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STROKE OF FATE #7【ニンジャ二次創作Web再録】

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ノボリドラゴン・ヤクザクランのヤクザ事務所に、黒いヤクザリムジンが停まった。中から現れたのは、白スーツの偉丈夫。「ドーモ。アオショーグン・クランの顧問弁護士、フマトニです」男は120度の角度でオジギし、派手な緑色のスーツを着た男を連れていた。

応接室へ通されたフマトニは、再び、田畑に実るコメじみて頭を垂れた。「このたびチクゼン・コバカワ氏が『不幸な事故』で危篤状態になったことを受けて、正式にテウチに参りました」にこやかだが、どこか油断ならぬアトモスフィアの弁護士はそう言いながら、90度姿勢で名刺を差し出す。

その名刺を手で弄ぶのは、ノボリドラゴン・ヤクザクランのオヤブン、モトヤス・テイクチ。中肉中背、よく日焼けした野心的な顔つき。醸し出すアトモスフィアで一回りほど大きく見える。

「成る程、手打ちですか。しかし、こちらは既に息子のキンゴ=サンから、そうした交渉を受け、ストリートの利権を全て譲渡する形で、話は付いてるんですよねェ」サケで焼けた声はサディスティックな自信に満ちている。「いやいや! そこをどうか、お話だけでも」

慇懃に頭を下げ続けるフマトニの前で名刺を破り捨て、頭の上でばらまいた。「お引き取りください」フマトニは、にこやかなオジギ姿勢のまま、隣に座る緑スーツの男と視線を交わした。緑スーツの男はゆっくりと頷くと「イヤーッ!」応接チャブを殴りつけた!

ナムサン! いかなトリックか、男の殴りつけた応接チャブが突如超自然の炎に包まれた!そして、炎を纏い断ち割れたチャブを、オジギ姿勢からバネ仕掛けめいて頭を上げたフマトニが蹴りつける!「イヤーッ!」

しかし、このアンブッシュはモトヤスへの焼き鏝とはならなかった。「イヤーッ!」CRAAAASH! モトヤス・テイクチは鋭い左ストレートでチャブを更に割り砕いたのだ! そして、モトヤスがチャブを割った先にいたのは、先程の慇懃な白スーツの弁護士ではない。そこには、派手な柄シャツ姿でカラテを構えたリーゼントの男!

「ドーモ! ソニックブームです! テウチ(暗殺の意)に来たって言っただろうが、エェッ?!」フマトニの隣にいた緑スーツの男も、痩躯をダークオレンジのニンジャ装束に包んでいる!「ドーモ! アーソンです!」

モトヤスはヤクザサングラスを投げ捨てる。「俺のテウチたぁ、良い度胸じゃねぇか! アァ?!」ぎらついた眼光が露わになる!「ドーモ! リープドカープです! ナマルベッケロアー!」「スッゾオラー! アッコラー!」ソニックブームも威嚇! ヤクザのイクサは始まる前のキアイも重視されるのだ。「アーソン=サン!」「承知!」

アーソンは事前の打ち合わせ通り、エレベーター扉をカトン・パンチで破壊すると、非常階段を下っていった。彼の仕事は、このイクサをソニックブームとモトヤスのタイマン(一対一の決闘)とすることと、邪魔立てするヤクザ共の一掃だ。

彼はあくまでバックアップ。このイクサは、自分が片を付ける。ソニックブームが仕掛ける!「スッゾオラー! イヤーッ!」ソニックカラテ前蹴り!「シュッ!」リープドカープは鋭く息を吐き、ソニックブームの側面へ回り込むことで先制ソニックカラテを回避した。ボックスカラテの動きだ!

窓ガラスや高価な観賞用ヨロイが破砕されるのを横目に、リープドカープがソニックブームの後頭部に痛烈な右フックを見舞う。「イヤーッ!」「イヤーッ!」致命打を屈んで躱したソニックブームは地を這うような回し蹴りで足を刈る。「イヤーッ!」

それをバックステップ回避するリープドカープは、背中を丸めて半身に構え、リズミカルなステップを踏む。カラテを構えたソニックブームに対し、上半身をやや沈めて体へ左ジャブのモーションをかける。一瞬の状況判断でソニックブームがそれに反応する。

フェイントだ。リープドカープの上半身が伸び上がり、本命の左ジャブがソニックブームの顔面を襲う。「イヤーッ!」「グワーッ!」ソニックブームの上体が傾ぐ。「おうどうした! そんなもんか! エェッ?!」リープドカープの挑発!

ソニックブームはカラテキックで少しでも距離を取ろうとする。ソニックカラテは至近距離で使うに向かぬ為だ。しかし、リープドカープの執拗なインファイトスタイルが、ソニックブームのカラテ自由を奪う。ソニックブームの蹴り足を片腕で抱え込み、リープドカープは凶暴な笑みを見せた。

「テメェのカラテ、死によったなァ! イヤーッ!」鋭いジャブ!「グワーッ!」「そのまま寝とれやオラァ! イヤァーッ!」更に頭突き!「グワーッ!」抱えていた足を放し、リープドカープが懐に潜り込む。「イイイヤアアアアーッ!」タキノボリ・アッパー!「グワーッ!」ソニックブーム縦回転!

背中から飾りタイルの床に叩き付けられる。おぼつかぬウインドミルでマウントを取られる事だけは避け、ネックスプリングで起き上がった。殴られて狭まり揺れる視界のなか、ソニックブームは、クロスカタナのエンブレムを刻んだグローブでカラテを構えた。

ソウカイ・シンジケートは強く、無慈悲。その体現者として立ち続ける事が、ソニックブームの選んだ道だ。組織の暴力たる者として生きるならば、再びこうしたニンジャと必ずぶつかる。ここで倒れるぐらいでは、クロスカタナを背負って立つことは出来ぬ!

「ザッ……ケンナコラー……」ソニックブームは頭を振りキアイを入れる。「ザッケンナコラー! チェラッコラー! スッゾスッゾオラー!」リープドカープのフットワークには余裕さえ見える。「面白ェ。まだやるかい! イーヤヤヤヤヤーッ!」そして上半身を左右に振りながら連続パンチ!

ソニックブームも肘で応戦するが、ウィービング動作から生まれるタメが更に重いパンチとなる! この攻防一体のラッシュこそ、ボックスカラテの大技、デンプシーロール!「グワーッ! グワーッ!」殴りながら、少しずつリープドカープが前進する。

壁際に追い詰めKOを狙うつもりだ!「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」じりじりと後がなくなるソニックブーム。その時、バックドラフトめいて非常階段の金属ドアが吹き飛んだ。「ドーモ。リープドカープ=サンに客ですよ」

ドアの後ろ、炎の中から現れたのはアーソン。片手に若いヤクザをぶら下げていた。リープドカープはちらりとそちらを一瞥するが、ソニックブームを追い詰める手は止めぬ。アーソンは肩をすくめ、ヤクザを片足で小突いた。「オ、オヤブン! キンゴが、キンゴが……」「続けて」

アーソンは再び男を小突く。「セーフハウスをニンジャが……カタナを持った、シルバーのニンジャが……! キンゴが殺されました!」「ナンオラー!」リープドカープがソニックブームを殴る拳にブレが生じた。

随分遠くに感じるそのわめき声で、ソニックブームは何が起きたかを理解した。シルバーカラスは立ち去り際に、ソニックブームだけに聞こえる声で言ったのだ。「ケジメをつけてくる」と。ソニックブームはメンポの奥で歯をむき出して笑った。

ソニックブームはサンドバッグじみて殴られながらも、機会を窺っていた。自分がシルバーカラスにやられた様に、勝つための機会を。ボックスカラテには使い手の癖が、リズムの形で現れる。そのリズムが止まる瞬間、そこに勝機がある!「イヤーッ!」キアイを振り絞っての左のカラテフック!「グワーッ!」手応えあり! カウンターが決まった!

リープドカープが描く無限の軌道が止まる。ソニックブームは右の拳を大きく引き、カラテを注ぎ込む。そこから繰り出すは、捨て身のゼロ距離ソニックカラテアッパー!「イイイ……ヤアァァァーッ!!」 「グワーッ!」リープドカープは衝撃波を至近距離で食らい、ヤクザ事務所の天井を突き破った!

そこに、更にカイシャクのソニックカラテハイキック!「イヤーッ!」リープドカープはその名の通り高く跳ね上がり、爆発四散!「サヨンナラー!」
「グワーッ!」当然ソニックブーム自身も無事ではいられぬ。ワイヤーアクションめいてその場からはじき飛ばされ、「昇り龍」の掛け軸が掛かった壁へしたたか全身を打ち付けた。それでもソニックブームは倒れない。キアイで踏みとどまる。

掴んだ掛け軸がちぎれ落ちる。手の中の切れ端を投げ捨て、ソニックカラテの反動で自らの血に塗れた右手を掲げる。そして、腹の底から突き上げる衝動にまかせ、勝ち鬨の咆哮を上げた。

ストローク・オブ・フェイト ♯7終わり ♯8-aへ続く