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4.8章 お風呂に入ろう!

「ちょっと!どういうことなのこれは」
ニトロは困惑していた。
確かに、その大きさは服の上からでもわかっていた。
しかし、余りにもバランスが良すぎたのだ。

「何なのよ!これは」

「どうしましたか?」
何気ない事の様にソラナが答える。
同時に湯舟に浮かぶ2つの球体が振るえる。

それは、無限の大きさを誇る円形、まさにπという記号を持って示されるものであった。

「その胸のことよ!形、良すぎでしょ!?しかも、おっきいし!」
「その上、本人童顔とか。もう、あるストライクゾーン目掛けて豪速球を投げているとしか思えないわ」

「ソラナちゃん」

「なに?」

「揉ませなさい」
唐突に言い放つニトロ
その顔は真顔だった。

「はぁ!?」

「そんな柔らかそうな、そう、全体のバランスが整っているものを揉まないという選択肢
はないわ」

「あなたは、まともだと思っていたのに」
「クレセントと同じなのね」

「違うわ!」

「私も、そうよ。そう思っていたわ」
「ただ、その上で言っているのよ」
「これは、それだけの価値があると」

「だから、揉ませなさい!」
そういって飛び掛かったニトロを打ち落とす『ニトロ』

「人の姿して、何してんのよ!」
見事なスマッシュがニトロに決まる。

「ふべぇ!」
風呂場の床に叩きつけられると同時にクレセントの姿へと変わる『ニトロ』

「えっ、クレセント!?」

「もう、呼び捨てなのね」
「どうせなら、お姉さまと呼ばれたかったわ」
虫の息でそう答えるクレセント
もはや、瀕死の重症だ。
それにも関わらず、ソラナへと手を伸ばしている執念は、見事としか言いようがなかった。

「クレセントさんの特技よ」

「質量を偽った幻を生み出すことができるの」
ニトロがそういうと同時にセンチネルが風呂場に入ってきた。

「大丈夫!?ソラナちゃん」
バックドロップを決めたのは、彼女の偽物だったとわかり、慌てているセンチネル

戦用のプロであるセンチネルさえ出し抜く巧妙な幻を生み出すことが出来る。

AMMを駆動させる高度な演算能力がそれを可能とさせているのだった。

クレセントが、高い技量の持ち主である事がわかる。

使い道は、大いに問題があったが。

「それは、本物なの?」

「ええ、本物よ。きっちりとスキャンでも確認したから」
ニトロが指差したそれは、ピクピクとのたうち回りながらも、ソラナを目指していた。

「ホラーだわ」

「ええ、ホラーよ。何があなたをそうさせてしまったのかしら。クレセント」

「そこに、未知があるのなら、これを解き明かさずにはいられないのよ」

「せめて一揉みしたかったわ」
そういって、カ尽きるクレセント

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「最初っから、こうすればよかったのよ」
そういうセンチネルに、頷くソラナ

結局、4人でお風呂に入ったのだった。
センチネルの家の風呂場はとても広く、小さな旅館の露天風呂程度はあり、4人は余裕で入れるのだった。

センチネルがクレセントを監視する。
ニトロがソラナを守る。
正に衛兵の如しだった。

「でも、大きいわね」

「ネル姉ぇまで!」

「ニトロだって、そう思っているんじゃない?」

「うーーん確かに!」
「ずるいわ」

「ずるいって!」
「これは、生まれ持ってのものですわ」

「それに、ニトロにはニトロのよさがありますわ」

「私の良さって?」
「そういいながら、ぺたーんとした自らの胸を見る」

「スレンダー体形よ」
「それは、ニトロの良いところよ」

「ちょっと、雑過ぎない!?」
「それに、それは、ソラナちゃんが持っているものだから発言だよ」

「少しお待ちなさい」
そういうと、ソラナは両手でボディーソープを掬い泡立てる。
それをニトロの胸元、そして脇に付けて洗い始める。

「ちょっと、くすぐったいよ。ソラナ」

「いいから」
「今日、あなたは、わたくしを歓迎する為に頑張ってくれたわ」
「その証拠に、ほら、体の筋肉が強張っているわ」
洗うと同時にマッサージするソラナ

「体を見れば、あなたの頑張りが、そういうのが素直にわかるのだから、そう、それもいいところだと思うわ」
「ありがとう、ニトロ」
そういって、丁寧に洗っていく

「そういわれたら、何も言い返せないじゃない!」
「こちらこそ、ありがとう。ソラナ」

「じゃあ、今度は私がソラナを洗ってあげるわね」
そういって、ニトロがソラナを洗い始める。

「ほほえましい光景よね」
「ねっ、クレセント!?」

「ほうね、すごくいいわ」
センチネルの視線の先では、鼻血を垂れ流しながらボーっとソラナとニトロのやり取りを見つめるクレセントがいた。

「クレセント!」

「ひゃい!」
怒られると思ったクレセントは、咄嗟にビク付きながら返事をする。

「のぼせてしまってはダメよ、それならそうと言ってくれなきゃ」
そういって、タオルを水で濡らして、クレセントの頭にのせる。

「これで少しはマシになるわ」
さりげなく、冷たい飲み物を入浴中のクレセントの傍の縁に置く

(そうじゃないんだけどネル姉ぇ)
そのやり取りをソラナの髪の毛を洗いながら、見ているニトロ

「ありがとう、センチネル。あなたのそういうところ、私、すごく好き」

「そ、そうかなぁ」

「うん、凄く好き」

「そういわれると照れるけど」
「ありがとう。私も、唐突だけれど、あなたのそういうストレートな物言いするところ好きよ」
そういって、隣り合って入浴する二人

「いつぶりくらいかしらね。こうやって落ち着いてお話しするの」
「余り、こんな風にゆったりすることなんて、最近は無かったから」
互いに忙しかったし、と付け足しセンチネルは伸びをする。

「あら?センチネルがいつも忙しくしているからじゃないかしら」

「あなたが、私のラボに遊びに来てくれたらいつでも時間はあるわよ」

「あなただって忙しいでしょ?」

「あなたの為に時間を作るのなんて、苦じゃないわ」

「まるで、私が怠けているみたいね」

「そうよ。怠けているわ。私と過ごすことを」
「意識体は、自ら定義する存在理由こそ全てといっても過言ではないわ」
「私の存在理由は、あなたと過ごすことよ」

「その仮説って、あなたの研究結果?」

「ちがうわよ。所管よ」
「でも、いい近似だと思っているわ」

「ふーん」

「ふーんじゃないの」
そういって、コツンとセンチネルのおでこを軽く拳で叩く 

「あなたは、頑張りすぎる傾向があるからたまには休みが必用よ」

「防衛討伐任務、確かに重要よ。でもね。だったら、もっと、私を頼ってくれればいいわ」

「その為にボット対策案もいくつもあるのだし」

「クレセント」
じっと、クレセントを見つめるセンチネル

「パートナーとして、当然のことよ」
「頼りなさい」

そうとだけ告げると、ぴしっと伸ばしていた腰を再び縁にもたれさせ、ゆったりと湯舟に浸かり始める。

「私達も入ろう、ソラナ!」
「ええ、よくってよ」

ソラナが勢いよくお湯にダイブする。
勢いがついたのか、思った以上に彼女の飛距離は伸びて、クレセントにぶつかる。
そのやわらかなメロンが彼女の顔面に。
丁度、彼女がくつろいでいるその上に、すっぽりとソラナが収まる形で、ソラナがクレセントに跨る。

「クレセントさん、ごめんなさい」
「大丈夫?」

「」

「息をしていないわ!」
サーっと、青くなるソラナ

それとは対照的に真っ赤な血を鼻からだらしなく垂れ流して勢いよく倒れるクレセント

「ちょっと!衛生兵!衛生兵!」

「おちついて、ネル姉ぇ」
「クレセントさん以外で医療に詳しいのは、ネル姉ぇでしょ!」
そういって、ぺちべちとセンチネルを叩くニトロ

「とりあえず、陸に!!」
そういって、クレセントをお姫様抱っこして上がるセンチネル
クレセントの表情は心なしか、ものすごく満足げであった。


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