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友情ってなんだろう?

友情が描かれた文学作品と言えば、

武者小路実篤の『友情』

夏目漱石の『こころ』

というのが超有名で、結局恋愛がらみの男の友情ってイメージが僕にはあるのですが、

タイトルについて考える時に僕の最新のイメージに上書きされているのが、この『殺人の門』なのです。

僕はこの作品が結構好きで、改めて一気読みして、たぶん3回目になると思うんですが、数ある東野圭吾さんの傑作をさしおいて、あえて一冊を選ぶなら、やっぱりこれだなと思います。

この作品は、田島和幸という歯医者の息子と豆腐屋の倉持修という二人の微妙な距離感を描いた話で、手法としては、ドラマ化もされた

に似ていて、読者は主人公の田島くんの視点で常に二人の距離感に疑問を持ちながら読まされる事になります。

もっともドラマの白夜行は、その疑念を別の視点から解き明かす手法になっていて、僕としては、同じ共演の山田孝之さんと綾瀬はるかさんのセカ中の方が感動しましたが。

まっ、それはともかく。

どのような疑念かと言うと、

自分にとって倉持修は本当に友達なのか?と疑いながら、どんどんどんどん不幸になっていくお話です。

600ページを超える長編ですが、もしこれが映像化されれば、倉持修という役はかなり演技力が試されるつかみどころのない人物で、

狡猾ながらも表向きは魅力にあふれ、その実孤独なキャラで、はっきり言って彼がいなければ、このストーリーは成立しないほどの重要人物です。

もう田島くんがめっちゃかわいそうで、その裏で糸を引いている(と思われる)倉持には本当に腹が立つんですが、なぜか倉持自身の人生もそんなに描かれていないのに考えさせられてしまいます。

そして、読んでいくうちに二人の微妙な距離感こそが、いびつながらもなぜか友情と思えてしまうのです。

倉持にも親友と呼べる友達がいないように、田島くんにも結局親友と呼べる友達はいない。

でも、二人は結局はー。

東野圭吾さんの筆致が天才的だからなんですが、これってもう二度と書けないんじゃないの?って思うくらい、この作品には危うい友人関係が描かれています。

青春ドラマで表現される友情は、どうしても美化されがちですが、時に理不尽な非情さや妬みは、誰しも経験があるのではないでしょうか。

この作品は、ミステリーなのに文学してるなぁと心に残る名作です。

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