『デジタル・ミニマリスト』読んだよ
『デジタル・ミニマリスト』読みました。
概要
SNSを始めとするデジタル世界の注意経済にとらわれる現代人に警鐘を鳴らしている一冊。デジタルツールのために人生を使うのではなく、人生のためにデジタルツールを用いる戦略を提言されています。
たとえば、「SNSアプリをアンインストールしろ」「イイねを押すな」「スマホを置いて外出せよ」などなど硬派な演習が用意されてます。
要は、SNSは依存症になる仕組みが施されてるから確実に距離を取った利用を意識しないと人生損するぞということですね。
著者自身コンピュータサイエンス研究者でらっしゃるのもあり、別にデジタルを捨てて昔に戻ろうという懐古趣味的な話ではありません。
あくまで、デジタルテクノロジーを全否定しているわけではなく、うまく使いましょうというのが著者のスタンスです。
酒は飲んでも飲まれるなに近い話です。
総評
そこそこ面白かったです。
もっとも、SNSが人の時間を無為に奪いがちなことは、誰しもうすうす気づいていたことでしょうから、目新しさはさほどないもしれません。
江草自身も既にスクリーンタイムなどでアプリ利用を制限したり、少しずつデジタル断捨離は進めてたのもあって主張に驚きまではなかったです。
「いやー、やっぱそうッスよね〜」と耳が痛いお叱りを受けた感じの読後感と言えます。
読んだ効果
本書をきっかけに、はてなブックマークやTwitter、ニュースの利用や閲覧を厳格に制限してみることにしました。
ちょうどインプットに偏り過ぎだったバランスを改善するにあたって、優先順位をつけないと仕方ないかなと思っていたところ。この本のおかげで、方向性に確信が持てて実行する決意ができました。
「忙しい忙しい」「時間がない」といいながら、タイムラインはスキあらばチェックしている自分自身を見て見ぬ振りをしてる方には是非オススメの一冊です。
ツッコミ
ひとつ気になった点をあげるとすれば提言されてる会話中心主義について。
会話中心主義というのは著者が本書で提唱してるコンセプトです。
テキストメッセージやSNSでの交流は対人交流とカウントせず、実際に会話で交流したときだけカウントしようというもの(一応ビデオ通話や電話まではOKだそう)。つまり色んな人といっぱいLINEしただとか、Twitterでリプしあっただとかで、人とつながったとか交遊関係が広がったなどと考えるのはやめなさいという提言です。
テキスト程度では伝えきれないほどの非言語情報が交換されるのが真のコミュニケーションであって、テキストメッセージ、ましてや「いいね」なんかはカウントするに値するコミュニケーションとみなすべきではないとしています。
提言されてること自体は確かにもっともではあります。テキストメッセージのやりとりでフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションの代わりになるとは考えるべきではないでしょう。
ただ、SNSをフェイス・トゥ・フェイスの代用にしようというのは、あくまでアメリカ的な発想であって、日本には当てはまりにくいのではないかと。
なにせ、もともとウェットな対面文化すぎるのが日本。ほんとにテキストメッセージで済むような話でも直に会って挨拶した上で話すのが礼儀とする慣習は根強くあります。
だからこそ日本では欧米と違って匿名のSNS利用が流行ってる気がするのです。本書が何度も取り上げ特に問題視している実名制SNSのFacebookよりも、日本では匿名可のSNSであるTwitterが人気です。
そんなリアルコミュニケーションに既に疲れ果てている日本人は、ここでさらに会話中心主義と言われても刺さらなさそうに思います。もう対人関係や会話がお腹いっぱいだからこそ、匿名で気軽に愚痴を言っていたのにと。
もちろん、だからといってSNSに依存して無為な時間を過ごしていいというわけではありません。ただ、日本人はデジタルだけでなく、むしろ実社会の人間関係も同時にミニマルにしないとはち切れてしまうのではないかと思うのです。
この辺はただのお国柄の違いのせいなので著者に非はないのですけれど、ちょっと日本に合わない話もあるかなというツッコミでした。
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