「ウルトラマンロザリス」

序章「歴戦の勇士」

 M78星雲、光の国。多くのウルトラ戦士の故郷。そして、ウルトラ戦士で結成された宇宙警備隊の本拠地でもある。そしてその中には、正式な隊員となる事を夢見る若き訓練生たちもいた。

 「…このように、僕たちウルトラマンと地球人は常に密接な関係にあってきた。その歴史を紡いできたのが、僕の先輩であり兄の、ウルトラ兄弟たちだ。中でもウルトラ6兄弟は、みんなもよく知ってるんじゃないかな。」

 若々しさの消えない、それでいてどこか逞しい声が訓練場を包んでいた。

 ウルトラマンメビウス。名誉あるウルトラ兄弟の中の最年少であり、地球での戦いからおよそ1万年の時を経て現在は宇宙警備隊訓練生の教官を務めている。今や、初めて地球を訪れた際のウルトラセブンやウルトラマンジャックと同じ年齢まで重ねていた。多くのウルトラ戦士の中でも特に地球人との絆を深めた彼は、実戦教育の他に「ウルトラ地球史」という、ウルトラマンと地球人の歴史についての教科を担当する教官として活躍していた。


 彼自身の歴史も偉大だ。かつて彼もまた宇宙警備隊のルーキーとして地球に派遣された。若さ故、そして地球との文化の違い故に多くの苦難を受けたが、彼を受け入れてくれた仲間たちと共に数々の死闘を乗り越え、遂にはウルトラの父ですら倒せなかったエンペラ星人を倒すまでに至った。

 地球を離れた後、彼は悩んだ。激闘を共に乗り越えた仲間とは、寿命が違う。先に死んでいく仲間たち。それを受け入れるまで、彼は長く苦しんでいた。その精神的な負担は彼の活躍を阻害し、警備隊員として戦う事ができない程に彼を苦しめていた。それ故、一時期戦いの表舞台にあまりでない時期もあった。だがその苦しみからも、地球からの一つの贈り物で解き放たれた。そこから聞こえたかつての仲間達の声が、彼に再び戦う気力を与えたのだった。

 今や彼の存在は、光の国では伝説的なものにまでなっていた。それまでウルトラ6兄弟のみが与えられていたブラザーズマントを羽織り、地球で共に戦った盟友と同じようにスターマーク勲章を胸に光らせるその姿は、ルーキーどころか今や立派な歴戦の勇士である。そしてもう一つ、「彼が本気を出すと、翼を広げて炎を纏う」として、その姿もまた伝説として語られるようになっていた。

 多くの若き世代のウルトラマンの憧れの的となっていたメビウス。「メビウス教官」として多くの生徒の支持を受ける一方で、優しい人柄から彼を兄のように慕う生徒も多く、「メビウス兄さん」と呼ぶ派閥もできていた。特にメビウスとの親交が深い生徒達が多くそう呼んでいた。


 ーそして、ここにも一人、彼を兄と慕う者がいた。彼の名は、ロザリス。ー


これから紡がれる物語は、彼が憧れの存在の弟子として、宇宙の命運を賭ける戦いの物語。その先に待っているのは、未来か、それとも…。



 

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