4.13章 ジノ
「大体の概要は、わかってきたわ」
「ただ、これが重要なのだけれど」
「わたくしが元居た世界に戻れるかどうかよ」
「どうにかなる手立てはありそう?」
「いえ、こればかりは、私にもわからないわ」
「ごめんなさいね」
「いいのよ。あなたが謝ることではないでしょ?」
「あなたがわからないなら、あなたが作った優秀な子に聞くとしましょう」
「残念ながら、それは無理だね」
「だれ?」
研究室に入るなり、ソラナの発言を否定した存在
黒髪をきっちりとツインテールに結び、執事の様な格好をした女の子が入ってきた。
「ジノちゃん、こんにちは〜」
「こんにちは、クレセント」
「ジノちゃん、今日は用事があったんじゃないの?」
「ああ、あれだが、あまりにもつまらないので抜け出してきた」
「いいの!?それで、GNO-LANDの統括なんでしょ?」
「ああ、議事録は、AIにまとめさせているからね。後で開覧すればいい」
「そのAIよ。なぜ、わたくしは使うことが出来ないの?」
「なんだ、お前、使おうと思っていたのか」
「お前って!」
「そもそもだ。名前も名乗っていない奴にはお前で十分だ」
「自己紹介、初めての人にはするように習わなかったか?」
「くっ、わたくしの名前は、ソラナよ。あなたのお名前は?」
「ボクはジノ、GNO-LANDの統括をしている」
「それで、早速ですけど、なぜ、わたくしは、AIを使うことが出来ないの?」
「キミには、権限が無いからだ」
「いや、正確に言えば、ボク以外はAIの使用権限はない」
「そこにいる開発者であるクレセントも同様だ」
「それでは、メンテナンスはどうするの?」
「メンテナンスの際は、ボクが行っている」
「ボクも技術者だからね」
「教えてもらえれば、そのくらいは出来るさ」
「随分と中央集権的なんですね」
「完全であることを求めたら、最速でたどり着くにはそうした方が良かったというだけさ」
「それが、中央集権の様な形になっただけでね」
「そう、じゃあ、あなたが代わりに答えて下さらない?」
「わたくしがもとのところに帰ることが出来る方法を」
「いいだろう」
「本当に?答えられるの?」
「そもそもだ。キミは外から来た意識体なのだろう?」
「ならば、帰れるか帰れないかで言えば、帰れるという答えになる」
「ただし、その方法はわからないが」
「よくそれで、帰れるなんて言いきれますわね」
「それは、キミがこの世界にとって異物だからね」
「世界は、自らと違うものをはじき出すようにできている」
「ならば、いずれ、はじき出され、キミは元居た世界にもどれるというわけだ」
「それは、いつなのです?」
「わからない」
「AIに聞いて下さらない?」
「AIに聞いてもわからない」
「なぜ、そういい切れるの?」
「もう、聞いたからな」
「その上でのさっきの結論だ」
「納得したか」
「いえ、全然」
「ところで、わたくしの体のパワーが大幅にダウンしているのですが、ジノさん、原因を知っていたりするのかしら?」
「さぁな。知るわけがない。そもそも君の全力がどのようなものかなんて知らないから
な」
「さて、質問は、終わりだ」
「ボクは、クレセントに用があってきたのだ」
「私に?」
「ああ、そうだ」
そういうと、ジノはクレセント以外に退席を命じた。
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