3.81章 イーサリアムフォーク
「下がっていて、一撃叩き込むわ!」
そう言って、剣を振り上げ極光を纏い世界を構成する殻へと叩き込む
イーサの一撃を受け、剣には無数の線が入り、外の世界の色がその間から覗き込む。
青い空が散りばめられた夕闇の世界。
次第に青が占拠する割合が広がり、半分に達したところで臨界を迎え。
割れた
夕闇の代わりに晴天が広がる。
「これで、本当におしまいね」
「いや、まだ、あるわ」
「イーサがコアと共鳴した以上、フォークは絶対に行わなければならないの」
「フォーク?フォークって何?」
エブモスが不思議そうに尋ねる。
「フォークはね。この世界における決まりが書き換わったときに行われるものよ」
「今、私達がいるイーサリアムの世界は、イーサさんによってあり方を変えたの」
「特に変わらない気がするけど。どこが変わったの?」
「見る部分は変わらないわ」
「ただ、トランザクションを打つときにブロックが生成される法則が変わったのよ」
「PoSという基準が新しく使われることになったの」
「ふむふむ。それっていいことなの?」
「うん。少なくとも、このイーサリアムにとっては良いことなの。余分なブロックが作られなくなるルール。厳密にはことなるけど結果だけをいうなら、そうね」
「星の寿命が延びたということなの」
「なるほどー!」
「でね。今まであったルールも残るのよ。ただ、2つのルールは1つの世界に共存することができないのよ」
「だから、PoWを選んだイーサリアムの世界を作って、PoSの世界と2つに分かれるの」
「これが、私達の星でいうフォーク現象」
「ありがとう!PoW、なんとなくわかったよ」
「でも、2つになるなら代表も2人必要だよね。イーサさん、一人だよ?」
「ううん。それはちょっと違うかな」
「クニちゃん!?大丈夫なの?」
「ええ、あのくらいの傷、大したことないんだから」
「と、それよりも」
「今回、採用されたプランはPoSなの。イーサさんって、dPosでしょ。だから、出来ないのよ。代表が」
「どうするの?」
「私が代理として、PoSの代表になることになったわ」
そういうと、クニの服装が変わっていく。
カジュアルなショートパンツスタイルから、まるでブライダルのようなドレスを身にまとう姿に変わる。
そして、その手には自らの瞳と同じ色をした宝玉が治められた細長い剣を構えて。
「えっ!クニちゃんがPoSなの?」
「うん。正確には、PoSの経験値部分。PoSを採用するにあたり、本当に正しいかイーサリアムのコアが世界に送り出した集積装置。それが私なの」
「力を持って、はじめからPoSの統治を目指したのがキャプテンのところであったPoS」
「彼女と一つになることで、代表になったわ」
「いっとくけど、ちゃんと彼女の合意はとっているから。そこ、無理やりとかじゃないからね」
「うん」
「ん?でも、PoSの代表がクニちゃんなら、あとは?もう一つあるんでしょ?」
「それは、私が受け持つわ」
そういうと、PoWの姿も変化する。
クニが真っ赤に燃えるルビー色のドレスだったのに対して、彼女はサファイア色をしたドレスを身にまとった。
手には、メカニカルなロッドが握られていた。
「さぁ、お別れのときね」
「ちょっとちょっと、急すぎない!?」
「それと、イーサさんはどうなっちゃうの?代表でもなくて、帰るとことか!」
「エブモス、私は代表ではないわ。でも、安心して。帰るところはあるから」
「私は、2つの世界の調停者みたいなものになるの。ついさっきコアから聞いたのだけれど」
「調停者?代表と何が違うの?」
「2つのイーサリアム。そして他のブロックチェーン世界に行くことが許可された意識体。簡単にいったら大使みたいなものよ」
「ふーん」
「エブモスとコスモスのみんなにはきちんとお礼がしたいのだけれど。もう時間みたいだから」
「だから、これを渡しておくわ」
銀色の指輪を取り出し、エブモスに手渡す。
エブモスが受け取り、それを身に着けると、指輪は空間に溶けるように消えていった。
「消えちゃった」
「それは、私とエブモスを繋ぐ絆。どんなことがあっても、あなたが私を必要とするときあなたのもとに向かう誓いの印」
「ありがとう!イーサさん、ノノ。イーサリアムの旅、楽しかったね!」
「あっ、そうだ」
「どうしたの?エブモス」
「わたしからも、イーサさんとノノに贈り物」
「これは、りぼん?」
「うん!ノノにあうかなぁーって作ったの。ほら、ノノってば髪の毛は結わくけど、無地のゴムバンドが多かったから」
「色合いがにぎやかなものがあったらいいなーっておもって!」
フリルのついた可愛らしい白のリボン、間にはオレンジ色と銀色の線で刺繍が施されていた。
それは、まるで彼女たちの姿を示すようなものだった。
「ピースに材料もらって、アトムさんに習いながら作ったんだけどね」
「エブモス」
エブモスのことをぎゅっと抱きしめるイーサ
ふんわりとおひさまのかおりにつつまれる。
「ありがとう」
そういうと、すっとリボンをエブモスから受け取り、自らの髪を結わく
透けるような銀糸がリボンによりまとめ上げられることっで、有機的な色合いを描く。
それらはまるで、絆を紡いできたこれまでのノノの歩みでイーサの頭を飾り立てた。
「イーサさん、きれい」
「エブモスのお陰だ。プレゼント、ありがとう」
「そろそろ時間ね。元の時間の私にもよろしく伝えておいてね」
「うん」
次第に薄くなっていくエブモスとコスモスから来た客人たち
手を振りさよならを繰り返すエブモス
その手が消える最後の一瞬まで、手を振り返すイーサたちだった。
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