政治家たちを突き動かすもの

ご存じの通り、こないだトランプ元大統領暗殺未遂事件がありました。幸い命にかかわるようなことにならず、記憶に新しい本邦の安倍元総理の悲劇の繰り返しを免れて、ほんと良かったなと思っています。

日本よりもよほど暗殺の歴史が色濃い米国ですが、民主主義国家の雄として今後ともこうした暴力による政治介入が防がれるように全力を尽くされることを望みます。トランプ氏の態度や思想に色々思うところは皆さんあろうかと思いますが、やはり暗殺というのはね。

しかし、今回のトランプ氏の一件を見ても、改めて政治家というのはとんでもない職業だなあと思わされます。

トランプ氏なんて押しも押されぬ大富豪ですし、タレント的な知名度もあったわけですから、言ってしまえばわざわざ政治家になどならなくても十分に成功してるんですよね。それが、大統領になろうとしたことで今回の件のように命を狙われる場面も出てくるわけで、あえて危険な活動に打って出てると言えます。

悠々自適な富豪生活では飽き足らず、政治家になりたい何かが彼を突き動かしているとしかいいようがありません。少なくともその何かは「ただの金」目的ではありえないでしょう。彼からすれば政治家になるよりもよほどいいお金儲けの手段は見つかることでしょうし、政治に介入するにしてもロビー活動を通して誰か他の人物を立てることもできたわけで。

これは何もトランプ氏ほど世界的に有名な政治家だけでもありません。

たまたまご縁があって江草はプライベートで政治家の方々と話したり飲んだりすることが時々あるんですが、そこで聞く政界の裏話はほんと魑魅魍魎渦巻く大変な世界で、よくまあほんとそんな世界に打って出てらっしゃるなあと毎回思わされます。

政治家を職業の一つだとみなしたならば、あまりに大変そうすぎて、正直割に合うようには見ません。なんかもっとこう楽で儲かる仕事はいくらでもあるだろうとついつい思ってしまいます。なんならたとえ裏金で莫大な資金をもらっていたとしてもなお釣り合いが取れない気さえします（もちろん裏金はいけないことという前提ですが）。

でもまあ、ほんとそれでもなお皆さん政治に引き続き関わりたいという意欲で目を輝かせてるので、やはり単純なコスパではない何かに突き動かされてる感があるんですよね。

いえ、別に彼ら政治家が清く正しいと言おうとしてるわけではないんです。彼らを突き動かしているのは必ずしも純粋な社会貢献的な利他心からでなく、時に権力欲や名誉欲であったりもするでしょう。ドロドロの政治闘争はむしろ大好物で、そうした争いに勝利することが喜びとか、そういう人もいるかもしれません。

しかしまあ、そういった意味でも、政治を志す方々はやっぱり我々一般人とは違う非凡な方々だなあと思うんですね。選挙権の行使としての投票にすら行かない人が大勢居る中で、もっと踏み込んだ行為である、被選挙権の行使をされてるんですから。

もちろん、彼らの主義主張や活動に誤りや疑問があれば遠慮なく批判するべきです。しかし、巷でよく見られるように「政治家はみんなクソだ」「政治家は金まみれだ」みたいにただ十把一絡げに否定するのではなく、彼ら政治家たちの政治に対するとてつもない情熱については、一定の敬意を払っても良いんではないかと、改めて思った次第です。