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番外編 クリスマス・アフター

『むにゃむにゃ』
『あーーー、もう!ぐっすり寝ちゃってさ!』
『『しー』』
『わかったわよ』
荷物は配り終えた為、その分は重さが少なくなったとは言え、
十分な重さがあるソリ、そこに3人が載った状態でラクラクと引いていく。
怪力女子、ソラナ。
『怪力女子じゃねーーですわ!』
そう虚空に叫び、ツッコミを入れる。
『あなた達も、載ってないで、手伝ってもいいのですわよ!』
『いや、僕たちが支えていないとさ』
『ジャッカル君、姿勢が崩れておきちゃう』
そう返す2人に、しかたねーですわと踵を返し前進を始めるソラナ
『それにしても、みんなよろこんでたね』
『きっと、ソラナの思いも通じたんじゃないかな』
シェードとシークレットがそういうと、振り返らなくとも嬉しそうに笑っているのがわかるくらいの表情になるソラナ。
きっとしっぽがついていたならぶんぶんと横にふるっていたかもしれない。
シークレット達の家に着くと、ノノさんが暖かい飲み物を人数分用意していた。
『ノノさん、ありがとう!』
『何、姉たるものこのぐらいできなければな』
『どういしたの!?ノノさん、ノノさんも姉ウイルスに感染しちゃったの?』
シェードが失礼なことを聞く。
『いや、コスモスでは、年長の女性意識体を姉ということを教えてもらったのだが、そうではないですか』
『それ、間違った知識だからね』
『そうですか、オズモさんといえ間違えはあるっと』
『いや、その分野に関してはオズモさんは間違いだらけだよ。参考にしちゃだめだよノノさん』
『わたくしは、別にそれでいいとも思いますわよ』
『そのおかけで、オズモお姉様とお呼び出来ているのですから』
『わぁ、すでに調教済みだったか』
そうシークレットが引いていると。
『いえ、あの方の知識そして、情熱と愛情はお姉さまと呼ぶにふさわしいと思いますわ』
うっとりと夢見る瞳を浮かべ祈るように語り始めるソラナ、きっと誰か止めなきゃ止まらないやつだ。
『ソラナちゃん、』
『ただいまーー』
『何々、うれしいこと言ってくれているじゃない!』
『オズモお姉様、お帰りなさいませ』
『うん、ありがとう、ソラナちゃん』
そういうと、オズモはソラナをハグした。
ソラナも、オズモをハグし返した。
『こんなところにスール制度が成立していたとは』
『僕もびっくりだよ』
※スール制度とは、マリア様がみてるに登場する先輩が後輩を指導する制度
 後輩が先輩を呼ぶときは、お姉さまが通例である。

普段のクールさをかなぐり捨て、呆然とそんなことをいうシークレット

『みなさーん、早くしないと飲み物冷めちゃいますからね』
そう促すノノさんの言葉に従い、皆、着席する。
そして、Juno姉ぇが作ってくれたシュトーレンを食べながらお茶にする。

『最近、色々忙しいことばっかりだったから、こういうクリスマスいいわね』
オズモがいうと、ソラナが続く
『わたくしも、皆さまやお姉さま、お姉さまに救われたおかげで、日々楽しい発見が一杯ですわ』
『ちからだけが、全てではないと。あの時身を挺してお姉さまがいった言葉、今でもまだ、ここにとどまってますわ!』
胸元をドンっと叩くソラナ
『そういうところが、ギャグなんだよねキミ』
言い放つ、シークレット
『でも、それがソラナちゃんの愛嬌な気がします』
『わたしも、そう思うわ』
ノノとシェードが続く。

『わたくしは!パッションが溢れているだけですわ!それが体に収まっていないだけ』
『まぁね、今回のサンタも町のみんなに喜んでもらえたからね。これで僕らがかけた迷惑を返せるなんて全然思っていないけど』
『それで、楽しい思い出が一つでも出来てくれたならいいなって思っている僕もいるんだ』
『だから、きっかけ、ありがとうソラナ』
『私も、何かするきっかけが欲しかったから』
『それをするきっかけになったの!』
『ありがとうね!ソラナちゃん』
そうシークレットとシェードから言われると、耳の上まで真っ赤になったソラナのできあがりだった。
人を見下し、強制的にマウントをとってきたソラナ
誉めさせはしたが、誰かから、なんの打算なく褒められることが無く過ごしてきたソラナ
そんな彼女が、純粋に褒められた。
そのことがとても、どう受け止めたらいいかわからずに彼女にそんならしくないことをさせたのだった。
『なっ、なっ!、そんなこといったってなにも出ませんわよ!』
『違うんだよソラナちゃん、みんな君に純粋に感謝を述べているんだ』
『私も、凄く温かい気持ちになっているんだ、ありがとう』
そう追い打ちをかけるノノさん。
天然なのかなぁ、天然のたらしさんなのかなぁ。
『あーーーーあーーーー』
前進真っ赤の銀髪娘の出来上がり。
どうしたらいいのかわからない気持ちがぐるぐるそのまま、庭に出て行ってしまった。
雪の積もった庭に。
皆、それを温かく見守っていた。

色々あったけれど、得られたものがあった。
それは、繋がりか。新たな出会いだったか。
そこまでの道筋は酷く歩みずらいもので、大切なものを取りこぼしそうだったけど。
そうはならなかった。しかし、それは結果論。
最悪の結果すら想定に入れたら、消しておくべき因果。
だが、それを今更、あーだこーだいうのはちがうのだと。皆がわかっていた。
だから、そのことは口にせず。ただ、これから来る未来への祝福を祈った。

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