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4.18章 間一髪

大剣を持った部隊が超巨大ボットの船体を切りつける。
「硬すぎます!隊長!」

「弱気なことを言うな!」
「一度で効かぬなら、二度」
「二度で倒れぬならば、三度!」
「切り崩れるまで、切りつける!!」

「強襲部隊を支援しろ!」
「付属する小型ボットを全て打ち落とせ」

「弾幕を張れ!相手の攻撃を全て防御するんだ」

息の合った連携を見せる前線部隊

「みんな、強化するから!」
そういって、支援部隊の力を借りて、復帰したセンチネルが最前線の兵士たちの能力を底上げする。

(いけるか)
支援部隊を率いて、敵性体の情報を解析するインジェ
相手の装甲に徐々にダメージが蓄積しており、第12層まで防御装甲を削り切ったのがわかった。

(あと、少し)
(あと、少しだ!)
トランザクションで調べた装甲は、13層
最後の1層が非常に硬い。

(もう少しだ!)
インジェも、トランザクションを放ち、前衛部隊を支援する。
筋力に加えて、速度も底上げする。
そうすることで、強襲部隊の攻撃力を上げようというのだ。

通常ならば、機材を使用して行うメンテナンスも、スピード重視の為、全てトランザクションで行う方法に切り替える。
大粒の汗がインジェの額からしたたり落ちる。
普段では考えられないような本きな負荷がかかっているのだ。
(このくらい、閣下の痛みに比べれば!)
それを気合で抑え込み、サポートを続けるインジェ

大きな鉄板を叩くような音が聞こえた。
第13層を完全に破壊し、本体へと斬撃を叩き込み事に成功したのだ。

(よし!攻撃が通るようになった)
(後は、やつの主砲が発射されるまでに沈めるだけだ)
「各隊!あともう少しだ!きついとは思うが、やり切るぞ!」
号令を飛ばす
各部隊から、大きな声が上がる。

(土気は回復した)
(後は)

高速で銀色のエネルギー体が集約を始める。

「させない!」

dVPNを変則発動させ、塊のエネルギーを削る。
全力のシールドは放てないまでも、他の方法でなんとか妨害を行うセンチネル

装甲がはがれ、本体の竜骨が露出する。
それを叩き切る大剣を携えた兵たち
赤色に輝く大剣を振るう。
高熱を帯びたそれは、露出した竜骨を溶かす。
徐々にその巨大な船体が崩れつつある巨大ボット

「強襲部隊、後退せよ!」
「一気に止めを刺す」
戦場にインジェの声が響く
それと同時に巨大ガトリングを持った部除が前線に立つ。

「やつを粉々に粉砕しろ!」

「了解!」

そして、掃射される巨大な質量の嵐
それらに打ち砕かれるように竜骨が粉々に砕かれていく。
装甲を失い、竜骨を砕かれた超巨大ボットは、その自重を支えきることが出来ずに崩れ落ちていった。
先程まで、船体の先端に集約していた銀色のエネルギーの塊が消え失せ、後には崩れ落ちた鉄塊が存在するだけだった。

「みんな!やっつけたわ!!」
「ありがとう!」

センチネルの声が戦場に驚き渡る。
兵たちは勝どき上げ、武器を掲げて勝利を祝う。

「後方支援部隊、傷が少ないものは、急いで治療班を作れ」
「強襲部隊をはじめ、前衛の重傷者を収容するぞ」
インジェが、檄を飛ばす。

勝ったとは言え、部隊はボロボロだった。
負傷していないものはおらず、最前線で装甲を削っていた強襲部隊は特に酷かった。

あるものは、高温の大剣をふるい続けた為、重度のやけどを負っていた。
あるものは、近距離からの射撃を受け続けた為、銃創が酷かった。
あるものは、ビット型支援機の斬撃を受け続けた為、流血していた。
皆、傷ついていないところが無かった。

治療班が到着し、彼らの治療を始める。
自分の力で歩けないものは、後方までタンカーで運ばれていった。
勝利を分かち合いながらも、撤退の準備に入った前線部隊

「ふぅーーー、今回は何ともならないと思ったけれど、みんなに助けられたわ」
「ありがとう!」

そういって、一人一人に手を差し伸べ、お礼を言っていくセンチネル。

「インジェ君」

そういうと、センチネルはインジェをぎゅっと抱きしめた。

(なっっ!!)
「閣下!!!そういうことは ///」
真っ赤になりながら、それでもされるがままのインジェ
フローラル系のアロマの様な良い香りがインジェの鼻腔をくすぐる。

「インジェ君は、ほんとうによく頑張ってくれたよ!」
「だって、再起動されたとこで、私、本当にダメかと思ったもの」
「でも、一歩も引かずに前線でみんなを支援してくれた」

「折れそうな心を鼓舞し続けてくれた」

「だから、私、頑張れたんだよ!」

「ありがとう」

「おかげで、あのデカブツを打倒することが出来たわ」

そういうと両の手に込める力をさらに強くするセンチネル。
丁度、センチネルの胸元にインジェの顔がうもれる形になっていた。
(やわらか!!)
(いい匂い)
(苦しい、しにそーでも、いっか)
赤色になったり、青色になったり、インジェの顔色が目まぐるしく変わる。

「閣下」

「閣下」

彼の直属の部下がセンチネルに話しかける。

「なぁに?」

「それ以上やられてしまったら、副官がおかしくなってしまいます」
栗色の髪をサイドテールに纏めた部下と、黒色の髪をポニーテールに纏めた部下が助け舟を出す。

「えっ!」
「うゎ!!インジェ君!!どうしたの?顔色がすごく悪いよ。真っ青だよ!」
弛緩し切った表情のインジェは、真っ青な顔色をしていたのだ。

「こんなひどいことを一体だれが」

「あなた以外にだれがいるというのですか、センチネルさん」
そう答える赤い短髪の少女が答える。
大きな剣を横において、一息つきながら。

「アカッシュちゃん!そんな!私はただ」

「まぁまぁ、わざとじゃないのはわかりますよ」
「第一、わざとだったら、あざとすぎます」
「それよりも、早く救護してあげたらどうですか」
そういって、救護班を手招くアカッシュ 

「そうね!」
「インジェ君、息をしていないみたいだし」
「ここは人工呼吸ね!」

ノンタイムでインジェの唇にキスをするセンチネル
今度こそ、インジェの意識は飛んでった。

「あーーーー!!インジェ副官ずるい!!」
「閣下にキスしてもらった!!」

あるものが声を上げた。
そこからは、もう収集が付かなかった。

かくして、だらしなーく伸び切ったインジェがタンカーで運ばれていくことになった。

「どうして、こうなってしまったのかしら?」

「この無自覚、ばか閣下!」

「ばかって、酷いよ。アカッシュちゃん」

「いいや、あなたはばかよ」
「インジェの思いに気付けなかったばかよ」

「んん!!」
そんな二人のやり取りを背景に撤退作業は進んでいった。

銀色のエネルギーの塊が消えたことなど、だれも気に留めることがなく。

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