0.13-1 様子見
「ふぅー。みんな、おつかれさま!」
「おつかれさまなんだよー!」
ステージを終え、汗で濡れたピアーナ
そっと、差し入れのタオルと冷たい飲み物が渡される。
「ありがと!ん!よく冷えているわね。タオル。生き返るわ」
「って、エブモス!あなた、何しに来たの!?」
「?」
小首を傾げ、ポカンとするエブモス
手渡したタオルと飲み物があった手がそのままになり、どこか滑稽だった。
「敵情視察?」
「なんで、そこ疑問形なわけ!?」
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場所を変えて、楽屋裏
互いに椅子に座りながら、向き合う形でエブモスとピアーナは、状況を確認していた。
「なるほどね。つまり、あたしのステージを見に来たのはいいけれど、アシスタントと勘違いされたと」
「それで、手伝って曲を聴いていたら感動して、帰るのを忘れていた。そういうことなのね」
「うん!」
「最初の段階で、おかしいと思いなさいよ!」
「もう!」
そう、エブモスに話すピアーナだが、表情は柔らかいものだった。
そりゃあ、正面から『いい歌だったから、聴き惚れていた』そう言われたも同然なのだから。
だからこそ、エブモスに言い放つ。
「打ち上げ」
「来るわよね?」
「いっていいの!?」
「当然よ。むしろ来なさい!」
「うちのスタッフとして、今日一日、頑張ってくれたのでしょ?」
「なら、あなたはあたしのメンバーよ。文句ある?」
「やったー!」
飛び上がるエブモス
それを見ていたスタッフが拍手を送る。
『さっすが、ピア姉さん!』
『ピアーナさま。すてき』
『エブ子ちゃん。よかったね』
そんな声が聞こえて来た。
「ほら、みんな騒いで内で、さっさと行く!さわぐならそっちでよ!打ち上げでしょ?」
「お店。もう、とってあるんだから!」
さっと、スマホを出して皆を誘導する。
そんな仕草にも、彼女らしさがにじみ出ていた。
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「エブモス、遅いね」
「うん」
「2人とも、心配しすぎ」
「エブモスなら、けろっと帰って来るよ」
「シークレットくん。説得力ないよ」
「ほら、体の振動数がいつもより、せわしない」
そう指摘を入れるイーサの言葉に重ねるようにアヴァリアも言う。
「うん。声の波長が短いわ。きっと、焦りが出ている」
「2人とも!同じだろ?」
指摘にぐうの音も出ず。
しかし、2人を心配させない為に言葉を紡いだのに何故か心配される。
そんな状態にツッコミを入れずにはいられなかったシークレットだった。
「みんなー、仲良しね。いいこと、いいこと」
語尾にハートでも付いているかのようなテンションで白衣の天使が現れる。
「エブ子ちゃんだったら、すごくなじんでいるんじゃないかしら?」
自信満々に腕を胸の前に組みながら、あふれんばかりの柔らかな山を押さえて。
その様は、今にも雪崩を起こしてしまいそうな様子だった。
「オズモさん、ヤバランチ!」
「イーサさん、そんなツッコミ。何処で覚えたの?」
「ポルカドットが教えてくれたよ」
「んもー。ポルカ君は」
そういって、特大のプリンを二つ抱え込むような姿で前かがみになるオズモであった。
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