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STROKE OF FATE #6【ニンジャ二次創作Web再録】

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先に動いたのはシルバーカラスだ。カタナに手をかけたまま直線軌道でソニックブームを狙う。性急な、と、ソニックブームは嘲笑を浮かべる。小さく肩を回し、ソニック・カラテで迎撃。「イヤーッ!」「イヤーッ!」シルバーカラスは両脚で踏み切り跳躍して衝撃波圏外へ脱しようとするが、そこを二撃目のソニック・カラテが襲う。「グワーッ!」

衝撃波を真っ向から食らったシルバーカラスだが、キリモミ回転して地面に叩き付けられる直前に猫めいて姿勢制御、落下ダメージを軽減させる。そこから、身を隠すために大きく横へ飛び、オーガニック松の古木へ身を隠した。だが。「甘ェんだよ! イヤーッ!」

三たびのソニック・カラテが、オーガニック松をへし折った! ナムサン! なんたる環境および貴重なオーガニック樹木に対する無慈悲な一撃か! シルバーカラスは倒れかかる松を踏み台に再度跳躍! そのまま逃げおおせるつもりだ!

「イヤーッ!」ソニックブームはその回避動作を予測済みだ。「グワーッ!」シルバーカラスは再び猫めいて着地する。ソニックブームはそれに合わせて再度ソニックカラテを見舞おうとしたが、シルバーカラスが着地直前に放った小型ナイフがそれを阻む。

スリケンをサイドステップで躱し、二人は再度間合いの開いた状態で向き合う。「テメェは! 何がしてぇんだ! エェッ?!」ソニックブームが吼える。シルバーカラスは答えぬまま、再び抜刀姿勢だ。ソニックブームは直接対峙した相手の力量を注意深く計る。

ニンジャ身体能力の高さに物を言わせた、大ぶりで無茶な動きが多い。サンスイを模した庭に、シルバーカラスが身を隠せる所はもはや数カ所のみ。距離を取るほど向こうは不利。みすみす逃がすつもりもない。足を止めて、次に向こうが仕掛けた時、こちらも同時に動く。

睨み合いはどれほどに及んだか。シルバーカラスは何かを観念したように大きく息を吐き、抜刀姿勢を変えた。今までは上体を捻り左腰の柄へ手をかけていたものが、体の中心に柄が来るようカタナを左手で支える構えだ。それをトリガーに、ソニックブームはソニックカラテパンチを放つ!

「ソマシャッテオラー!」ソニックカラテ衝撃波は、シルバーカラスを直接叩かず、彼の傍らにある石灯籠を掠め、砕いた。これも計算してのこと。首からへし折れたように砕けた灯籠の上半分が、シルバーカラスを砲弾めいて襲う!

それに対しシルバーカラスは、ニンジャ動体視力を持ってしても捉えがたい抜刀! ノールックで石灯籠を両断! ワザマエ! 素早くしかし油断無く納刀し、シルバーカラスは上体を落とすと、水溜まりを跳ね上げ、飛ぶようにソニックブームを目指す。

その動きも先程までと違う。フルメンポの双眸は油断なくソニックブームを注視し、カラテ予備動作が見えるや足を止め、鋭いバックフリップや大きな横跳びで距離を取る。欲深い踏み込みもなければ、無謀な逃走もない。

ソニックブームは灯籠越しのシルバーカラスを睨む。((どうなってやがる……あいつは何を見てる?!))「イヤーッ!」ソニックカラテ連続パンチで、シルバーカラスの隠れる灯籠と、次に遮蔽となりうる岩を潰す。

しかし、シルバーカラスはカラテ衝撃波が辿り着くより前に躍り出ていた。くるくると旋回し、フジサンを模した岩に身を隠す。ソニックブームは雨で額に張り付く前髪を乱暴にかき上げ、そこで気づいた。((……雨か!))

先刻から降り続く雨が、カラテ衝撃波の軌跡をシルバーカラスに視認させているのだ。むろん、見えるからといって易々と避けられる代物ではない。シルバーカラスが見ているのは、この戦場そのものだ。場所、戦況、相手の動き、それらを読み解き、最適解をはじき出している。

ならば。「スッゾオラー! イヤーッ!」ヤクザスラングと共に、ソニックブームはソニックカラテをカワラ割りめいて斜め前方に打ち下ろした。雨粒さえ吹き上げるカラテ衝撃波が、文字通り大波めいて伝う。庭に敷かれた丸石が波紋じみて浮き上がり、衝撃波そのものと共に、シルバーカラスの隠れた岩を襲った。

これなら避けられまい。シルバーカラスは岩陰を飛び出すが、割れた岩塊や水を模した丸石の散弾にその身を晒す。「グワーッ!」吹き飛ばされたシルバーカラスは前傾姿勢で片手を砂利に突き、それ以上の後退を止めた。そこへトドメとばかり、追撃のソニックカラテ後ろ回し蹴り!「イヤーッ!」

広範囲の衝撃波を、シルバーカラスは更に体を前に倒し、「イヤーッ!」爆発的な加速でかいくぐる! ソニックブームの追撃より早く、早く! そして、イアイの間合いがソニックブームを捉えた!「イヤーッ!」

シルバーカラスはカタナの柄頭でソニックブームを打った。運動エネルギーを保持したままの打撃で、ソニックブームは大きく後ろへ吹っ飛ぶ。それはソニックブームの咄嗟の回避行動でもあったが、シルバーカラスはそれを許さない。更に踏み込んで、相手の後ろ襟を掴む。

再度カタナの柄頭で、今度はソニックブームの喉を突いた。「イヤーッ!」「グワーッ!」後ろ襟を手放すと、ソニックブームは両手を突いて咳き込む。シルバーカラスはソニックブームを少しの間見下していたが、素早くバックステップし、更に跳躍。ヤクザ別荘から姿を消してしまった。

雨の中、誰もソニックブームに声を掛けられなかった。様々な困惑と不安を乗せた視線だけが刺さる。ソニックブームはそんな視線に頓着せず、乱れたリーゼントもそのままに、濡れ縁にどっかと腰を下ろした。潰れたリーゼントをかきあげ、しけたモノホシ・タバコに火を点ける。

ややあって、ソニックブームは低く呟いた。「……ケジメか」モノホシ・タバコを踏み消し、事の成り行きに釘付けとなっていたヤクザらを振り返る。「テメェら、今夜何があってもオヤブン死なせるんじゃねぇぞ」その静かな迫力に、レッサーヤクザの何人かが失禁した。

プランに変更なし。ケジメをつける。否、ケジメを付けさせる。その為には、やはりもう一人バックアップが欲しい。彼はIRC端末で、同じソウカイ・シンジケート所属のニンジャを呼び出した。「モシモシ、ソニックブームだ。悪いが今すぐ、あんたの力を借りたい。イクサに火をつけて欲しい。……見返り?」

ソニックブームは一呼吸おき、口元を歪める。「ジャノミチ・ストリートだ」


ストローク・オブ・フェイト ♯6終わり ♯7へ続く