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【-間-】展示会レポート Chim↑Pom展:ハッピースプリング

こんにちは。
ブログ【-間-】、今回の担当は佃です。

今日は、現在森美術館で開催されている展示会『Chim↑Pom展:ハッピースプリング』のレポート記事になっています。

展示会を基軸にChim↑Pomについて深ぼる!!!
筆者の勉強記事のようになっています。

めちゃくちゃ短くまとめた動画をYoutube、Tiktokに上げておりますので、忙しい人はそちらを見てみてください。

Chim↑Pomとは?

まず、展示会のレポートの前にアーティスト・コレクティブ、Chim↑Pom(チンポム)について見ていきましょう。
Chim↑Pomは計6名からなるアーティストコレクティブ - 複数のアーティストが協働する形態 - です。

卯城竜太・林靖高・エリイ・岡田将孝・稲岡求・水野俊紀により、2005年に東京で結成されたアーティストコレクティブ。

http://chimpom.jp/profile.html

Chim↑Pomの作品と言えば、「ヒロシマの空をピカッとさせる」や「スーパーラット」が有名でしょう。

引用:https://www.mirainoshitenclassic.com/2016/01/chimpomart.html

詳しい紹介は後に行います。

作風や活動は森美術館の紹介文がわかりやすいので、そちらを引用します。

Chim↑Pom(チンポム)は、独創的なアイデアと卓越した行動力で、社会に介入し、私たちの意表を突く数々のプロジェクトを手掛けてきました。作品の主題は都市、消費主義、飽食と貧困、日本社会、原爆、震災、スター像、メディア、境界、公共性など多岐にわたり、現代社会の事象や諸問題に対するメッセージ性の強い作品でありながら、その多くにはユーモアや皮肉も感じられます。

https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/chimpom/

皮肉めいたユーモアのある社会批評性を持ったアーティスト
彼らを一言で言い表すとこのように言えるでしょう。

以前、筆者個人のブログで、作家は
・岡本太郎派
・メタゲーム派
・社会批評派

の三種類に分類できるのではないかと考察しました。
この場合、Chim↑Pomは社会批評派に属するでしょう。
さらに、独特なユーモアを交えながら皮肉めいた作品や活動を行うのはChim↑Pomならではですね。

同じ社会批評派に属する作家に会田誠がいます。

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%9A%E7%94%B0%E8%AA%A0

Chim↑Pomのリーダーである卯城竜太さんは会田誠の弟子にあたり、独特のユーモアで社会問題を浮かび上がらせる手法は似たものを感じます。
彼と比較することでChim↑Pomの作家性を深ぼっていきましょう。

この画像は、東京オリンピックに伴って新設された新国立競技場をテーマに、会田誠が作成した作品です。
女性器のような形をしており社会批評性を感じますが、男子中学生の拗らせた性癖のようなものも感じます。

引用:http://rockhurrah.com/blog/?p=9386

同じ社会批評性を孕んだ作品と言っても、Chim↑Pomとは根本的に違うものを感じます。

会田誠は拗れた男子中学生のような暴力性があります。
誰しも一度は頭をよぎったり心の奥底で思ってたりしたことを、掬い取って真っ直ぐ作品に仕上げている印象を受けます。

それに対して、Chim↑Pomはもっと真っ直ぐでコミカルかつシニカルな大学生サークルのような勢いがある作家だと感じました。
社会を斜めから見てノリが良いポップなスタイルは、チームであること、さらにメンバーに女性がいるからこそなのでしょうか?

ここまでは、Chim↑Pomの活動スタイルと作家性について簡単にまとめていきました。
それでは代表的な作品を詳しく見ていきましょう。

代表作1:ヒロシマの空をピカッとさせる

Chim↑Pomの代表作といえば、「ヒロシマの空をピカッとさせる」と思う方も多いはずです。

引用:http://chimpom.jp/project/hiroshima.html

これは、広島原爆ドーム上空に飛行機雲で「ピカッ」と描いた作品です。
この作品は、社会的騒動になり報道が過熱したこともあり謝罪会見にまで発展、予定されていた広島市現代美術館での展覧会が取り止めになりました。

その後、Chim↑Pomは被爆者団体とも交流し、著書『なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか』を出版しています。

ホームページにも書いてあるように、日本に落とされた原爆”リトルボーイ”によって日本は「去勢」され、その土壌がアニメやマンガといった日本を代表するサブカルチャーを生んだのだと言った村上隆とは、別種の思想があるように感じます。

また、原爆をモチーフとして扱ったアーティストは、柳幸典や村上隆など日本にも多くいるが、世代によるものか、彼らとChim↑Pomとの相違も浮かび上がる。

http://chimpom.jp/project/hiroshima.html

代表作2:スーパーラット

ここでもう一つ自分の好きな作品を紹介しておきます。

『スーパーラット』です!

この作品は、渋谷といった都会のネズミを剥製にしてピカチュウにしてしまうものです。

引用:http://chimpom.jp/project/superrat.html

今回の展示会『Chim↑Pom展:ハッピースプリング』にも展示されていました。

作家名・作品名:Chim↑Pom『スーパーラット』

この作品名は、村上隆の提唱した『スーパーフラット』にかけているそうです。

引用するには少し長いですが、良いキャプションを見つけたのでそのまま引用します。

アートとかロックとかパンクとか
ドブネズミみたいに美しくありたいカルチャーと
ジャパニメーションとかギャルだとかの
ジャパンポップというか
「スーパーフラット」の交差点は
渋谷のスクランブル交差点なのではと
思い立って
思い込んで
思い詰めた僕たちは
終電に乗ってセンター街にやってきた
やはり最近の若者であろう僕たちは
眉を顰められながらも
現代の人間の都市生活によって作り出された
「スーパーラット」が
人間との歪んだ共生を送ることに
大変な共感をしながらも1匹1匹と
ドンキで買った虫取り網でその同志を捕獲する
駆除するためではない
毎日喰う肉の原型に触れることすらできないような
我が恐ろしく強い動物愛護の精神に誓ってもいい
目的はただ
本物のピカチュウを作るとの一点なのである
その一心で
ゴミ袋の山を蹴り
壁づたいに逃げ出したネズミを追いかける
「待て スーパーラット
僕たちは敵ではない
Chim↑Pomだ!」
すべてが言い訳がましく響く夜の日本のセンターで
僕たちは作品を作るべく
夢とネズミを追いかけた

https://www.mujin-to.com/exhibition/%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E2%98%86%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%88/

スーパーフラットの交差点である渋谷のスクランブル交差点付近に生息する、殺鼠剤などの毒への耐性を持ったスーパーラットをピカチュウにする。

最後の「すべてが言い訳がましく響く夜の日本のセンター」というフレーズもさまざまな方向へ皮肉が効いてていいですよね。

今回の展示では、なぜか真金に塗装されてました。
(権利問題などの影響?)

個人的には六本木ヒルズの広場で同時に、ダニエルアーシャムとポケモンがコラボしていたおり、流石にまずかったのかもしれません。

展示会レポート Chim↑Pom展:ハッピースプリング

さて、いよいよ本題の展示会レポートを書いていきます。

細かく作品を紹介していくというよりは展示会全体の雰囲気やお気に入りの作品を紹介してきます。

まず、入口を左に曲がると地下室のような空間が広がっています。
中では、チューハイの空き缶が干されていたり、スーパーラットがいたり、全体的に不潔なもの多く設置されているようでした。

地層を模したような展示もあり、天井は2mもないほど低いです。
そして、天井には金網があり光が漏れて差し込んでいます。

天井を支える単管パイプも剥き出して、無骨な展示空間だという印象を受けました。

しかし、足場を組むときに使うような鉄製の階段を上とあっと驚かされます。

「なるほど!」

広がっているのはアスファルトで舗装された道路のような空間でした。

ここで初めで、さっきまでの空間が我々が普段歩いている道路の下の排水溝や地下を模した空間だということに気づきます。

マンホールからは下の階を覗くことができます。
この展示空間が、日本の街並みを模倣したインスタレーションになっていたのです。

森美術館は六本木ヒルズの53階にあります。
こんな高い場所にアスファルトで舗装された道を作るという発想はなかなかファンキーですよね。

めちゃくちゃ力の入った空間設計だと感じました。

自分が行った日には、メンバーのエミリさんがサイン会を行なっていて、キャプションに書いてある通り、『道路や広場における「公共性」をテーマに鑑賞者と一緒に、より自由で開かれたものに育てていく』というメッセージ性が表れていました。

ほかにも地下の展示会場では目につかないであろう場所に作品が展示されていたり、いたずら心の大切にしながら設営を行ったというような印象を受けました、

最後に

まだまだ、展示会の魅力は語りきれていませんが、文章で読むより実際に体感してこそChim↑Pomの作品の魅力は伝わると思います。

ぜひ見に行ってみてください。
後悔はしない完成度に高い展示でした。
ではまた!

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