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5.7章 内燃機関

それから数百を超える手を重ねた。
互いの技、武器全てを出し尽くした様に思えた。

エントランスの対極に二人はいた。
互いの体は、ボロボロでないところを探すのが大変なくらいに傷ついていた。

イーサは、左目の上から出血していた。
それは、ソラナがイーサから掠め取った反撃によりつけられたもの。

対するイーサも、右目を瞑っていた。
イーサが一手出し抜く事で与えたダメージ。

互いが互いの健闘を称えるわけでもない。
しかし、笑い合っていた。

「いくわ。全開放よ」

「のってあげる。その提案」

2人の声を合図に空間が軋む。
体を構成する装甲が全て弾け、コントラクトが代わりに覆いつくす。
ソラナは、銀色のコントラクトを纏い。
イーサは、極光のコントラクトを纏う。
それらがトランザクションを放ち、互いの一番得意とする武器を構成する。

ソラナは、ハンドガン。
イーサは、ガントレットを手に纏う。

互いの全力。

(二人ともすごい。でも、どうして。私には何もできない)
(ううん。応援する為に来たの。だから、私の役目は)

「がんばれ!!!!イーサさん!!」
エブモスの左爪に施されたネイルの紋様が呼応する。
刹那、それは弾け、大きなリソースをイーサにもたらす。

「おっけーーー!!エブ子」
思わぬ方向からの声援に、気力を込めて答えるイーサ

「今の私、さっきまでの私と思わない事ね!」
ガントレットが変形していた。
より攻撃的な右手
より防御を意識した左手
それは、基本の型を繰り返してきたイーサに最適化された構成だった。

「わたくしも、あなた達の繋がりの強さ。わかるわ。だからこそ、負けられない」
「消えてしまった世界、大切な人達の為にも」
そういうと同時にソラナの左手が輝いた気がした。
朧げに緑色の髪をした少女の幻影が見えた気がした。
ソラナの胸元が輝く。
彼女のコアと融合させられていた銀のNFTがその姿を現す。
ハンドガンへとそれが合わさり、極大のライフルへと姿を転じた。
シールドの様な見た目のライフル。
それは、彼女が最も信頼した盾を模した武器であった。

「いきますわよ。あなた達」

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