人を動かす
どこの本屋さんに行っても置いてある名著。
こちらは『道は開ける』のような抽象的な章タイトルではなく、各章のタイトルが要約になっているため、ネタバレになるけど紹介してみる。電子書籍のサンプルでも見られるので、特に問題はないかと。
人を動かす三原則
・盗人にも五分の理を認める
→抽象的なので補足すると、他人を理解する寛容さを持つ
・(相手に)重要感を持たせる
・人の立場に身を置く
人に好かれる六原則
・誠実な関心を寄せる
・笑顔を忘れない
・名前を覚える
・聞き手にまわる
・関心のありかを見抜く
・心からほめる
人を説得する十二原則
・議論を避ける
・謝りを指摘しない
・(自分の)謝りを認める
・穏やかに話す
・(相手が)イエスと答えられる問題を選ぶ(ように話をする)
・(相手に)しゃべらせる→良い聞き手に徹する
・思いつかせる→自分の意見を押しつけず、相手に結論を出させる
・人の身になる
・同情を寄せる
・美しい心情に呼びかける→相手の尊厳を傷つけないようにこちらの要求を出す
・演出を考える→コマーシャルに代表されるような商品の見せ方の工夫
・対抗意識を刺激する→チームで競わせ、やる気を出させる
人を変える九原則
・まずほめる
・遠回しに注意を与える
・自分の過ちを話す(事で相手に注意を促す)
・命令をしない
・(相手の)顔をつぶさない
・わずかなことでもほめる
・期待をかける
・激励する
・喜んで協力させる(ように肩書きや責任感を与える)
少しかぶっている法則もあるように思うけど、それぞれについて実例を用いて納得させていくパターン。
ただ、この本では相手の承認欲求を満たす事がキーポイントになっている。
つまり、人は誰かの役に立っていると思う事でやる気が出るというアレ。
でも、承認欲求を否定する本もある。
それが、ブームにもなった
アドラー心理学。
アドラーは承認欲求を賞罰教育の影響とする。
我々は他者の期待を満たすために生きているのではない。
誰かの目を意識して行動するという事は、自分を世界の中心に置く考え方である。
そうではなくて、自分は共同体の一部であり、人に何かを与えられるように考えるべきであり、例えば親子という関係において、親は子どもをほめたり、叱ったりする縦の関係はやめて、横の関係として見守り、勇気づけると説く。
なかなか斬新な意見。
さらに僕が(というより世間的にも)ガツンと来たのは、
フロイトの原因論の否定。
原因が結果をもたらすのではなく、結果を正当化するために原因(言い訳)を持ち出すと。
例えば、寝不足だからテストに失敗したというのは原因論。
でもアドラーは目的論なので、失敗した事を正当化するために寝不足という理由を持ち出していると。だから、アドラーは過去の原因やトラウマも明確に否定する。
もう少し論を進めて、不幸だと思っている現状は、今の状態が居心地がいいから自ら選択したものであり、それを変えたいなら勇気が必要だと。
自分を変えたいなら、人の目は気にしたり、競争せずに、自己を直視し、他人から嫌われる勇気を持とうと。
ただ、この本の面白いところは、いわゆるアドラー心理学をプラトンの対話篇形式を用いて、哲人と青年の会話口調で説明していくため読みやすい。
特に青年が異常なまでに興奮状態で反論するので、何もそこまで熱くならなくてもと笑ってしまいます。まぁ、それも演出の妙ですが。
個人的には、普通の体裁の入門書の方が好きですが、ドラマや映画を観るような感覚で読めるので、アドラー心理学をイメージでとらえやすいと思います。
短い文章でまとめると誤解されかねないので、興味がある方はじっくり読んで考えてみてくださいね。
それにしてもフロイト・ユングと並ぶ心理学者なのに、あまり知られてないのが意外。
しかもこんなに今読んでも鮮度を保っているとは。
いろんな意見を知る事で視野を広げたいものです。
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