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3.56章空中都市MakerDAO-3

空中都市 -1層

「ふぅー、なかなか骨が折れるよ」
「久しぶりにこんなに歩いたかな」
「しっかし、特殊な構造をしているね、この都市はさ」
「おーい、クニ、起きているんだろ?聞いているかい」
「これじゃ、僕が独り言を言っているみたいじゃないか)

(聞こえているわよ。それに、私とあなたって別にそんな間柄じゃないでしょ)
(むしろ、敵同士といった方が近いくらいなのに。そういう返事を求める方が間違っているわ)

「そりゃーきついなぁ」
「こういうときは、誰かに言いたいものでしょ?」

(その誰かの集まりを丸ごと消しちゃったのは、だれよ)

「MakerDAO」

(あなたのそういうところ、いっちばん嫌いだわ)

「嫌いで結構、なんだ、話してくれるじゃないか」
「よかった。よかった。これで僕が退屈しなくて済みそうだよ」

(挨拶されたら、きちんと返しなさいよって小さいころに習わなかったの?)
(だから、答えているだけよ)
(礼儀として、無視せず、答えているだけなんだから)

「んー、僕自身は、ほら、親とかいなかった身だからさ。よくわからないんだよねー」
「生まれたときから行動理念というか、これやんなさい!って決まってたからさ」
「自然生まれの、天然育ち!ピュアな子なのさ!」
「でも、僕を生み出したdapps達も勝手だよねー」
「願望を全部押し付けてさ」

(dapps達の無意識から生まれたdapps達の集合意識を代表する存在)
(まぁ、あなたのことは、この体になってわかったけど)
(同情の余地はあるけど)
(だからといって、これまでやったことをが無しになるわけではないわ)
(Compoundさんの件とか、無意識の人たちを巻き込んだこととか。無しにはならないわ)

「ははは、同情なんてよしてくれ。僕の何がわかるというのかい?」

(それは!)

「いいさ、それはまた今度にしよう」
(しかし、これは、どうしたものか)
(都市の構造、特殊すぎじゃないか)
(上に向かって、住居区画のある1層、農業・工業区画がある2層、行政区画がある3層)
(下にむかって、ごみ処理区画の-1層、重力制御区画の-2層、リソース供給区画の-3層)
(真ん中が見るからに怪しいんだよねー)
(でも、どこにも情報がないしなぁ)

(キャプテン、分析終わったわ)
(そちらに情報を共有します)

「ありがとう、クニ。しかし、協力的だね」

(仕方がないでしょ。あなたが消滅したら、私も消滅するのだから。こんなの体を人質にとられているのも同然なんだから)

「まぁまぁ、そういわず。僕がめんどくさい捜索とかやってあげているじゃない」

(あなたのそれ、いちいち、癇に障るわ!)
そういって、クニは黙てしまった。

(ふぅ、やれやれ。まぁ、こっちは退屈しないからいいけど)
(ふーん。なるほど。こうなっているのか)
(僕が捜索して、クニに分析してもらったデータ)
(1層と-1層の接合部の光の円盤、3層と-3層からのみアクセスできる箇所が存在するみたいだね)
(十分に怪しいな、これは)

(キャプテン、行くんでしょ?)
(というか、行かなかったら、あなたのコアを体内から引きずり出すわよ)

「おいおい、僕のコアを排出したら、君の体は死んでしまうよ」

(だから、何?ここまで来たら、Yを取り戻すまで引き下がれないわ。それを諦めるなら、強硬手段も厭わないわ)

「おっかないね。いや、たくましいか」
「まったく、もうちょうっと僕の思う通りになると思ったらこうだよ」
「OpenSeaで君の意識が目覚めるなりさ、あれはないよね」

『私とあなたは対等な関係よ』
『互いの目的が同じ方向を向いているの』
『だから、私に協力しなさい』
『あなたに拒否権はないわ』
『拒否したら、あなたを引っこ抜いて、私も消滅するから』

「だものね。もっと、しおらしく。『どうすればいいんですかー』とか『あなたが私の体にいるってどういうこと?』ってくると思うじゃない」
「それが、『あなたは、私のクルーなんだから大人しく使われなさい』だって」
「こんなおっかないフォーク体だと知っていたら、憑依先に選ばなかったよ」
「しかも、僕がdappsの集合意識から生まれたって聞いてもちっとも同情しないしさ」

(同情は、してほしくないんじゃなかったのかしら?)

「気に留めるくらいしてくれてもね。君の場合、そもそも、だからなに?ってバッサリと切り捨ててさ」

(それに、おっかないフォーク体で結構よ。非道で外道なキャプテンさん)
(でも、あなたの頭脳と行動力は信頼しているから。役立ってもらうから)

「はいはい」
そんなやり取りをしながら、-3層へと向かうクニ達だった。


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