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金曜日の夜、肉塊を食らう

 金曜日の夜は少し贅沢をしたい気持ちになる。けれども、週末に美味しいご飯を食べたいならそこまで高いものは買えない。マックあたりで手ごろにおいしくすませたいそんな気持ちになる。そして今日は、マックではなくて肉の塊を食べたかったのである。

 肉の塊を食べたい。その一心だけで、帰宅途中にある比較的安価な肉を売っているお店に自転車を向ける。本当に安いお肉を買いに一駅自転車を動かすには少し荷物が重いので諦める。そして、ついでの買い物もしつつ、お肉コーナーに向かう。そして、ステーキフェアの登りが私を喜ばせたのである。高すぎるお肉はいらない。できれば量が欲しい。そんな気持ちを持ちつつ、ステーキフェアを覗く。そこにあったのは、ラップに包まれただけのセール品からさらに半額の国産肉。それがちょうど2枚。300グラム弱というのもありがたい。ウッキウキでカゴに入れて、さらにジャガイモも買う。コーンとほうれん草は家にあったので買わずにすませた。

 家に帰る。肉は常温にしておく。配偶者はいつもより早く帰ってくる。じゃがいもを洗って適度に切って、電子レンジで火を通す。それに塩を振って少し多めの油で焼けば簡単フライドポテトの出来上がりだ。冷凍のコーンとほうれん草もバターと胡椒で炒める。配偶者が帰ってくるタイミングで肉を一気に焼き上げる。強火で両面を焼いて余熱で火を通す。ミディアムレアの出来上がり。鉄板はないのでそのままお皿にもる。なんというご馳走だろう。特別なソースはなくてもいい。塩と胡椒そして、味が足りなければ焼肉のたれをつければいいのだ。

 肉塊を食らう。幸福に包まれる。なんとなく元気が湧いてくる気がする。肉を噛むたび、美味しいという気持ちが溢れ出す。肉汁が、肉の弾力が活力を高めてくれる気がする。ああ、幸せだと思いながら、食べる。セール品のさらに半額。800円のステーキ肉に頬張りたく幸せ。幸福指数が高い。配偶者も美味しそうに食べている。なんと幸せな時間だろう。気持ちが豊かになってくる気がする。最後の一切れを口に入れれば、少し寂しいけれど、食べた、美味しかったという気持ちが溢れて、心が満たされるのである。

 肉の塊が食べたかった。たまたまいいお肉が安く手に入った。良い感じでご飯を整えられた。なんと幸福な週末だろう。今週はいろんなことがあったけど、そんなものがどうでも良くなるくらい幸せだ。良いものを食べて幸せに生きる。それだけで、幸せだと感じるのだから、人間は現金だ。全ての生き物を食らって生きている。だから、全てのものへの感謝は忘れない。命をいただきました。ごちそうさまでした。


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