分けて3つの費用がかかります。

  • 葬儀費

  • おもてなし費用

  • 宗教者へのお布施

葬儀費は葬儀を行うためにかかる費用です。病院から遺体を安置する場所への移動費、セレモニー会場の使用料やお花代、湯灌、などです。一方でおもてなし費用というのは、参列者に対するお返し(香典返し)やお食事の提供にかかる費用です。葬儀費は葬儀社によって変動する部分で、おもてなし費用は市営の会場などを使用する場合はどこの葬儀社を使用しても変動しません。なので、葬儀費のみ比較することが重要です。

祖父の代から使っているいつもの葬儀業者
イオンのお葬式(薄い部分は葬儀費以外の部分=おもてなし費用)

2つの見積もりを見て分かることは、イオンのお葬式の見積もりが圧倒的にシンプルという点です。

  • 一日葬プランのパック料金:325,000円(割引 5,000円)

  • オプションとして古式湯灌:30,000円

  • 合計:385,000円(325,000 + 30,000 - 5,000 + 税10%)

一方で地元の業者の場合は互助会に入っているため見積もりの見方が複雑です。互助会とは、冠婚葬祭の費用を積み立てておく組織です。毎月一定額の掛け金を積み立て、葬儀や結婚式などの祭事のタイミングで積み立てた金額を利用できます。また互助会利用の場合は通常料金から割引が適用されます。一つずつ見ていくと、

互助会のパックプラン

こちらが互助会部分です。MHというコースを2つ入金済みで
135,000円 x 2 = 270,000円
すでに入金済みということです。MHコースを27万円で購入した、と捉えるようで、別途消費税の27,000円がかかっています(互助会に入ったのはかなり昔で入会時と使用時で税率が変わるため)。このMHコースには会場使用料などに充当され、見積もりの中では控除額▲として表示されています。

こちらが合計額で、もし互助会に入っていなかったら170万円かかるところ、互助会に入っているので107万円割り引かれ、63万円が葬儀費となります。ただし、事前に27万円入金しているので、実質の葬儀費は
631,450 + 270,000 = 901,450円
となります。
互助会としてパック料金27万円を支払っているのにも関わらず、式典奉仕料55,000円や会場設営費55,000円、自宅安置料11,000円、搬送セット27,500円など、葬儀に必ず必要な料金がパック料金に含まれておらず多くの料金が乗ることでかなりの金額差になりました。互助会特別割引として107万円も引かれるのでパッと見かなり安く見えるのですが、他の業者と相見積もりを取ると割引後もかなり割高なことがわかります。

まとめると、

  • 地元の業者:901,450円

  • イオンのお葬式:385,000円

  • 差額:516,450円

かなり大きな差があることがわかりました。また、今回は檀家をやめたため、お寺を紹介して貰う必要がありました。その時のお布施の費用は

  • 地元の業者:150,000円

  • イオンのお葬式:75,000円

となり、差額は更に広がって591,450円の差でした。同じことをして、60万円の金額差です。以上から、今回は初めてで不安もありましたがイオンのお葬式に頼むことにしました。なお、互助会にすでに収めているお金は後日返金していただきました。所定の手数料を引かれた上での返金でしたが、ほとんど戻ってきました。以上のことから、互助会に入っているからといってその業者を使う必要もないかと思います。

山頂で見た日の出

実際の費用

最終的な料金は以下でした。

実際の請求書。薄い部分はおもてなし費用。

見積もり時から大幅に金額が変わった!みたいな事例がネット上では漏れ聞こえたりしますが、私たちの場合は見積もり時と変化無しでした。火葬は市営の火葬場を利用し、そちらがありがたいことに無料なので火葬費はかかりませんでした。

  • 一日葬プラン費用:325,000円

  • イオンカード支払い割引:▲30,000円

  • オプション(古式湯灌):30,000円

  • 合計:357,500円(325,000 - 30,000 + 30,000 + 税)

実際イオンのお葬式を利用してみて

結論としては良かったと思います。結局イオンはただの仲介会社で、葬儀を行うのは地元の業者です。その委託される業者次第ということはあると思うのですが、今回はその委託された業者は地元の大手の業者でした。何も不便無くとても良い葬儀を執り行うことができました。すべてが含まれるパック料金なので値引き交渉など面倒なことをする必要もなく一定料金なので安心ですし、取り仕切るのは地元の業者なので地元の風習などにも詳しく、安心して任せることができました。

パックの内容に関しても「最低限」というよりかは「必要十分」だと感じました。棺に関しても白地布張りですし(最低限だと桐の木そのまま)、ドライアイスも3日分(一般葬の場合は4日分)、施設安置・自宅安置どちらも選べ、遺体の搬送に関しても謎の深夜料金等は無く、ほとんど追加料金は発生しないかと思いました。

また、紹介寺に関してもとても良いお寺を紹介していただき満足しています。お布施の金額も明瞭で、戒名の意味に関しても詳しく説明してくださりとても良い住職さんに出会いました。

一方でイオンはただの仲介会社なので委託先の業者との連携があまりうまく取れていない場面があったのは気になりました。例えば、イオンには手配のときに人数は20〜30人と伝えているのにも関わらず、実際に葬儀社と打ち合わせてみると20人までの会場しか用意できないと言われたり、紹介寺を手配するようにイオンに伝えているのにも関わらず、葬儀社から何度も寺はどうするかと聞かれたり。葬儀社がイオン経由の紹介寺利用の手順が分からず、自分が直接イオンのコールセンターに電話をかけて事情を説明し、その電話を葬儀社の担当者に手渡すことでようやく手配が進行したり。プランの中に初七日法要が含まれているかどうか、などプラン内容を把握していなかったり。葬儀が始まってからは担当の方はとてもプロフェッショナルで丁寧で大変感謝していますが、イオン側があまり葬儀社との連携がうまくできていないと感じました。葬儀社がイオン葬儀についてあまり把握していないため、打ち合わせがスムーズに進まず大変不安になったのは覚えています。そのあたりが改善されたら更に良いかなと思いました。最終的な結果は大変満足していますが、その過程があまり良くなかったように感じます。

富士山からの夜景

四十九日法要

葬儀を終えると一般的には四十九日法要を行います。亡くなってから故人は49日目まで次に転生する世界が決まっていません。仏教は輪廻転生の世界観ですから、これまでの行いを元に裁きを受けて、次にどんな世界に進むかが決まります。49日までの間は、7日ごとに生前の行いを裁かれ、49日目に最後の判決を受けて極楽浄土に行けるかどうか決まると考えられています。このため遺族は、初七日から7日ごとに供養を行います。供養とはつまりバフです。遺族がお祈りをすることで、なんとか故人がより良い世界に行けるようにバフをかけるのです。その最終日が49日なのでその日に法要を行うことが一般的です。最後のひと押しといった感じでしょうか。

四十九日法要では以下のことが同時に行われます。

  • 法要

  • 白木牌(仮のお位牌;お葬式のときは仮のお位牌で行います)から本位牌へ

  • 納骨(自宅の祭壇にあるお骨をお墓に入れる)

  • お斎(親族で行う法要後の食事)

これに伴い喪主はいくつか手配をする必要があります。

  • 法要を行うための寺院の手配

  • 本位牌の制作

  • 納骨に伴い、お墓の墓誌への戒名彫刻および納骨立会のため石材屋さんの手配

  • お斎のためのお食事処の手配

亡くなってから一ヶ月半ありますが、意外とやることはたくさんあります。寺院の手配は今回もイオンにお願いしました。お葬式のときと同じ寺院を手配していただきとても良い法要ができたと思います。本位牌の制作に関しても色々比較しましたがイオンにお願いしました。石材屋さんに関してはイオンは結構割高でしたので、地元の業者をインターネットで探してそこに手配しました。お食事処の手配に関しては、母が生前から大好きだった行きつけのお寿司屋さんがありましたので、そこにお願いをしました。

正直、追善供養や法要の意味など、深くはあまりわかりませんが、こうやって49日目に親族で集まって語らい心を癒やす。法要でもないと皆さん集まれませんからね。仏教の素晴らしいシステムだと思いました。

おわりに

母のがんが分かってから闘病中にやってよかったこと、お葬式、四十九日法要までをまとめてみました。自分自身が経験した最も辛い出来事でした。ただ、この出来事がきっかけでまた一つ家族が強くなれたと思います。妻にも大きく支えてもらい、家族っていいなぁと改めて感じました。友人や同僚にも声をかけてもらって心が癒やされました。今一度これまでの人間関係に感謝する良い機会にもなりました。

家族全員でたどり着いた富士山の頂

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