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存在しない女たち/性は多様だからこそ女性の身体や生活を可視化しよう

反差別笑3

NOTEを散策してたら、反差別を標榜する男子が、こんなポンチ絵を掲示していました(※この図は元画像を参考に私がフリー素材で作ったものです)。
「白人も有色人種も、ゲイもストレートも、宗教者も無神論者も、あなたも骨になれば皆同じ☆」
という意図らしい。

でも、これを見た瞬間、絵師の私は憤慨しました。その理由は……

反差別笑2

白人(男)有色人種(男)ゲイ(男)ストレート(男)宗教者(男)無神論者(男)あなた(男)
生物的男の骨格しかない……。
念のためですが性は社会的性と生物的性があります。こちらの方の記事がわかりやすかったです。
あー貴男は(生物的)女骨格の不在に気がつかなかったんですねハイハイよくある、と落胆しました。なお人種間でも骨格は違います。
障がい者や民族・人種、宗教者もカテゴリの中で男性優位なことが多い。LGBTなんか実質GGGGだしな……

骨格の性差については、下記の記事が分かりやすかったです。

キャロライン・クリアド・ペレス氏の『存在しない女たち』は、そんな「女が不可視とされた世界」を告発します。
女性のケアワーク身体暴力に関する研究や調査自体が結構存在しないという衝撃……実態はあるのに調査研究がないから「ない」ことにされる。
女性にとっては「あるある」の連続で、ハッキリ言って女性が読むとしんどいと思う。
でも、絶対に読んだほうが良い
この男社会をサバイブするためにも必携の一冊だと思いました。

この記事は、公正な視点の書評ではなく個人の偏った感想である旨ご了承ください。

男性が基準(デフォルト)

女性はあらゆる分野でイレギュラーとされていた・男基準の今の世では「ジェンダーニュートラル」も男に有利
☆おもに「女性の身体女性が押し付けられるケア労働・男性→女性への暴力」の三点が軽視・無視されている

→「ジェンダーニュートラル」が男に有利。
いやーこれはあるあるだね……
そもそもが男社会のうえ、ジェンダーニュートラル()が何かを考えるのが「男性」「男性社会に順応した女性」だけだったりするからね……
私が長年名誉男性だったからね……リベラル名誉イカフェミの立場と頭の固さ(柔軟性のなさ)はよく分かるよ……

第1部 日常生活

第1章 除雪にも性差別が潜んでる?

☆女性がメインで使う道路は整備後回し
☆ケア労働を担わされる女性にとって家庭は休息の場ではない
生活実態を無視した「都市計画」のせいでケア労働が酷くなる

第2章 ジェンダー・ニュートラルな小便器

男性中心主義がジェンダーニュートラルという普遍性を装っている
☆公衆トイレをジェンダーニュートラル便所だけにしたら女性ばかり混んだ(男性小便器=男、座る便器=女&男が使うため)
公共施設で女性は犯罪に遭いやすいが、通報しても相手にされんので表沙汰にならない女性の被害には会社が対策もしない
☆スウェーデンでは女子が男子に追い出されるため公園で遊べなかったが、設計を変えたら(公園内を区画で分けるなど)女子が公園で遊べるようになり女性が健康になった

→なお台湾のド天才は四種類のトイレを提言していた。
これなら誰にとってもwin-winではないか。インタビュー内容も全方向に視野が開かれている(「余計なことを言わない」点も含めて)。さすがオードリー・タン

→本邦でもこのような取り組みは始まっている。
でも記事を読んでいくと感覚が鈍い
女子学生が「女子トイレを使うのは当たり前だと思ってた」「異性の目があると不安になる」と言っとるし、記事にも「性犯罪」の実例が出て来んのだが、女子が女子トイレを使うのは慣例とか不安とか漠然としたもんでなく犯罪の多さ取り締まる法律の頼りなさだぞ。
盗撮しづらい構造とあったが、巧妙化する盗撮カメラの種類とか調べとらんのかなーとは思った。以前、私も、駅のトイレで「忘れたタンブラー風の盗撮カメラ」を見つけてな……あれから放置タンブラーは確認してるよ……。
長年工口業界にいたが、昔の成人雑誌は盗撮映像通販の広告があった……。
そして今なお盗撮は軽視されている。SNSにも平気で犯罪画像が掲載される。
女性への暴力が無視されてるからだ。しかし少数ながら男性に対する盗撮もある。なお、どちらもメイン購入者は男だ。イカフェミは何でも知っている。
女子トイレでの犯罪の多さを無視して「シスジェンダー男女」を一括りに「マジョリティ」として語るのは雑すぎん?
マイノリティは「数の少なさ」だけではなく「数は多いが権力がない」場合もあるのでな……(アパルトヘイト下の黒人と白人とかな)。当然どんなケースでも女性全体がマイノリティだと言いたいのではなく、公衆トイレにおいて女性は別のマイノリティとして問題を抱えていると言いたい。

この方のおっしゃる通りだろ……。

→あと単純に「身体構造的に女性トイレのが混みやすい」というペレス氏が取り上げてた例もある。てか大問題。
シスジェンダー女性云々とかじゃなく手術してないFtM(女性→男性)、手術済みMtF(男性→女性)も物理的に時間はかかろう。生理があればさらに時間はかかるし、なくても構造的に男子ほど早くはできない。そもそも生理がなくても女性器はトラブルを抱えやすいんでね……。
女性身体特有の問題を考慮せずトイレを設計したらそりゃー問題が出る。なのでオードリー説(四種類)が一番いいように思える。さすがオードリー。
男性や名誉ヤリテ(※「野党リベラルフェミニズム手を繋ごう男とだけ」の略)だけで考えると、女性身体の問題を無視してしまうんだよ……。

追記・オードリーも著書(というかインタビュー本)で女性身体(自認問わず)への犯罪や問題についてほぼ無視していました。アンタもか……

第2部 職場

第3章 長い金曜日

☆女性のケア労働は一週48時間をゆうに超える
ケア労働に時間を取られて低賃金のパートにしか出られない
社会制度は男に有利にできていた
出産休暇制度があっても使えないようにされてるケースも……

第4章 実力主義という神話

男に与えられた「優秀バイアス」女に不利なシステムを採用してしまう
実力主義だと思っている人ほど白人男を優位に考えている
女性名の論文は引用されにくいが、名前がイニシャルだと引用される

第5章 ヘンリー・ヒギンズ効果

男性の身体を基準に安全対策を考えられているため女性が危機にさらされる
女性の身体の健康が研究されていない
女性の身体には合わない製品が多い(防弾チョッキや農具などで命を落とす場合も……)

第6章 片っぽの靴ほどの価値もない

☆女性は不利な雇用環境・不安定労働におかれやすい
☆不利な雇用におかれた女性が、過労のため顧客の靴片方を汚し、賠償額を給料からしょっ引かれ退職金もなく解雇された

→労働問題や優秀バイアスは、コチラの『ワークデザイン』がわかりやすいです。そっちの方向に特化した本だと思う。
職場での不利な条件とか、慣れ過ぎて麻痺してて俺どっから突っ込んでいいのか分かんねえ(重症)。

第3部 設計(デザイン)

第7章 犂(すき)の仮説

女性の身体で使いやすい農具は導入されない
☆農業下働きの女性は農業者にカウントされない
☆(購入権を持たない場合が多い)女性が使うアイテムの安全性は後回しにされる

第8章 男性向け=万人向け

☆色んな物のサイズは男向け(スマホ・ピアノ・車・安全用品その他多々)
音声認識は男声のが認識されやすい(女性は「低い声でしゃべる努力をすればいい」などと強いられる)

第9章 男だらけ

膣に関する研究がない
高齢者の安全に関する性差研究がない
車の安全対策も男性身体が基準(女性身体のダミーは使われない・妊婦の安全は無視)

→私は5年ほど就農者だったが農具はマジで女性向けじゃない。
オッサンが「これが使いやすい」と薦めてくるが、「背でけーオメーが使いやすくても私には使いにくいんだよ」ってものばかりだった。

→膣に関する研究がないってのには乾いた笑いしか出ない。
ヘテロ男に都合いいアダルト媒体は山ほどあるのに、膣は研究すらされてないなんて……。

第4部 医療

第10章 薬が効かない

女性の身体は研究されていないため、女性の不調は「思い込み」にされやすい
☆かつて女性身体は「男のなりそこない」だと思われていた
女性が治験から外される・解剖学のテキストにすら載ってない・実験用ラットすらオス
人体の細胞組織や臓器には性差がある。罹患率・経過・重篤度にも違いがある
ワクチンにも性差が必要・健康法にも性差があるが女性は無視・氷嚢にすら使い方に違いがある
男にだけ効く薬が「一般向け」として出回る
女に効くかもしれない薬が「男に効かないから」除外される・「男に有効な治療法(※女性は知らん)」が女性に悪影響&死者続出

第11章 イエントル症候群

☆一般的(=男性向け)な予防法が女性に効かない
男性は人類のデフォルトではない・男のデータは女に当てはまらないものも多すぎる
女性の病気は診断されない
→痛みを訴えても診断されず「精神的なもの」とされた場合でも、実は「女性に多い病気」だったケースが多々
→自閉症の基準も男子・女子の症状は無視されるため支援が行きわたらない
治療の研究がされてない婦人疾患も多い
女性が痛みを訴えても鎮痛剤が貰えない(男は貰える)

→日本でも天野惠子先生辺りが性差医療を広める活動をされてますね。
私は「女性に多い精神的()な問題」として治療をされて肉体的死を迎えそうになったから本気で腹立たしい!!
女性医師が担当のときは、そんなことなかったけどな……。
女性の身体に合う治療法があったら、私もあんなに苦しまずに済んだかもしれない……悔しくてならない!!
今の医療は「男性医療」なのだな……。

第5部 市民生活

第12章 費用のかからない労働力

☆賃金の発生しないケア労働を計上したら女性のほうが労働時間が長かった
GDPにケア労働は含まれない
女性の過労は無視される(家事育児で過労入院の女性は、再び過労で倒れて入院する)

第13章 妻の財布から夫の財布へ

世帯ごとの税金控除は夫に有利でも妻に不利
☆おもに妻が購入するものは税金控除対象外になるものが多い

第14章 女性の権利は人権に等しい

☆ヒラリークリントンへの罵倒はバーニーサンダースの二倍
☆カマラハリスが「男性政治家を真似て答弁」したら「暴力的だ」的な注意を受けた
☆女性消防士が「ファイヤーマンじゃなくてファイヤーファイターにしよう」と提案したら嫌がらせを受けた(その後定着した)
男は女の話を遮る
☆女性向け政策は女性のが実行する場合が多い

→これな……

→14章、思いっきり推しが女性蔑視発言で燃えてるんですが(バーニー・サンダース)、私は推し無罪ではないので盛大に燃やして頂きたい。
推し燃ゆ!!

→そしてケア労働の過労入院話しんどすぎなんだが……。ナオミオルダーマンの『パワー』みたく女性にのみパワーが宿ること起こらないかね。

第6部 災害が起こったとき

第15章 再建は誰の手に

☆男性が「キッチンのない仮設住宅」を作ってしまった
生活コミュニティでケア労働をしたことのないオッサン連中は、災害後に「町おこし」をやってしまい、本当に生活に必要な再建をしない
☆女性リーダーが交渉の場につくと平和が持続する確率が上がる

第16章 死ぬのは災害のせいじゃない

「ジェンダーニュートラル」は必ずしも男女平等を意味せず、実際は女性に大きなリスクを課している
☆女性ホームレスが数の上で少ないのは、ホームレスとしてカウントされない「家庭内暴力センター」に身を寄せるため
シェルター・避難施設が男性基準の設計
入管で性的暴行があってもバズフィードが「ない」と報道(のちにガーディアンが「横行してる」と報道)
災害時の性犯罪は野放し・カウントされない
☆文化的に日常で女性が出歩けない地域では、災害時に避難できず女性が死ぬことが多い

→今でこそ表に出た災害時の性犯罪、10年前は「性犯罪はデマです」とか拡散されてたもんな……何がデマなもんか絶対忘れねぇぞ

生理用品を贅沢品(?!)と判断した男の話題は今も結構見かけるしな……
「男は生理が分からないから」と言ってるヤツとかも端末使って言い訳する時間あるなら検索して欲しい……でも検索苦手なヤツもいるからな……

日本の入管は酷すぎの一言だが、海外の入管も酷ぇな……しかもBu〇zFeedが火消しとか、まるで日本のBuzzF〇edやん……(リンク張った直後に悪口)。

【個人的所感】身体の性も多様。だからこそ女性身体を可視化しよう

昨今、「身体の性も二元ではなく曖昧」と主張する方々も見かけます。以下は弁護士・仲岡先生のコラムより。

女性の中にも、また男性の中にも、様々な外観の人がいるという事実を認めなければなりません。私の周囲は偶然か必然か、女性の中でも中性的な容貌の人が多いので、しばしば男性だと認識されてしまうという知人も少なくありません。
第三者が外観のみから正確に判断しきることは実際には困難なのであり、私たちの社会は、"外観上の一応の記号"によって男女を識別するという、非常にファジーなお約束によって成り立っている

「身体は性差より個人差」とかいう人には「観察眼ゼロか?」としか思わないのですが、「身体の性」については、確かに10年以上裸体の女性や男性を観察して描いてきたイカフェミ絵師から見ても、必ずしも男性身体・女性身体のステレオタイプに当てはまらない人は意外といます。普通のおばはん私氏も一部男性骨格。ただし身体の性差自体は「個人差」にできないレベルの違いはありますが

美術解剖学の加藤先生もこのように発言しておられる。

しかし、それをもってしても「外観上の一応の記号で男女を識別するファジーな約束」と言い切るのは鈍すぎ・乱暴すぎると私は思います。

服装や生殖器や戸籍や性自認が男でも、身体の女性的特徴が強いため(てか骨格と肉以外には女性要素が特にない)不自然に同性から体(太腿や尻など)を触られたりセクハラ発言を受けまくる男性たちは何名か知ってます(特定を防ぐため詳細はぼかします)。彼らは女性からも女扱いを受けがち……。
彼らに性加害する男や、彼らを女扱いしてしまう女性たちは、彼らの体格の女性的要素を理論的に解析できているわけじゃない。でも直感で捉えている。人間は人体を見慣れ過ぎているため、小さな違和感に気付きやすいんだそうよ……。そりゃ性差を適当に判断するときは多々あるけれど、決して外見の記号で性別を見分けるファジーな約束とは言い切れない部分もあります。
権力・筋力が強い男性でも身体が女性寄りなだけで狙われ(筋力が強くても骨格や肉付きは女寄りって男はいるよ多様なんで)、強者ゆえの警戒心のなさや同性に対する油断につけ込まれて酷いボディタッチを受け入れてる人もいる……加害男たちを晒してやりたいけど、被害者側のアウティングは絶対ダメだし、ああいうのどうしたらいいんだろう……。
ある女性的骨格の男性から数年前に聞いた「男友達と某男性専用施設に行ったときの話(同性の悪ふざけと称したセクハラ行為を受けまくっていた)」は、私自身が体験したわけでもないのに、今でも記憶を消したいレベルでショックな内容だった。個人特定を避ける・公開の承諾を得ていない・私が二度と思い出したくないため詳細は書けませんが……。加害男たちには「同性でもセクハラだから駄目!!」と怒ったし(身体特徴に言及できないので)、それからは表立って悪さはしなくなったみたい……どうか無事で、と祈るしかない……。

このように、女性でも男性でも、身体的性が必ずしも型通りに嵌らないケースはある。
が、その身体造作ゆえセクハラされる男性たちのように、身体に女性的要素があればあるほど加害されやすくなる
それは「無視されてきた女性身体への暴力のひとつ」のように私には思えるんだよな。彼らが男性でも、狙われたのは体の女性要素だから……。
でもこれ繊細な問題だよね……どうすればいいのかわからない……けど彼らへのセクハラは現実にあって、見なかったことにはできない……。「誰にでもセクハラは駄目」が正解なんだが、身体特徴ゆえに狙われやすく「同性の悪ふざけ」ギリギリの線を攻めてくる加害男とかもいて……彼らは拒否してないけど、拒否しないから問題ないわけじゃないはずだ……。

決して「個人差」として収斂できない身体の性差を認め、無視・軽視されてきた女性身体を可視化することにより、女性身体の人々が救われるのは勿論、そうした女性的身体特徴を持つ男性たちもどっかに救われる部分があるのではないか……と私は思います。
私は男性も救うイカフェミなんで……いや、彼らというよか彼らの女性的身体要素への加害が見えなすぎるんだよ……。

彼らや私の身体が何で一部異性型か理由は知らんけど(加藤先生が仰るように、そういう人わりと見かけるので)、念のため、こちらのHPもリンクしておきます(ただの絵師の私は全く専門外なので語れません)。

女性研究者の参入で変わることもある

こんなニュースもありましたが、ペレス氏も「女性を登用することで解決する問題は多いだろう」的な感じで締めています。

「性はグラデーションなので女性と男性に分けても仕方ない」という見方もありますが、絵師の私は、グレーのグラデーションを的確に捉えるためにも、予め「黒と白の特性を理解しておく必要がある」と思います。

繰り返しになりますが、今まで不可視とされていた「女性」を可視化することで、女性が救われるのはもちろんのこと、見落されがちなグレーの領域も解決するものがあるのではないか……と思いました。(イカフェミ的結論。イカフェミだから仕方ないね)

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