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3.77章 夜明け

「ノノ!」

ノノに駆け寄って、抱き着くエブモス
しかし、コアを砕き地面へと倒れていたMakerDAOの体が起き上がる。

「ノノ!まだ倒してない!起き上がって来るよ!」

「いえ、やったわ。それに『彼女』はもう戦うつもりはないと思うわ」
「そうでしょ?『MakerDAO』 『PoW』?」

「ええ、私にそのつもりはないわ。ムニュもそうでしょ?」

「ムニュ?」
誰の事を言っているのか分からず、不思議そうに首を傾けるエブモス

「ちょっと!PoW、いきなり、その名前で呼ぶのは無しでしょ!?」

「えー、いい名前なのに。あっ!この名前、私がつけたんだった」
「私っててんさーい」

「天才でもなんでもいいから、今、ピシッと決めようと思っていたんだから、『ムニュ』っていうのやめて!」
「それに、なんで今更、昔の名前を呼ぶんだよぉ。私、MakerDAOって名前、PoWからもらったでしょ」

「ごめんなさい。でも、あなたと再会したことが懐かしくなって、この名前で呼びたくなったの。親しみがあって、私の大好きな名前。もちろん、MakerDAOも好きよ」

「そんなこと言ったら怒れないじゃないか」

「あのー、お二人さん。何が何だかわからないから説明してくれるかな?」

「あっ、ごめんなさいね。ノノ。いえ、今はイーサリアムの代表意識体かしら」
別々の声が、MakerDAOからしている。
一つは体の持ち主であるMakerDAOの声
もうひとつは

「サファイア!サファイアじゃないの」
近寄り、ぎゅっとMakerDAOを抱きしめるクニ

「ちょっと、馴れ馴れしいんだけど。どういうこと?」

「ルビー久しぶりね。元気にしていた?」

「元気も何も!私、あの後大変だったんだからね」
そういうと、泣き崩れてしまったルビー
言葉にならない感情が、深紅の瞳よりあふれ出る。
そんなルビーを抱きかかえ、頭を撫でながらまるで、子供をあやすように包み込む

「ねぇ!無視しないでよ。二人だけの世界に入らないで。っていうか、それ私の体だから!PoW」

「ムニュ、ちょっとだけ待ってね」
MakerDAOに言い聞かせながら、ルビーを落ち着かせるPoW

「おかーさんか何かかなぁー?」

「こんなおっきな子を持った覚えはありません。エブ子ちゃん、そこは『お姉さん』って言って欲しかったわ」

「MakerDAOの姿で、イーサさんみたいな声だから混乱しちゃう」

「そこら辺は、きっちり説明するから安心して。と、私達にはもうあまり時間がなかったのだわ」

「時間が無い?どういうこと?」

「ブロックチェーンが落ちてくるから、地上に衝突するまであと2時間もないわ」

「!!そんな直ぐなの?」

「ええ」

「だから、協力する為にも、情報を共有したいの」
そういって、SCRETやアトムたちを手招きし呼び寄せ話を始めた。

「ということなのよ」


「どういうこと?」
「ノノがノノじゃなくなっているって!」

「エブモス、それなんだけれど。私は、私よ。ノノよ」
「ただ、ノノは、今の私にとって一部に過ぎないの。ゼロも私、ノノも私、イーサリアムと共鳴したのも私」
「すべてが合わさった存在になってしまったの」

「んーなんか、理屈っぽい」
「イーサさんっぽいなぁ」
「でも、ノノがどこかにいっちゃったんじゃないんだね。安心した!」

「やさしいのね。エブモス。ノノは、どこにも行っていないわ。私の一部よ。だから、あなたと過ごした大切な時間もしっかり覚えている」
そういって、ノノを含む意識体は、自分の胸に手をあてた。

「でも、それならなんて呼べばいいかなぁ?ノノだと、一部だけなんでしょ?みんなを示して呼べる名前があったらいいのに」
だって、ノノだけが呼ばれているのってなんか寂しいじゃんと付け足すエブモス


「それなら、もう考えてあるわ」
「キャプテンの置き土産なのが少し癪だけど」



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