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0.7 ユニット結成

「それで、これは何?」

「何って、ユニットよ!ユニット」
「アヴァリアちゃんとイーサさんが一緒に活動するのよ!」

「それは、わかりますが。なぜ?」
納得いかないという表情で、アヴァリアがオズモを見つめる。

「アヴァリア。キミの歌は素晴らしい。しかし、知名度は、無いに等しい」
シークレットが間に入るように補足する。

「あと、方向性だ」
「キミの語り聞かせる様なバラードには、見事なものがある」

「そうでしょう」

「ただね。理解が難しいんだ」

「えっ!あなた、わかって感動していたわよね」

「そうだよ。ただ、一曲、どのくらいかかったか覚えてるかい?」

「2時間くらいかな?」

「長いね」
「それは、もう、歌劇だよ」
「『まず、聞いてみよう』そういった人達の耳に止まるのが難しいんだよ」
「だから、短くするためにね」

「短くするために?」

「ユニットを組むのよ!」
瑞々しく実った2つの果実を揺らしながら、アヴァリアが座っている席に前屈みになり熱く語り始めるオズモ

(おっきい)
「じゃなくて、なんで、私がイーサと組むの?」

「それはねー。彼女。動きがいいからよ」

「動き?」

「オズモさん。言葉が足りてないよ」
「イーサさんは、体術のスペシャリストなんだ」
「だから、ダンスはお手のものなんだよ」

「それが、何の関連性があるの?私の歌はバラードよ。ダンスは主体ではないわ」

「そこなんだが」
「思い切った方向転換が必要だと考えているんだ」
「癖になるフレーズ、メロディ。だけど物語を内包する」

「ふむふむ」

「そう。キミ達には、アイドルユニットとして活動してもらう」
「プロデューサーは」

「私よ」
白衣の上からでもわかる位、おっきな胸を強調する様に腕を組んで胸をはるオズモ
白衣のボタンがはち切れないか心配だ。

「そして、僕がマネージャー」
静かに宣言するシークレット

「ねぇねぇ、わたしも何かしたい!」

「もちろん、エブモスにも手伝ってもらうよ」
「僕のサポートとして、色々働いてもらうから、よろしく」

「やったー!シークレット君のお手伝い」

「以上だ。アヴェリア。何か質問は、あるかい?」

「余りにも唐突で、質問しかないわ」
「ただ」
「あなた達が、私の為にやってくれている。その想いは伝わってきたわ」
「でも、なぜ?」

「それはねー」
「アヴァリアちゃんにあんないい歌を聞かせてもらったのよ。コスモスのみんなにも聞いてもらいたいじゃない!」

「オズモ。あなたが示唆した様に、もしかしたら、私の歌があなた達をコントロールする可能性もあるのよ」

「そうしないでしょ?」

「何で、そんなに信用してくれるの?」

「感かなぁ〜」

「感って」

「あら。意外と馬鹿に出来ないものよ。感」
「あなたの歌に、もし邪な思いがあったら、それは、私を涙させる事がなかったのではないかしら?」
根拠としては、それで十分よ。
そうオズモは、付け加えた。

「ズルいわ。そう言われたら、信用するしかなくなってしまうでしょ」
泣きそうな声になり、そう呟く。

「泣いてもいいわよ。アヴァリアちゃん。そして、飛び込んでいらっしゃい」
「私の胸で慰めてあげる」
そういって、オズモは、アヴェリアに向かって両手を大きく広げた。

「オズモさん。そろそろ、物理的に焼かれるよ。ソラナに」
呆れた口調で、シークレットが言ったが、オズモの勢いは、少しも衰えなかった。

「ふふん!安心したまえ。君たち!」
「ソラナちゃんだったら、今朝から、実家に帰省しているわ!」

「あー。そうか。ついに愛想をつかされたんだね」

「違うわよ!」
「里帰りよ、里帰り!」
「忙しくて、ここ一年は、帰れなかったでしょ?だから、行っておいでって送り出したのよ」

「このタイミングで?」

「そうよ。だって、こうなるとは知らなかったから」

「結果的に、浮気し放題と?」

「そうね。我ながら素晴らしい直感だわ」

「邪悪な直感なんだよ」

「誘導尋問に見事にかかってるわね」

「あぁ!みんな、そんな距離取らないで!って、アヴェリアちゃんも、ほら!お姉さんのここ空いているわよっ!」
そういって、自分の胸元をポンポン叩いているオズモ

「必須なんだよ」

「エブ子ちゃんも、笑顔がしんでる!」

「まぁまぁ。オズモさんのは、今始まったことじゃないから。みんな、気を取り直して」

「そうじゃないけど、そうじゃないけど。でも、フォローが痛いわ」

「痛いなら、やらなきゃいいじゃないか」

「シークレット君」

「何です?オズモさん」

「可愛らしい子がいた場合、これを口説かなければならないの。これは、私が私である命題よ」

「そんな命題捨てちゃえば?」

「シークレット君、厳しい!私にだけ当たりが厳しいっ!」

「僕は、厳しく無いよ。当たり前の事をいったまでだよ」
「さて、じゃあ、早速だけれどミーティングをしようか」
「みんなに歌を届けるための」

「イーサは、いいの?私とアイドルユニットする事になって」

「やるんでしょ!?」
「アヴァリアは、届けたい思いがある」
「作りたい場所がある」
「だから、歌う。ちがう?」

「違わない」

「だったら、やりましょ!」
「私達の歌とダンスで届けましょ!」

「ありがとう」
僅かに涙声になり、ポツリとそう漏らすアヴェリア。

「以外に涙脆いのね」

「そんな。あなた達が優しいから」

「さて、優しいのもここまでだ。ビシビシ厳しく行くよ」
シークレットにしては、珍しく大きな声で宣言したのだった。

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