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備えへの意識変化

  実家にいたとき、ほぼ災害への備えというものを行っていなかった。災害が警告されていた地域ではなかったし、田舎ということもあって平素から備蓄はできている状態であったし、何より身近ではなかった。しかし、実家にいるときに災害は起きた。幸い、ライフラインにも家にも大きな損害はなく、むしろ、被災してしまった親戚を実家に招き入れる、といった状態であった。被災地には組み込まれていて、被災状況は身近にあったが、自分自身には全く問題を感じなかった、そんな災害体験であった。
 相変わらず、実家ではこれといった備えは行っていないようである。もともと災害が少ない地域なので、両親があと生きるうちは大きな災害はないだろうし、田舎は案外災害に強い。地域の仲間意識も残っているし、備蓄は地域でできているようなものだ。転じて、都会は災害に弱いといってもいいと思う。隣にだれが住んでいるかわからないからいざというときに協力できる人なのかわからない。近くにモノがあふれているから日ごろから物を集めておかない。家が密集しているため、倒壊や火災による被害が甚大化しやすい。被災者が多くなるために地方からの物資が届きにくい、などなど……。
 そんな都会の災害に対する弱さを客観的に感じられるようになったのは、都会に出て結婚してからである。そもそも、貧乏時代は備える前に日々を生き抜くことが重要で数百円を削りながらの生活に備蓄をするほどの余裕は生まれない。また、都会の家の狭さでは備蓄品を置くスペースはない。結婚前はシェアハウスで、個室のスペースは4畳もなかった。収納もなかったので、災害リュックを持つことも考えてはいなかった。比較的建築年数の浅い2階以上に住んでいたため、その地域のハザードマップ的には浸水することはない状況であったことだけが幸いだったかもしれない。まあ、引っ越し前にハザードマップなど見ていなかったわけであるが。
 結婚して、金銭的にも住宅スペース的にも余裕が出て、やっと災害に備える余裕ができた。もとより夫が災害備蓄に積極的であったため、水や食料の確保は結婚直後に行った。ついでに防災グッズの入った防災リュックも買ったし、最低限の備えは行っている、という認識であった。
 しかし、こどもを産んで育休をとっている現在、少し余裕ができたため、備蓄の見直しを行ってみることにした。残念なことにほとんどの缶詰といくつかの食糧が賞味期限切れしていた。そろそろと思っていたが、行動が遅かったようである。まあ、賞味期限が最初から長い食品に関してはある程度賞味期限が過ぎていても食べられなくなるわけではないので、少しずつ消化している日々である。同時に缶詰は災害時ゴミになりやすいということもあるため、備蓄をパウチタイプに変更していくきっかけにもなった。
 備えることを考えるうえで、最近参考にしているYouTubeチャンネルがある。「死なない防災!そなえるTV」である。チャンネル主は、防災の専門家であり、常にスーツでまじめな語り口であるがとてもユーモラスで語りがうまい。また、単に防災用品を紹介するのではなく、そもそも防災とは何かといった根本的な部分から解説してくれるので、今何から備えを始めるべきか、ということを考え直すことができる。番組で繰り返し述べられることで、心に残っていることは、「引っ越しこそが最大の防災」である。ハザードマップに当てはまらない地域に住むこと、そもそも避難所に行かなくていい状態にすることが重要なのだという。避難所に行く必要がなかった私にも避難所がどういうものであったかという声は虚実問わず届いた。避難所に行かないでもよい準備を行うということは、なるほどとても重要な観点である。
 けれども、今はすぐに引っ越しできる状態でもないので、上記のチャンネルを確認しながら備蓄や準備をするしかない。現状、災害に弱い0歳児を育てている。大人でもつらい避難所に0歳児は連れていきたくはない。隣近所と顔見知りというわけでもないので、全くの他人と隣り合わせで非難するのはストレスもすごいだろう。それに、首都圏が被災した時、その災害に対する被害補填をできるほどの国力はもはや分散していない。助けることよりも火の粉が降ってこないようにこらえることしか地方はできない可能性がある。
 都会はとても暮らしやすい。周りの目を気にすることなく利便性を享受して生きていくことができる。しかし、それは災害へのもろさと隣り合わせだ。そもそも防災対策ができない状態でない人間も多い。それに、高齢化により避難所が高齢者の集まりになる可能性も高い。避難所に行かなければならないことのリスクを正確にとらえ、家に籠城できる準備を行うことが必要であると考える。今現在、都会に生活基盤がある状況では、さまざま知識を集め、しっかりと防災する必要がると感じている。

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