ピカピカ企業の第3要素、「強い財務指標」を評価する上でのポイント
私が独自に作った企業評価のポイントを解説します。3つ目として「強い財務指標」があるかを評価します。
これは減点法で見ます。次の指標のチェックを通じて、受け入れがたいところがあれば-1。複数出た、他にも全般として凡庸なら0です。
最も重視する指標
5年平均営業利益率。10%以上。利益率は業種によるわけですが、そういう薄利な業種をできる限り切るべきなので、業種を考慮して評価を甘くするのは本末転倒です。また、良くなっているという変化も重要です。過去実績にとらわれ過ぎるのは危険です。
パーヘッド営業利益。4百万以上。これこそ正に業種によるので、営業利益率よりは業種や企業規模を考慮して評価します。しかし、人を沢山必要とする業種はできる限り切るべきです。企業が抱える設備の中で、最も劣化しやすく、交換できず、安定して動作せず、時代が進むごとに維持コストが上がる。そんな最悪な設備が「人」です。もし「当社の人財は武器であり資産だ」と言うならば、パーヘッドが素晴らしい数字になっているはずです。歴史ある企業ほど劣化した設備に固定費を出し続けることになります。さらに!この設備への固定費支払期間は国のルールで長くされるリスクがあります。パーヘッドは、解雇規制がある日本において、どれだけ強調しても仕切れないほど重要な指標です。
社員数。500人以下が理想。日系企業において一人一人が能力をフルに発揮するのは500人以下の小規模組織です。それ以上の組織は無駄な人員が増えてきます。とはいえ企業規模によって不可避的に増加するものなので、これだけで評価点を下げることはないです。IRBANKで、平均年収推移をチェックすれば、人数以上のニュアンス情報が得られます。
配当利回り。成熟企業なら最低限2%以上。成長企業は気にしない。成熟したピカピカ企業の定価は益利回り7%が適正株価。配当性向30%なら配当利回り2.1%。ピカピカ企業ならキャッシュがじゃぶじゃぶ貯まるはずなので配当性向40%でも全く問題なく、40%なら配当利回り2.8%。このイメージ感であれば合格です。3%以上だと、成熟企業として◎です。
配当性向。ピカピカ企業であれば、50%でも全然問題ない、高い方が良い。意味もなく20%前後の企業は評価を下げる。「配当性向が高いと危険」というのは凡庸な企業の話です。潤沢な営業キャッシュフローで、ほっとくとBSが現金で埋まってしまう。そもそも利益余剰金を積み上げなくても成長できる。これがピカピカ企業です。配当性向が高いと心配になる企業を、そもそも選ぶべきではないです。
過去配当実績。連続増配記録は求めないが、前年維持連続期間10年を求める。減配は理由をチェックする。複数回の減配は評価を下げる。最終的な株主還元姿勢の本音が現れるので重視します。株主を軽視する企業は、そういうことをしてきたボードが次の社長を選び、ずっと軽視しし続けます。株主を軽視している企業の株は買われません。さらに配当も少なくなるリスクがあるのです。ろくなことがないです。IRBANKで、自社株買い、DOE、配当性向、総還元性向、記念配の推移が見れるので、ニュアンスをチェックします。IRBANKは配当情報が強い。
必ずチェックしておく指標
ROE。営業利益率やBS・CFを見た上で、ROEを見て、乖離や違和感がないかチェック。ROEは特に変動要因を見ます。大半は、営業利益率の変化が要因であり、結局は営業利益率が最重要だと再認識する時が多いです。
次によくあるのが、企業が成長してBSに現金系の資産が貯まったからROE微減傾向というもの。丁寧で着実な経営していれば、自然そうなりがちで神経質に評価を下げることではないです。
その他の要因でROEが上下している場合、特益・特損や財務レバレッジなどを詳細調査します。受け入れがたい問題があれば評価を下げます。
ROEは「売上高純利益率」「総資産回転率」「財務レバレッジ」の総合的な結果ですが、逆に何が起きているかROEだけでは分からないと思っています。ROEの数値だけで企業を評価しきるのは危険、という考えです。キャッシュフロー。じゃぶじゃぶ現金が湧き出てるタイプが◎。あとは異常値チェックが中心、過去に異常値があれば過去決算を開いて意味をチェックし、受け入れがたい問題があれば評価を下げます。営業キャッシュフローが純利益を超えている事もチェックするが、超えていなくても事情があれば大問題ではないです。
設備投資や減価償却費の増減を見るが、これはスペック評価には反映させず、想定シナリオ検討や成長PER評価に役立てる。IRBANKで、営業キャッシュフローマージンを見ることができます。10%以上を恒常的に出せていると◎。BS。多額ののれんがあり未償却であれば、どういう事情であれ-1点、場合によっては即0点。あとは、一通りおかしいものが書かれていないかチェックするのみ。
「ピカピカ企業のBSは退屈」というのが持論です。資産の7割が現金で後は本社ビルの土地、流動比率150%、みたいなBSが多いです。そもそも「BSに記載されない資産こそ、最も重要な利益の源泉となる資産」なのでBSから優位性を見出すことが難しく、逆にBSからリスクを読み取ろうとしても、ピカピカ企業の場合、現金で即日負債全額を払えるレベルが大半です。ネットD/Eレシオ。異常値であれば詳細確認。ただし、異常値でなければ特に何もなし。ピカピカ企業で、ここで問題が出たケースはほぼゼロ。
PBR。一応は見ます。評価を変えたケースはゼロ。利益の源泉となる強い資産(ブランド、業界での影響力、顧客ストック)はBSに記載されない。よって、簿価よりも時価総額が高くて当然。PBRが高い方が、利益の源泉となる資産の評価が高い証拠です。
過去PER・PBR推移(レンジ)。スペック評価に直接影響はしません。が、ピーク時に起きていたこと、上昇時に起きていたことを決算書から確認すると、結果的にスペック評価やリスクシナリオ設定や売買判断にヒントを得られます。
財務指標のチェック時に使うツール
上記以外の指標を無視するというわけではありません。スペック評価に反映できるヒント・キーワードを探すイメージで、他の指標も全体的にチェックします。
次のツールが最強です。全部無料、すごすぎますね。
銘柄スカウター。これに出会ってから投資環境が劇的に良くなりました。見たい数字が集約されている財務指標チェックでの最強ツール。ヒマならいつも眺めて、銘柄を探します。
IRBANK。銘柄スカウターで一部だけ網羅できない事項があるので、ピンポイントでチェック。網羅性は銘柄スカウターより上。
有報、決算短信、決算説明資料。本当にすごい投資家は、こればっかり見てます。買う時に一通り読むのはもちろん、銘柄スカウターで気になった企業があれば、有報や決算説明資料をチェックします。
評価する際のポイント
財務指標評価で危険なのは、過去を評価しがちになることです。不合格な数値に対して、自分の中で説明できて受け入れられるならば、過去数値を絶対視してドライに切る必要はないです。今後将来に出てくる数値を意識して評価します。
全員に周知されている財務指標を根拠に投資することは危険です。財務指標が良いピカピカ企業にもかかわらず、妙に割安な企業は、自分が見えていないリスクがあると考えるべきです。今、良い数値が見えていて、これから悪化する展開は、最悪中の最悪です。それよりは、「過去は営業利益率8%だったけど、今後は10%を超えてゆきそうだ」という変化の方がずっと良いです。
このように、自分の未来に対する主観的見立てで評価した箇所があった方が安心です。評価ポイントの決定においては、「不確実だけど今後は」という言葉を、遠慮なく使うべきです。その不確実性こそ、リターンの源泉だからです。ROEや営業利益率で怖いのは、高いことを評価するのですが、高すぎるとその後下がってゆくパターンもあるそのあと
マーケットが何かを嫌っているので割安になっています。「マーケットが嫌っている部分はどこだろう?」と想像しながら財務指標をみると良いです。
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