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3.32章 行動力

「キャプテーン、また、お店に来てね!」

「もう帰っちゃうの?ボトル、もう一本開けてゆっくりしていけばいいのに」

「P2も、そろそろ出勤するって連絡があったのよ!」

「あぁ、プリンセスか!それは、悪いことをしたね」
「でも、僕もまだ仕事が残っているんでね。ちょっと早いけどお別れの時間さ」
「なぁに、また近いうちに来るから、ほら、そのときは、タワーやるからよろしくね!」

「キャプテン!おっとこまえ!素敵」
そういって、若いドレスの女性たちが彼の両腕に抱き着く

「バカキャプテン、ニヤついてないで、そろそろ行きますよ」

「海門くん、今日、あたり強くない?」

「自分の胸に聞いてください」

「早退して、NFTマーケットプレイスにいたところ呼び出したのまだ怒っているの?」

「怒りますよ。あんな呼び出し受けたら誰だって」
「あなたの上司が無理な飲み方して、泥酔しているから早く迎えにきてくださいと、常連のお店のママさんからかかってきたら、行かざるおえないです」
「なんなんですか。あなたのあの呼び出しかった?」
「そういうところだけ、無駄に頭回りますよね。キャプテン?」

「え、だって、ああしないと海門くん来てくれないと思って」

「キャプテンこそ、NFTを落札しようとした瞬間を狙って連絡してくるなんて。そうとう執念深いですよね」
「根に持ってますよね?」

「はっはっは!、そりゃー勿論、だって、人の唯一の楽しみを奪おうとするんだもの」

「なーにが、唯一の趣味ですか。ニヤけながら酒飲んでたやつのいうセリフじゃないですよ」

「まぁまぁ、今日はお互い様ってことで」

「いいですよ。そういうことにしておきましょう」
そう静かに締めくくる海門

「あー!来週の僕のスケジュールぎっちぎちにするのやめてよね」

「え、何言っているんですか。そんなのするに決まっているじゃないですか」
「ほら、今からも、早速お仕事なんですから。さっさといきますよ」

「海門くんの鬼!悪魔!」

「鬼で悪魔で結構です。その分、普段、甘やかしているでしょう」

「そういう返し、うまいよねーまったく」
そういいながらも、キャプテンと海門は、専用車に乗り込みOPEN SEA本社に向かっていた。
天候は、豪雨。
激しい天候が少ないOPEN SEAにしては、珍しかった。

「ときに、海門くん。こんな遅くに『呼ばれたから』という理由で来るなんて。とても君らしくないよね」
「何かあったのかな」

「気にしすぎじゃないですか。キャプテン」
「あぁ、ゴミがついてます。払ってあげますね」
瞬間、鮮血のキューブが出現した。
海門の指が動いた瞬間、キャプテンの首と胴体が別れを告げ、間髪入れずに、体が細切れにされたのだ。
頭は、胴体より念入りに。
『封印』のトランザクションで、キャプテンの周りのみ周りから隔離した空間は、内部が覗けない程に紅に染まりきっていた。
それをそとに蹴り飛ばす。
瞬きの数百分の1、僅かな時間に行われた行為。
それを目撃できたものなどいなかった。

「あぁ、君、車はこのまま本社まで走らせて、君たちは退勤していいよ。キャプテンは、少し寄るところがあるからな。私がついていくから問題ない」

「大変ですね。海門様も」
そういって、車を止めて、海門とキャプテンを下ろし、車は去っていった。
並列して走っていた複数の車両も、車と同じく去っていった。
警備のもの達も下がらせたのだ。

姿が見えなくなったと同時にキャプテンの姿が消える。
彼によってつくられたホログラムだったのだ。
「さて、何を死んだふりでもしているんですか?OPEN SEA?まさか、その程度で死んだとでもいうのですか?」

そう口にした言葉を放った海門の声は、いつものバリトンボイスではなく、成人女性のものだった。

その声に答えるものはいなく、彼女は手をかざし引く動作をする。
まるで、釣り糸でも引くような動作。
それとともに、鮮血色をしたキューブが彼女の前に飛んできた」

「死んだふりはやめたらどうですか?どうせこの程度では死なないのでしょ?」

「」

「NFT、燃やしますよ」

「わかった、わかった。だんまりでわるかったよ」
「そして、君はだれだい?」
キューブからは、音だけが聞こえる。

「とぼけるのは、やめたらどうなの?キャプテン?」

「まさか、問答無用で千切りにされるとは思わなかったなー」
「証拠ないんてなかったのに。よくわかったよね」

「何を、白々しい」
「あれが意識的に起こされたのならば、犯人なんて限られているわ」
「遠隔地の事柄をシステムすら搔い潜って、誰にも悟られずにわかる。更に干渉できる。そんなのは、あなた位しかいないのよ」
「OPEN SEA、いえ、OPEN SEA 2代目 キャプテン!」
そういうと、海門の見た目をしたそれは、自らにトランザクションを作用させ変身を解いた。
そこに現れたのは、艶やかな長い黒髪をしたスレンダーな美女だった。

「やってない。とは、言わせない」

「ははっ、ばれていたようだね」
「ぐぎっ!」

「うるさい!そのふざけた笑い、吐き気がする。Uniswapは、我が同胞はお前に消されかけている。私たちが何をしたというのだ!」

「ふむふむ、Uniswap、まだ化けてないみたいだね。なら、僕が救ってあげようか?」
キャプテンの声がするキューブに女は手をかざし握りつぶす。

「ぐぎゃ!」

「軽々しく『救う』などどの口がほざく。お前がやったのだ!それに救う手立てなどないのだろう!」

「ああ、済まない!悪かったよ!」
急に素直になり、謝り始めたキャプテンの声に女の機嫌が目に見えて悪くなる。

「謝る。だから、頼む。見逃してくれないか!?」
許すではなく、まず見逃してほしい。
その厚かましい命乞いは、女の理性を吹き飛ばすのに十分だった。
握った手を話し、キューブが元の大きさに戻る。
ほっとしたのか、キューブから『ありがとう』との声が聞こえる。
『優しい君ならばわかってくれると思った』
『僕たちは仲間なんだからね。同じdappsの』
軽薄な言葉で紡がれる言葉に、吐き気がする。
女は、詠唱していたトランザクションを放った。
普通は、詠唱のみで成立するトランザクションを体全身に文字を浮かび上がらせて放った一撃。
キューブの周りの空間が切り取られ始め、水の上でシートを浮かべたときに重いものが乗ったように空間がキューブを包み込むようにして、おちていく。
切り取られた空間は光を吸い込むかのような暗黒。
その中へと、キューブはおち、最後はふたをするように空間が閉じた。

「ブロックチェーンの狭間で永遠にさまようがいい。それが死ねない貴様の我らに対する唯一出来る贖罪だ」
そう言い残し、女の姿は消えた。

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