ピカピカ企業の第1要素、「魅力的なビジネスモデル」を評価する上でのポイント
私が独自に作った企業評価のポイントを解説します。1つ目として「魅力的なビジネスモデル」があるかを評価します。
実際には、ビジネスモデルよりも幅広に「その企業が儲かる根源的な根拠」を評価します。
小学生でも分かるぐらい簡単に説明できる根拠だと、高評価です。
誰もが納得するぐらい議論の余地がないと、高評価です。
高評価する様々なパターンを下記に挙げますが、これに限定する必要は全くありません。
1つに少しでも引っかかれば+2、という感覚ではありません。+2評価となるのは、複数に当てはまったり、強烈な要素があるイメージです。
1.ストックビジネス
会員費、月額費用、サブスク。(ダイオーズ、セルシス、エリアリンク)
ニッチなSaaS。市場が大きいSaaS分野はレッドオーシャンとなりがち。勝てる範囲・勝てるポジションで安定的に商売できていることが重要。(インテリジェントウェイブ、システムディ、エックスネット、ブロードリーフ)
キャノンモデル亜種。形を変えて様々なパターンで登場するので、柔軟な発想で見つける。(カーブス)
2.ネットワーク効果
ユーザが多いこと自体が、ユーザに価値をもたらす。強みが自己増強され続け、何よりユーザにもメリットがあるため、最も強いと考えるモデルです。
ユーザの依存性が高まってゆく。(セルシス、マイクロソフト)
機能が高まってゆく。(パーク24、Hamee)
集客力・認知度が高まってゆく。(プラットフォーマー全般、メルカリ、オリコン、プロトコーポレーション)
3.モート
他の人ができないことを商売にしていれば、それだけで「儲けの源泉」となり、その状況だけでビジネスとして超高評価です。こうなると、その次の競合優位性評価でも自然と+2となるケースがほとんどです。
寡占業界。「その企業が儲かる根源的な根拠」となっていることが多いため、競合優位性評価だけに留まらず評価します。1カテゴリー2プレイヤーに完全収束した業界が理想。3プレイヤーなら圧倒的トップが理想。ただし高利益であること。(セブンイレブン)
独占的にモノ・サービスを販売することが許されている。(テレビ局、JT)
歴史的流れで、今さらもう他社ができない。変化に乏しい日本でこそ見つけるべきパターン。(日本空港ビルデング、パーク24、JR東日本、日本高度動物医療、エコナック)
特許。ほぼ特許のようなものを探す。(テクノメディカ、INPEX)
他社が容易に保有できないスペシャルな要素がある。(アサンテ:JAと唯一提携。)
4.必需品・インフラなのに高利益
ここで言うインフラは、かなり幅広に、「特定の業界・社会・グループにとって実質の必需品や必需サービスを提供する企業」という意味です。
やたら高利益で美味しい必需ビジネスが時々あります。衰退していて他にプレイヤーがいなくなっていたり、将来に爆弾を抱えていたりするのだが、精査すれば良いものもあります。
本来、必需で安定した売上が見込めるので参入が多いはずですが、何らかの理由で高利益が保てている。つまり、自分には言語化できないが「モートの結果」だけが見えている状態です。
「なぜ牛肉が旨いか説明できないけど、これは牛肉だから確実に旨い」という状況は投資にもあります。よって、このパターンは評価します。
必需であることはビジネスとして圧倒的に強いです。
小学生でも分かる根拠の方が、難しい根拠よりも高評価です。
なぜなら、本来想定される前提から外れた状況に置かれても、その仕組みに誤作動が起きないロバスト性があるからです。
狭い世界での実質インフラ。選択肢が少ないので高利益になりがち(インテリジェントウェイブ、日本SHL、プラネット)
BtoBでの継続利用系。toCと違って客の財布がでかいので、客がその価格で納得していれば価格が高止まりするので、企業の利幅が残っています。(ARM、イーガーディアン、ナガイレーベン)
ブランド力のある食品・生活消費財。バフェットも好きだが、やはり強い。胃袋に消えるので消費が永遠に再発生する、ブランドが永続的に効果を発揮する。人間の本能的欲求に支えらえれている。大抵寡占気味。(キッコーマン、ミツカン)
法律や制度により義務付けられた事項を提供している。強引に作られた必需は、価格の収斂が進んでいないので、企業の利幅が残っています。例:エレベーターの定期点検、メンタルヘルスチェックの年1回義務化。(JES、ARM)
中毒性や人間の本能に基づいた需要。ギャンブル、アルコール、たばこ、キャバクラ、合法大麻…といったものです。本来、必需ではないのに、本能を刺激し人間を狂わせて無理やり必需になっているもの。原価が安くても気にされず価格を釣り上げやすい。そのまま該当する企業は少ないですが「実質的にそれに近いもの」を探すのがコツです。
5.大河の流れ
これからの日本で、ゆっくりと確実な「大河の流れ」を探します。この流れに乗っているビジネスは、時間さえ立てば勝手に成長し儲かってしまいます。まさに「その企業が儲かる根源的な根拠」となります。
零細淘汰パターン。市場は停滞気味だが、ゾンビ中小零細の淘汰が進むだけで、自然とトップ企業の成長が続くパターン。衰退する日本ならではのパターンで、地味に魅力が高いです。(やまみ、ピックルス)
緩やかな絶滅パターン。古くて巨大なビジネスが緩やかに絶滅している時に、それに代わる側のビジネス。新聞⇒アフィリエイトなど。オワコンを見つけたら、その裏でゆっくりと何が起きているかを着目します。(TOW、田中建設工業)
相手が雑魚過ぎパターン。上記2つを掛け合わせたようなパターン。この会社が勝って当然という環境がずっと続いている状況。自分がすごくて勝つより、相手が弱くて勝つ方が、ハードルは低いです。相手が弱い業界を探します。(JES、QBネット、ピックルス)
日本の課題解決パターン。日本ってダメなところばっかりですよね。ってぐちって終わるのではなく、それを解決するサービスを見つければ、ゆっくりと置き換わる未来が待っている。解雇規制⇒だから派遣業があんなに隆盛した。世代間格差⇒相続ビジネス。無駄な仕事ばっかり⇒BPO。日本のダメな要素をひっくり返すと全部伸びてるビジネスになってる。ただし、これだけで+2評価することはない。この流れを持ちつつ魅力的なビジネスにまで昇華しているレベルを求める。(三協フロンテア、アンドドゥ)
環境ビジネス。フワフワした理想論ではなく、本音で一番必要なビジネスに、絶対に高利益なビジネスに限ります。(アサヒHD、大紀アルミニウム)
(医薬・介護等既存以外の)健康・命に寄与するビジネス。あらゆるモノが手に入る中で、相対的に今後も手に入らないのが「健康・命」。(日本高度動物医療、カーブス、ドーン)
6.その他
これだけで+2とは言いませんが、企業がこんなスペシャルなアビリティーを持っていれば、評価は上げる方向です。
ほぼ世界唯一無二のブランド。単にブランドだけでは評価しない。ただし、世界で唯一レベルであれば、ビジネスモデルではないが「その企業の魅力の源泉」として評価せざるを得ない。ディズニー級のもの。また、完全にドメスティック前提であれば日本限定での唯一性でもあり。本来競合優位性評価で加点する要素なので、ビジモデ評価でも加点するとすれば相当のレベルを求める。(任天堂、うなぎパイ)
グローバルニッチトップ、かつ儲かっている。日本は衰退国家です。シュリンクし続ける小国にとって、海外諸国から大金を貰える企業は、最も価値が上がります。我が国の衰退を嘆いてないで、その流れの中で一番価値が上がるビジネスに投資すべきです。(セルシス、ナカニシ、竹内製作所)
やりたくないことを代わりにやってくれるビジネス。これこそが真にカネを手に入れる権利を持つ会社である。個人的に絶対の信頼を置くビジネス。感謝しかない。(アサンテ:あなたは真夏に白アリがうじゃうじゃいる床下に入れますか?)
大金を平気で払える人を相手にしたビジネス。一個上と真逆のことを書くが、そのサービスに真に価値があるかではなく、相手がカネを払えるか否かで儲けが決まる。蛇口をひねって水が出る価値は月額5000円。金持ち老人向けの凡庸な相続対策セミナーは1回3万円。儲かるビジネスを探しているなら絶対に忘れてはいけない原則。(ナガイレーベン、プロシップ、日本SHL、IRジャパン)
社長が50代以下。これだけで評価を上げることはありませんが確実に追加点です。判断能力が低下し社会に疎い80歳の超高齢者が社長であるメリットは何一つありませんが結構な企業が放置しています。逆に言えば、「若い目線で意思決定できている会社」というだけで、他の大多数の企業にはない優位な特性を持っているのです。
評価する際のポイント
モデル企業を沢山知っていれば、新しい企業を評価する時に、モデル企業名を使ってすぐにイメージを掴むことができる。(例:これはBtoBで売上が安定して入るプロシップ系だな。しかしプロシップと違ってITじゃないからな。でも伸びしろはプロシップよりあるぞ…)
素晴らしい価値を提供している=ビジネスモデル評価+2ではありません。「で、それ儲かってるの?」と常に詰問してください!!
素晴らしい価値を提供しているが、消費者が得なだけ(ブルボン)。素晴らしい価値を提供しているが、従業員のサラリーに消えてる(古い大企業)。こういうものが本当に沢山あります。「高い技術力」といった要素でピカピカ企業だと判断するのは間違い。企業としては薄型液晶テレビより白黒テレビを売っていた時代が一番儲かっていたりする。技術や研究によって一番恩恵を受けるのは「消費者」であり「企業」が恩恵を受け続けるパターンは非常にまれ。
投資の常識感覚に慣れるため、「高い技術力」を持った企業は、高い宇宙服を買って、大人数で底なし沼を泳ぐレースをしている姿をイメージするとよい。対して「ピカピカ企業」は、Tシャツで小学生とかけっこしている姿をイメージをするとよいです。業界トップであるだけなら、ビジネスモデル評価では参考としない、それは競合優位性評価で+2する。競合優位性があってトップ企業だがビジネスモデルは0点というのが、それはもう沢山あります。
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