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身体的特徴から服を選べる喜び

 ごくごく平均的な日本人体型の私に、一つだけ突出した身体的特徴がある。胸が平均値より大きいという点である。漫画の巨乳キャラほど大きくはないが、一般的な下着店では着用するサイズがない程度には大きい。私が学生を過ごした時代よりは私のサイズを売っている店は多くはなったが、いかんせんセールになってもさほどは安くならないし、一枚あたりの単価が大きくなかなか買い換えることもできないというしんどさはいまだに抱え続けている悩みである。

 私の胸が平均値より大きくなり始めたのは中学くらいの頃だった。まだまだスポーツブラを愛用していた頃だ。周りが段々とワイヤーのあるブラをつけ始めた頃に私も下着店でアルファベットの数字のついたサイズのバラを買い始めるようになった。そしてそのまま、毎シーズン大きくなって行ったのである。その頃からだ。自分がデブであると認識し始めたのは。

 私の中学時代の制服は体格の大きな従姉妹のお下がりだった。少し大きめの制服は私をよりふくよかに見せた。ジャージも何もかもお下がりだったから、私は常にダボダボの服を着て中学を過ごした。友達とふと鏡に映った時、私はなんで太っているのだろうとうっすらと傷つく日々だった。けれども今思えば決して太ってはいなかったし、お腹もさほど出っ張ってはいなかった。骨太なアスリート体型で華奢ではなかったが、決してデブと言われるような体型でなかったと思う。

 けれども、自分がデブであると思い込み、家族からも大柄なタイプだと指摘され続けると、それに見合った生活をしやすくなる、というのが私の持論である。太っていることを全ての言い訳にして、自分自身を丁寧に手入れすることも、可愛らしく振る舞うこともできなくなってしまうのである。高校生になり、中学より運動をしなくなって徐々に太って行った。それから大学に至るまでずっと少しずつ体重を重ねて行って、26になる頃には一つの大台を越えそうになるくらいまで太っていた。その頃の写真は封印してしまいたいほどだ。

 しかし、あるきっかけから、一気に15キロ以上体重が減った。スリムというほどではないが、全体的にすっきりとして、くびれができたのである。今は少し体重が戻ってしまったけど、それでも昔ほどお腹も出ていないし、筋肉がついたことで全体的な弛みも減った。一番痩せた時、今まで来ていたゆとりのある服が私を華奢に見せてくれるような気もするほどだった。

 そんなタイミングで、胸の大きな人のための洋服店に出会った。overEという店だ。ちょうどポップアップがあるとのことで遊びに行った。そして、胸が入ってスタイルが良く見える服を着る感動を覚えたのである。胸が潰れることなく、すっぽりとゆとりを持って覆われ、ウエストには綺麗なくびれができていた。着用しただけでダイエットに成功したような感動を覚えたことを覚えている。そして、同じようなコンセプトのブランドがもう一つあることを知った。HEART CLOSETという店である。

 いまや、私のクローゼットの中身はほぼその二つの分ブランドで独占されている。ワンピースなどは特にそうだ。今までショーウィンドウのマネキンのようには綺麗に着用できなかった可愛らしい服。それが、体に寄り添うようにぴったりな形で着用できる。そんな喜びが私のクローゼットには溢れている。それぞれ、決して安いブランドではないけれど、毎日お気に入りを着用できているような喜びがあれば、決して高くはない。そんな気持ちになれるのだ。

 喜んでいる一方で、こんなブランドが学生の頃にあれば私はもう少しだけ自分に自信をつけることができたのだろうかと考える。せめて高校のワイシャツだけでも体に寄り添ったものであれば、太っていると自分を蔑むことなく過ごせたのかもしれないと思うと、なんともやるせない。まあしかし、学生時代にそれが存在していた時で手が出せる値段ではないので、ある意味なくてよかったと言えるのかもしれない。

 昔のことはどうであれ、いまはHEART CLOSET とoverEが私の自尊心を上げてくれるパートナーとなっていることは間違いのない事実だ。服に傷付けられた自尊心は服によって高めるしかない。そして服によって高められた自尊心はより自分を磨くためのやる気につながるのである。折角胸があるなら、不二子ちゃんにでもなってやる。そんな気概で自分のために自分を磨くことがあってもいい。私の身体的特徴を、全て自分の味方にできるように今日も素敵な服を着てにっこり笑って過ごしたい。

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