Evy式 適正株価算出投資法 ver.3.0

私が独自に作った、「日本株」「中小型株」「集中」「順張り」の投資手法を紹介します。

1.本投資手法の強み

  • バランス良く作りこんだ「5大要素」に着目して企業評価することで、安定して「ピカピカ企業」を選択できます。

  • 企業評価を、投資判断の目安となる「適正株価」に数値化できます。

  • 「8分割ポジションサイズ」と、これに合わせたシンプルな独自ルールを用いることで、ポジション管理と利確損切が、自然と的確になります。

まず最初に、企業評価を行い適正株価を算出する方法を紹介します。

2.投資する価値のある「ピカピカ企業」を買う

株式投資で重要なことは、次の5大要素を兼ね備えた「ピカピカ企業」を買うことです。

  • 魅力的なビジネスモデル

  • 競争優位性

  • 強い財務指標

  • 業績安定性

  • 今後の成長

あらゆる要素を細分化して横並びに評価すると、些細な事で投資対象からこぼれたり、重要な要素が過小評価されます。
逆に、たった1つのキーワードで投資対象を選んだり、情報サイトに煽られて選ぶのは、論外です。

「投資する価値のある企業とは何か?」を突き詰め、最もバランス良くまとめたものが、この5大要素です。

これが絶対の正解ではなく、それぞれの投資家に答えがあるでしょう。

重要なことは、自分なりに作りこんだ企業評価のモノサシを繰り返し使って、一部の情報やその場の感情に引きずられない、安定した「匙加減」を身に着けることです。

使い込んだ調理道具で、毎日ピタッと同じラーメンを作る職人に似ています。企業評価のモノサシを作りこみ、「ピカピカ企業」を安定して選べるようにします。

3.「ピカピカ企業」を「定価(適正株価)」で買う

株式投資で重要なことは、「ピカピカ企業」を「定価」で買うことです。

当たり前の話ですが、「ピカピカ企業」であろうと、定価の3倍の値段で買ったら大損です。

結論から書くと、成熟した「ピカピカ企業」なら、益利回り7%(PER14〜15)。EPS100なら株価1400円が、定価です。

これは、あくまで分かりやすくイメージするためのモデルケースです。

毎年100円のタマゴを生む。30円は貰えて70円は餌代に消える。病気も少なく、2%成長するピカピカのニワトリ。いくらだと思いますか?という話です。
凄いもんだと1万円で買って毎日眺めてウットリしてる。これが勝てない投資家です。
定価は1400円です。1680円なら買ってもいいかもしれませんが、1万円で買ったら、自分より常識知らずな人を煽って売るしか得する方法はありません。

「ピカピカ企業」を選ぶだけでなく、その定価も知ることで、はじめて儲かるのです。よって、ピカピカ企業の定価(適正株価)を算出することが、投資の第一ステップです。

4.基準PERの算出

定価=適正株価=「基準PER」×「確約EPS」

まずは基準PERを算出します。

モデルケースでは、ざっくり「成熟企業ならPER14〜15」と言いましたが、実際には、基準PER0からスタートして、ビジネスモデル評価で+2、競争優位性評価で+1……と、加点方式で基準PERを出してゆきます。

①次の4要素を評価して基準PERに加点する

  • 魅力的なビジネスモデル +3~0

  • 競争優位性 +2~0

  • 強い財務指標 +2~0

  • 業績安定性 +2~0

これを「スペックPER評価」と呼びます。
各要素の着眼点は、以下の別記事で解説します。

以下は、4要素共通の評価原則です。

  • 3段階評価ではない。いわゆる「普通」や「△」といったレベルは0。

  • 「合格」「不合格」の2段階評価。

  • 合格であることを大前提に、+2か+1か判断する。凡庸・普通なら即0。

  • 記号で言えば「◎」「S」が+2、「◯」「合格」が+1。

  • +2は、自分の言葉で小学生に説明することができるレベル。

  • +2は、自分の中に強い確信があるレベル。

  • +2は、何度見直しても、すぐに+2と判断できるレベル。評点に迷ったら、迷った時点で+2ではない。

  • 上記まではいかないが、十分に合格レベルであるなら+1。

  • ビジネスモデルに限って、複数要素を持ち合わせていて傑出している場合、+3評価も認める。ただし例外的扱い。

②スペック評価が4点以下の場合、投資対象としない

5点あれば合格ではなく、5点も原則対象外レベルです。

スペック評価で8割を不合格にするイメージです。

「ピカピカ企業」ではないが割安だから買う。という危険な判断を、このルールで排除します。

逆に、スペック評価が+2+2+2+2といった満点企業は、この後の成長評価もチャート評価も強気で良いです。何とか買える展開にならないかワクワクして見守ります。

③次の2要素を評価して基準PERに加点する

  • 成長KPI +6~0

  • 成長期待 +6~0

これを「成長PER評価」と呼びます。率(%)で評価します。
具体的には、次のように「自分の予想CAGR%の半分」を評価点とします。

  • CAGR0%級の成長と評価 +0

  • CAGR2%級の成長と評価 +1

  • CAGR6%級の成長と評価 +3

  • CAGR10%級の成長と評価 +5

  • 営業利益などの特定のCAGRに固執しません。その会社の成長を計る上で、最も確信が得られるKPIを参考にします。会員数・市場規模の成長率・ARR・営業利益など、会社の特性や成長ステージによって異なります。

  • 「成長KPI」は、数値事実を重視した評価。
    過去売上CAGR実績値、今後の契約者数の計画値といった「数値」を基に、今後3年の成長スピードをCAGR%で評価します。数値はあくまで重視するだけで、過去実績や計画値を機械的に使用せず、特殊要因を勘案して、自分の見立ても入れるべきです。

  • 「成長期待」は、自分の期待を重視した評価。
    数値とは無関係に、今後どの程度成長しそうか評価します。成長期待評価は、成長KPI評価とは異なり、3年より長期の目線で成長CAGR%を予想して評価します。
    長期になるほどCAGRの維持は難しいですから成長期待評価は保守的な評価になるのがセオリーです。成長企業であろうと「いずれ4%成長(+2点)に収まるかな」といった感覚で評価します。ここでも強気の高評価を出せる企業だけが、高い基準PERが許されるということです。

  • 成長期待評価は、最もアバウトで恣意性がある評価項目となっています。なぜこんな評価項目を作るかというと、「成長への期待」こそが最も株価を変動させるトリガーだからです。

  • 具体例1。売上高10年CAGRが8%で、今後計画も成長継続とのことだが、自分としては今後数年で成熟企業になると考えている。成長KPI+3~4、成長期待+2。

  • 具体例2。過去実績はCAGR2%で、直近も利益率停滞が続いている。しかし自分としては、今後利益率が回復し売上も伸びる見立てを持っている。成長KPI+0~1、成長期待+3。

  • 長期目線であるほど、将来のEPSに結実する会員数や売上高と言った利益の手前の先行指標を重視してゆきます。「売上が伸びても利益が伸びなければ意味がない」というのは短期目線です。超長期に考えれば「売上が伸びなければ利益などありえない」です。どちらが正しいという話ではなく、付き合う期間や付き合う目当てによって重視するKPIが変わるという話です。

  • 成長率30%といった超成長企業になると、この算出ルールの範疇外で、個別評価が必要です。グロース株は、PERや適正株価といった概念よりも、決算とモメンタムを最重視すべきです。

④金利動向スコアを基準PERに加点する

金利動向スコアは、基本を「4」とします。

金利が上がるとスコアを下げて、金利が下がるとスコアを上げるのですが、これでは相場を読むことが全てになってしまうので、極力基本値を使います。

数ヶ月単位で動かすものではないです。また日本国債金利だけでなく、米国債金利も大いに参考にします。

世界的な金融緩和時代にはスコアを「6」まで上げていました。2022年の米国金融緩和終了に伴い「4」に戻しました。

株価は金利7割、業績3割で動きます。なので、理論上ここのスコアは常に上下していると考えるべきです。しかし、金利動向は今の数値だけでなく未来を折り込むなど複雑です。金利だけを見て想像で適正株価のスコアを上下させてゆくと、単なる相場当てに終始してしまいます。
なので、極力基本値を使うのですが、心の中では「今は金利によって基準PERに下方(上方)圧力があるぞ」という感覚を忘れるべきではないです。

⑤特殊要素があれば「その他PER評価」として基準PERを加減する。ただし、極力使用しない。

配当利回り4%以上、かつ配当性向や過去配当維持を見て「著しく配当力が高い」と判断した場合に限って、その他PER評価+1。

現在、このパターン以外なし。

5.基準PERの着地パターン

スペック評価満点で+2+2+2+2、成長評価で+1+1(CAGR2%級)の場合、
2+2+2+2+1+1+4=14となります。

ビジネスモデルに魅力があり、競争優位性があり、強い財務指標が出ていて、業績が安定していて、2%成長を続ける企業。
これが、基準PER14=利回り7%で販売されていれば、定価(適正株価)だと考えます。

成長率が高ければ基準PERは上がります。

  • 2%成長のピカピカ企業は、基準PER14(利回り7%)

  • 6%成長のピカピカ企業は、基準PER18(利回り5.5%)

  • 10%成長のピカピカ企業は、基準PER22(利回り4.5%)

スペック評価に0点が1個でもあれば、より高い利回りを求めます。

  • 2%成長のフツー企業は、基準PER12(利回り8%)

  • 6%成長のフツー企業は、基準PER16(利回り6%)

  • 10%成長のフツー企業は、基準PER20(利回り5%)

こちらの方が「社会一般で言われている妥当なPER」に近いのではないでしょうか。
私の基準PERは甘めです。ピカピカ企業だけに付けている基準PERなので甘いのです。いいものは定価が高い、という当たり前の話です。お金持ちの人は、セール品ではなく、良いものを定価で買って長く使います。全く同じ話です。
私の投資法では、基準PERが高い企業の方が、買うべき企業です。

このぐらいのPERでなぜ妥当なのか、についての解説詳細は以下記事。

6.確約EPSの算出

会社が今後確実に出せる「確約EPS」を見積もります。

最もシンプルで安心できるパターンは、会社予想EPSをそのまま確約EPSとして適用できる企業です。

競争優位性や業績安定性が高い企業は、予想EPSを、確実に出せます。
そして、今後も継続的に成長する企業は、予想EPSを、来年以降も確実に出せます。
「ピカピカ企業」であればあるほど、予想EPSが、そのまま「確約EPS」なのです。

会社予想EPSをそのまま使用できないパターンを列記します。

  • 特別利益・特別損失が乗っている場合は、経常利益*0.65でEPSを見積もります。(経常0.65パターン)

  • 各セグメントの予想利益増加額を積み上げして、これをEPSに換算して、この分だけ足して「確約EPS」を出す方が、想定シナリオ通りか否か判断しやすいケースもあります。(ボトムアップパターン)

  • 業績に一時的な下駄がある、もしくは単年の特殊なコストがある場合、過去の信頼できる決算期の実績EPSをベースに、そこからの成長度合いで算出します。(信頼年度からの掛け算パターン)

  • 業績予想未達を連発している企業や、予想EPSほどに期待していない企業は、前年度の実績EPSに自分の予想成長率を掛け算してEPSを算出します。(前年度からの掛け算パターン)

  • 業績に波があれば中の下のEPSを確約EPSとします。業績が良い年のEPSを絶対に使用しないこと。このルールによりシクリカル株の適正株価は相当落ちますが、それで合っています。(中の下ざっくりパターン)

  • のれんを減価償却しない企業の場合、のれんを20で割って営業利益から引いて、EPSを再計算します。のれんを減価償却しないEPSドーピング企業に極めて厳しいです。

  • 成長期待大でも極力”今期に”確約できるEPSを使用します。成長への期待は成長PER評価で適正株価に反映させます。

  • 「確約EPS」はガンガン四捨五入して、ざっくりと設定します。「確約EPS」は146か?149か?と毎回業績から計算して考えるぐらいなら、ざっくり150と設定して、他に時間をかけた方が良いです。「時間の無駄」という以上に、実際に結果に影響します。株式投資で勝っている人は、例外なく「正確に間違えるより、漠然と正しい」人です。

7.適正株価と割安率の算出

適正株価 = 基準PER*確約EPS

これで、「ピカピカ企業」の適正株価が算出できました。

たたし、「適正株価より安ければ買って、適正株価より高くなれば売り」なんて単純なトレードをしていては全く勝てません!

これは、あくまで「ピカピカ企業」に目安のマークを付けたに過ぎません。
ここから、買うための入念なセットアップを行います。

8.想定シナリオとリスクシナリオの設定

基準PERや確約EPSの前提条件について、「何が、どうなる想定か?」をリストアップします。これを「想定シナリオ」と呼びます。

例えば、「会員数が+6%成長を続ける」「**セグメントはトップシェアとなる」「営業利益は10%超え」などです。

想定シナリオは、次の本決算までには起きて、その後3年は継続することを書きます。もしくは、既に起きていることの維持を書きます。
「5年後に」とか「1年後悪化するがそれを機に…」といった想定シナリオはダメです。実際そうだとしても、マーケットが許してくれません。


(自分がそうなるとは思っていないが)起こりうる懸念事項や、発生しうる外部環境の悪化について、「どういう問題が起きうるか?」をリストアップします。これを「リスクシナリオ」と呼びます。

「プロジェクト炎上での突然の4半期赤字」「新事業は赤字垂れ流しとなる」「鶏肉相場の反転ならず」などです。

想定シナリオが基準PERや確約EPSの前提条件に着目するのに対して、リスクシナリオは、とにかく不安になることを、なんでも書き出してみます。

買った直後は、株価ベースでのリスクシナリオ設定もありです。
自分の想定外の株価(レンジ帯を下にブレイク)となることをリスクシナリオに定めて、この株価になったら「上がり始めたと判断した前提」が崩れたから撤退。というのもありです。

9.チャートのチェック

適正株価は、投資判断をシンプルにするための単なる「手段」です。
実際の株価が、すぐに適正株価に向かってゆく保証は何もありません。数年放置される可能性も十分にあります。

よって、適正株価に向かってチャートがアップトレンドとなって、株価が上がってから株を買うのがベストです。

今まさに株価が下がって安くなっている株を買うのは、大間違いです。

適正株価よりも株価が下がり続けているということは、マーケットが自分と違う意見を持っているということです。
自分だけが正しくて、マーケットが間違っていて、何故か自分が買った直後から、突然マーケットが間違いを認める……都合が良すぎませんか!?

自分だけが企業を正しく評価できていて賢い、とか思っていませんか?
全く逆です。自分に都合がいいこと言ってる愚か者にしか見えません。

もう一度言います。

実際の株価が、すぐに適正株価に向かってゆく保証は何もありません。よって、適正株価に向かってチャートがアップトレンドとなってから株を買うのがベストです。

つまり、株価のトレンドを読むテクニカル分析を使う必要があります。
テクニカルはオカルトではなく確率的に発生しやすい動きを体系化したものです。テクニカルだけで株をするつもりは全くありませんが、自分がファンダメンタルで選んだ銘柄を、確率的に少し優位なタイミングで買い続けることは、1回1回はコイン投げのようでも、100回繰り返せば利益をもたらします。

以下の一般的なテクニカル指標を使用し、アップトレンドだと判断します。それ以上の難しいことはしません。

  • 週足MACDオシレーターのマイナス圏での反転上昇。最も早いシグナルだが、自分の時間間隔に合っているのか、結果は最も良い。

  • 週足MACDラインのマイナス圏でのクロス。基本のシグナルだが、調べれば調べるほどトレンドフォローの王道。

  • 日足で大きな出来高での陽線。対して、出来高が少ない陰線。陽線複数だとさらに強いシグナル。大口の買い。小型株においてトレンド形成の筆頭トリガー。

  • 出来高減少、値幅減少、ボリンジャー縮小が続く。これ自体はシグナルではないが、トレンド発生前のエネルギー充填状態。この後、強いアップトレンドとなるので、上にブレイクしたら強いシグナル、買う。

  • 新高値ブレイク。

以下の状況があれば、基本的に買いません。

  • 短中長の移動平均線が、キレイに並んでしっかり下落中。MACDのシグナルがあったとしても、急激な下落のペースダウンででただけ。

  • 出来高減少、値幅減少、ボリンジャー縮小が続いた後に、下にブレイクしてから下落が止まった後。強く長いダウントレンドのサインなので下落再開がありうる。しかも、オーバーヘッドサプライが形成されているので、素直に適正株価に向かうことがなくなる。何も良いことがない。

  • 適正株価より安い価格帯に、大きな価格帯出来高。オーバーヘッドサプライが形成されており、その価格帯で跳ね返され下落再開など、素直に動かなくなる。

  • 異常な信用買残、異常な機関のカラ売り、直近での変更報告書による比率減少報告。ただし、短期トレードにならなければ重要ではない要素。結局は、この条件下でのトレンドが重要。この条件でダウントレンドであれば、まず避けるべき。ここは自分が分析してもアドバンテージを出せない要素なので、異常でなければ他を重視します。

唯一、ダウントレンドでも買っていいと感じるものは、以下です。

  • 全くチャートが読めない値動き展開が続いている場合。こうなると、読む意味がないので、シンプルに自分が納得できる価格まで下がったら買います。具体的には「適正株価より20%オフ」「満点企業なら10%オフ」など。この時にも、適正株価が役に立ちます。

10.買い判断

株価が適正株価以下で、チャートがアップトレンドとなった時に、買います。

逆に、それでも買ってはいけないパターンは次の通りです。

  • PER評価は高いが、それでも明確に言語化できる問題やテールリスクを感じている。なら買わない。その問題こそが、適正株価より安くなっている要因です。マーケットも同様に感じているから株価が下がって割安なのです。買う理由がありません。テールリスクは、たとえ発生しなくともマーケットが意識し続ける限り結局株価が上がりません。「自分の中で問題は解消されたと判断できた。マーケットも同意して株価が上がっている」こうなってから買います。

  • リスクシナリオが起きると思っている。なら買わない。ホールド中、何回も迷い続けることになる。ならば、その懸念が晴れたと判断できるまで買わない。

  • 迷って迷って結論が出ない。なら買わない。不確実な要素は利益の源泉ですが、その不確実な要素に対して見立てがないならば、単なるコイントスです。

  • 決算直前。なら買わない。決算を見て、マーケットの反応を見て、自分と同じ評価判断で買っている(株価が上がっている)ことを確認してから買います。直前に出し抜くと最も効率的に見えますが、それでうまくいくなら全員やってます。決算直前に跨ぐだけで10%以上も利益を得られたら、逆にマーケットは自分が知らないことを危惧していた、と思った方がよいです。リスクの内容も知らない高いオッズのギャンブルに賭けて、たまたま勝っただけです。決算直前に買うことで得られる利幅はたかが知れている。これなしでも利益が出せる投資スタイルであるべき。というのが今のところの結論です。

  • PER評価が低く、単に割安な凡庸企業。なら買わない。スペック評価が5点の場合、相当の確信がある場合に限って買うべきです。逆にスペック評価が満点なら、チャート評価も甘めに見て、できるだけ買います。

実務上は、適正株価まで株価が下がってきた場合、チャートもダウントレンドとなっているため、適正株価に落ちてきた株を即買うパターンは稀です。下落してきた株に、チャートの反転サインが見えてから、株価が上がってから、「適正株価より安い内に買う」のが典型的パターンとなります。

11.ポジションサイズと損切ルール

全投資資産を8分割(12.5%*8)します。
1銘柄に対しての投資金額は、全投資資産の1/8、12.5%とします。
最大8銘柄までの銘柄集中投資をします。

1枠 12.5%が、基本のポジションサイズです。
2枠 25%が、最大のポジションサイズです。
銘柄選定とエントリータイミングに集中するため、サイズは2パターンに限定します。

実務上、ピッタリ各銘柄12.5%買えるわけでもないし、購入後は株価の上下で構成比がずれてゆくので、厳密に12.5%でなくても良いです。

個別株の集中投資で利幅をとる投資スタイルの場合、サイズの微調整を突き詰めてもパフォーマンスに結実しません。
極めてシンプルなポジションパターンに制限する事で、どんなトレードでも、自然と最大損失率に上限がかかるようにしています。

以下、絶対のルールです。

  • -10%の損失発生時点で、一度売って損を確定させること。
    -10%の損だと思うから損切りが難しいと感じるのです。カジノに入って最初に-10%分の金額でチップを買ったと思えばよいのです。損切りは、チップがゼロになった状態をイメージします。損切りするかどうか選べる状況ではないでしょう、だってチップがないんですよ。最悪まだ続けるにしても、もう一度同じ金額でチップを買いなおすのが普通です。なのに株式投資では「俺の家を賭ける」みたいな無謀な行動、つまりナンピンして掛け金を増やしてしまう人が出ます。カジノのチップに例えると、いかに無謀な行動か分かると思います。

  • 2枠25%使って投資をする際は、-5%の損失発生時点で、一度売って損を確定させること。つまり、見立てが違って少しでも下がったら即撤退する厳しい条件付きか、1枠目に利益が乗っていて追加でエントリーするパターンのみ、2枠25%での投資が許される。

  • これにより、1回のトレードでの最大損失を「全投資資産の-1.25%」に制限する。4回連続失敗でも-5%で、即ゲームオーバーとはならない。

  • 3ヶ月間で3回、強制的な損切撤退が発生したら、1ヶ月トレード禁止。

  • 同じ銘柄で3回連続損切撤退したら、その銘柄へのエントリー禁止。テクニカルノックアウト。

-10%で損切りした時の結果を、トレード記録帳に先に書いてみて、買う前に結果をイメージするのも有効です。

-10%となる前に明確に失敗だと判断できるエントリーポイントで買うことができれば、損失が小さい形で終われることが明確なので、良いトレードです。
こうなると、「良い損切ができそうだから、ここで買う」という、哲学的なエントリーができるようになります。

12.適正株価の定期的見直し

決算や開示情報や外部環境を通じて、「想定シナリオ」の実現や「リスクシナリオ」の発生をチェックし、「基準PER」「確約EPS」の修正を検討します。

企業が成長することで「確約EPS」が増加します。当初の想定以上に成長したり企業評価が良くなれば「基準PER」の評価も見直します。このようにして、「ピカピカ企業」は経年とともに適正株価が上がってゆきます。

この結果、1年前に対して株価は大きく上昇して利益は乗っているが、適正株価も上げたので割高となっておらず、ホールドが続く銘柄も時々出てきます。これが、大成功パターンです。

13.売り判断

「適正株価以上になったら売り」ではありません。
上昇のモメンタムを使い切ってから売ります。

次の状況になってから、売ります。

  • 持ち株のポジションサイズが株価上昇により12.5%から+3~5%程度逸脱した場合、12.5%に戻るように一部を売り。自然と、分割利益確定となります。

  • 株価が適正株価を大きく上回った後で、上昇モメンタムが切れてダウントレンドに変わったと判断したら利確。PER評価が低い凡庸企業ほど厳しく、PER評価が高いピカピカ企業ほど甘く判断。
    ただし、株価がここまで上がった場合、まずは適正株価を上方修正できないか検討すべきです。株価が上がった時に上方修正を検討するのは都合良く聞こえますが、株価の上昇は、マーケットが評価を変えたことを示唆しています。マーケットの声を聴いて適正株価を修正するには良いタイミングです。上方修正できれば大幅な割高ではなくなるので、本来のルール内での運用を続けます。これが一番リターンが出る株です。残念ながら修正できなければ割高扱いのままとなり、ダウントレンドになり次第、お別れします。

以上が、成功パターンです。
以下は、数多く発生する失敗パターンです。

  • 決算等で、基準PERや確約EPSの前提条件である「想定シナリオ」が外れたと判断し、基準PERや確約EPSの下方修正となった場合、売り。株価が上がっていたとしても、自分の中で適正株価を下げる判断であれば売りです。

  • 決算で想定シナリオを大きく外して撤退判断なのであれば、決算翌日や開示翌日に寄付成行で売ります。変なホルダーが多いと感じていても翌日の終値で売ります。翌々日反発する時がありますが気にしません。
    これにより、致命的な長期ダウントレンドの最初期で撤退できているケースが多いです。

  • 明確に言語化できる問題が出た場合。リスクシナリオが起きると判断を変えた場合、売り。つまり、買わない条件に書いた事項が、買った後から発生した場合。

  • -10%の損失が発生した場合。自分が気づけていないだけで、マーケットが何かの問題を感じています。後から問題が顕在化することもあります。ベアマーケットが原因であれば、尚さら逆風の中で持ち続けるメリットがありません。売った途端上がるケースもありますが、ずっと続くケースも半分ぐらいあります。つまり、ここでの判断はリターンの源泉になりません。であれば最大損失率を守る絶対ルールを重視すべきです。きちんと一度損失を確定させてトレード記録に残します。これはパフォーマンスチェック上、極めて重要です。
    その上で、ノーポジの立場から基準PERの算出や買い判断を全てやり直して、それでも買いなら、買っていいです。ダウントレンドに歯向かうティルトなトレード判断ではなく、いつものトレード判断で再挑戦できます。

  • より強い「買い」判断の銘柄が出てきたから、一番利益が出ていない、スペック評価が悪い銘柄を売って差し替え。も結構あります。

  • 迷って迷って結論が出ないなら、利益があれば売らない、損していれば売る。迷った時の鉄則ルールを使います。

14.キャッシュポジション管理

ポジションサイズが決まっているため、キャッシュポジション(CP)管理は、シンプルに2段階です。

  • リスクオン:CP 0%、8銘柄保有、空き枠0

  • リスクオフ:CP 12.5%、7銘柄保有、空き枠1

キャッシュポジションの調整が非常にシンプルであることも、この投資法の強みです。

相場を読むことは不可能です。相場の先行きに悩んで、いろいろな情報を検証して…という時間は、中小型株の集中投資スタイルにとって、パフォーマンスに結実しない努力と判断しています。

とはいえ、感覚的に「相場が悪いな」と感じて、不安で落ち着かない時もあります。そういう時は、
「相場が怖いと思ったら、空き枠を1つ持っておく」というアクションだけを悩みます。これ以外の多様なアクションをとれないので、悩みから解放されます。怖くなったら1枠キャッシュにして終わりです。

そもそも、相場を読もうと読まなかろうと、ベアマーケットだと、自然と個別株を買う条件であるアップトレンドが発生しなくなるため、買える株がなくなり、損切が発生し、キャッシュポジションが増えます。

「株は、上がったことを確認して買うのがベスト」と書きましたが、単に1銘柄を買う時のメリットだけではないのです。
キャッシュポジション管理も、下げ相場での動きも、全て自然になります。

全く選べる銘柄がなくて2枠も空いてしまっているなら、CPの枠を埋めるために無理して銘柄を選ぶ必要はないです。相場の天井か、ダウントレンド真っ只中か。どちらも自分が利益を得られる場面ではないです。

15.100株コレクション

資産規模に余裕が出た現在は、全投資資産の25%分(2枠)を「100株コレクション枠」に使っています。メインの投資銘柄は最大6枠に減らしています。
全資産の25%分は、様々な「ピカピカ企業」を好きなものから100株ずつ買っています。

「このピカピカ企業、どうしてもコレクションに加えたい!」という個人的趣味で作ってるルールです。
今まで書いた買い条件を少し満たしてないけど、それでも欲しい株を、ほぼ適正株価で100株買ってコレクションしてます。

パフォーマンスにはマイナスだと思っているので、この枠を作るのはオススメしません。あっても1枠。ただし、経験銘柄数が増やせるので、スキルアップという点では悪くないです。

16.パフォーマンスのチェック

自分の「トレード記録」は、あらゆる投資本よりも、はるかに重要な教材です。

全員に有効なルールはありません。せっかちな人にとっては有益なルールだが保守的な人には無駄なルール、など、投資家のスタイルや性格によって改善すべき方向は違います。

トレード記録を見直して、自分が何を繰り返しているのかチェックしてください。自分にとって必要な改善をしてください。
自分のやっている事実から、目を逸らさないでください。

1回1回のトレードに対して、下記の「トレード記録」を残します。

  • 買付株価

  • 売却株価

  • 損益率(額)

  • 買付日

  • 売却日

(2年間のトレード記録数目安となる)直近52回のトレード記録に対して、次の指標を計算します。

  • リスクリワード

  • 勝率

  • 平均利益率(額)

  • 平均損失率(額)

「自分の投資スタイルの結果として大きな利益が出た」というトレードのみを「勝利」とカウントして計算します。

この投資法では、「利確で終わらせた」ことを勝利とカウントしません。

実際にやってみると、若干利益は乗っているが想定シナリオを外したため撤退、というケースが多いです。ここで出た利益は、失敗トレードの損失のマイナスとして、他の失敗トレードの損失と合算します。

自分の評価が甘すぎたと判断してすぐ撤退し、若干の損失で終わるケースもあります。

これらの「空振りトレード」を含めて「平均損失率」を計算します。
よって、「-10%の損失による損切撤退」という最悪のトレードがあっても、平均損失率は-10%より大幅に下がります。

また、勝率も「空振りトレード」が含まれるので、大幅に下がります。

これらの「空振りトレード」も含めて、次の指標をキープできているかを、パフォーマンスチェックします。

  • 最大損失率-10%以下

  • 平均損失率-2%以下

  • 名目平均損失率-5%以下 (利益が出たトレードを全て勝利とカウント)

  • 勝率20%以上

  • リスクリワード10以上

損切りすれば損失率は止まります。
何もかも自分の思い通りにならない投資の世界で、損失率だけが自分でコントロールできます。
これは希望の光です。これだけは自分で何とかなります。

損切りすると、勝率が下がります。でも下がって大丈夫です。

適正株価で購入して、想定シナリオ通りになって大きな利益が出る確率は、たかが2割です。

これだけ入念に準備してきたトレードは、8割が失敗に終わります。

この前提を知っていれば、気軽に損切りできるようになります、失敗なんてよくあることです。これは悲しいことではないです。プロ野球選手で、打率が4割で悲しむ選手は誰もいません。まず、このゲームの常識感覚を身に着けることが大切です。

決算がイメージと違って撤退、詳しく調べてみたら問題が分かって撤退、自信はあるのに-10%の損切ルールで強制撤退。8割はこんなものです。

それでも「ピカピカ企業」を「定価」で買い続けていれば、その中から時々、長く強く成長して株価も上がってゆく銘柄が出てきます。

勝率を20%まで下げたので、目安としてリスクリワードは10、1銘柄で20%以上の利益は欲しいところです。成功レベルの常識感覚を身に着けることが大切です。

しかし、利幅は相場次第です、自分でコントロールできません。なので、利幅は目標利益率に固執せず、流れに身を任せます。

1回1回のトレードを成功させようという意識でパフォーマンスを見ていると成功しません。
小さく抑えて損切撤退を繰り返していると、時々利益がグーンと乗る銘柄が出てきて、トータルでは儲かっている。そんな状況になっているか俯瞰的な数値でパフォーマンスチェックします。

17.その他

書ききれなかったポイントを追記します。
こういったポイントは、自分のトレード記録の反省から加えるべきです。自分に頻出している失敗を見て、一番合っている補正をします。
「こんなの重要か?」ということも書いていると思います。自分にとっては自然にできないので重要なのです。

  • トレード頻度は、週1回を目安とします。言い方を変えると、トレード1回分につき、1週間期間を空けます。銘柄入替の場合は売りと買いで2回分なので2週間空けます。1回トレードすると、他も気になってどんどん入れ替えたくなる悪癖があります。活発にトレードしてパフォーマンスが上がった時なんてないです。単に冷静さを失っているだけなので、ルールに残し続けます。

  • 迷いに迷って結論が出ないのであれば、その選択判断にアドバンテージがない証拠です。さらに!結論が僅差なので今後も毎回ずっと悩んで時間の負担もかかります。さらに!判断がひっくり返りやすくトレード回数を増やして短期トレーダーの養分となって確実なマイナスです。迷ってやるトレードは、デメリットが多過ぎます。
    ①買いで迷ったら買わない。
    ②利益があれば売らない、損していれば売る。
    ③銘柄選択で迷ったら、最後は好きな迷信を使え(byギュンター)。
    この「迷ったときルール」で一度決めて、週足4本待ってしっかりと賭けの結果を出してから再検討します。悩む時間とトレード回数を抑える方が大切です。

18.さいごに

全てをひっくり返すことを書きます。
ここに書いてあることは、本来言語化できない脳内の思考プロセスを、無理やりシンプルな型に押し込んでいるので、無理や矛盾も多数抱えています。

投資はアート、もっと的確な言葉だと「技芸」だと考えています。頭脳の深淵部までフル活用してやるものです。書いてあることをやる、なんてレベルとは全く違います。

頭脳の情報はただ記憶されるのではなく、流れからイメージが作られ、一つの世界として認識される。情報が欠けている場合は、それまでに得た記憶を元にイメージを補完する。新しい情報が得られた場合は、関連するイメージを全て再構築する。
とてつもなく高度な処理ですが、これを日常的に繰り返しているのが頭脳です。

書いてあることに機械的に従うのではなく、書いてあることを一つの知識体系として頭脳に構築し、その知識体系から導かれた「直観」で、判断する。
これが、株式投資です。

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