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0.12-2レッスン

「今日の2人、動きのキレが何かちがうわね」
後ろで、曲の振り付けを見ながら、オズモがシークレットに問いかける。

「うん。なんていうか。吹っ切れたというか。互いの見せるところ見せ尽くしたというか」
「いい意味で、遠慮がなくなっている。そんな感じがするね」

「なるほどねぇ〜」

「オズモさん。また、変なこと考えてません?」
「オズモさんが想像する様なやましい事なんてないと思いますよ」
「それとも、自分のプロデュースしているアイドルに対して、そんな目で見ちゃうんですか?」

「それは、もちろん!ただね〜」

「ただ?」

「なかよき事は、よきかな」

「うんうん」
「きれいな言葉で丸め込もうとしても、今更、無駄ですよ」
「今度は、何を考えてやがるんですか?」

「あら!わかっちゃった?」
「流石、シークレット君」
「私の秘密を秘密のままに出来ないわ」

「何上手い事言おうとしているんですか」
「全然上手くないですよ」 
「それに、一緒に住んでいるんです。そのくらいは、読める様になります!」

「もぉー。嬉しいこと言ってくれちゃって!」
「『一緒に住んでます』って」
「でも、お姉さん。せっかくだから、シルクちゃんの時に言われたかったわぁ〜」

「あ”!?」

「ひぇーーー。シークレット君が怒った」

「はいはい。これでも飲んで落ち着くんだよ。2人とも」
そう言って、2人に冷たいお茶のペットボトルを渡す。

「んー!これぞ、お茶モス!ありがとう、エブ子ちゃん」

「お茶モスって、意味がわからないんだよ」
「っと!」
抱きつく体制になり、突進してきたオズモをエブモスは、軽いステップで躱すと、オズモの首に冷えピタを貼り付けた。

「んんー!冷たい!」
「頭が冴え渡るわ!って。エブ子ちゃん。どうしたの?そんなところで構えて」

「オズモさんがヒートアップしてたから、冷やしたんだよ」
「Juno姉ぇから教わった技だよ」

「なるほどね。エブモス。僕にも、後で教えてくれるかい?その技」

「いいよ!」
そんな3人を背景にレッスンに打ち込むアヴァリアとイーサ

「アヴァリア、次のステップで!」

「ええ。決めるわ!」

「あの2人、よくあの距離でクルクル回って歌いながら、足を踏まないものね」
うーん。と手を顎に着けながら、見つめるオズモ

「プロデューサーが何を言っているのさ」
「『互いに、そうね。融合するくらい激しく。ああ、核融合なんていいわね!それ、それをステップで表現してみましょう!』って無茶ぶりした人が言っていいセリフじゃないよね」
無責任な、と呟くシークレット

「2人ならば、出来る」
「私は、信じていたわ」

「掌返しが早すぎるんだよ!」

「いい。エブ子ちゃん。間違っていたら、すぐにその間違えを認めるの。それがいい大人の条件よ」

「それ自体は、正しいけど正しいけど!」

「言行不一致だね」

「うん」

「シークレット君は、辛口ね」

「オズモさんにだけだよ」

「特別扱い!?」

「負のね」

「にゃあー」

「やれやれ」

(しかし、ほんと、変わったよ)
(アヴァリアもイーサを認め、イーサもアヴァリアを信用している)
(それが、動きからでもわかる)
(君たちがどうして、そうなれたかは、わからない)
(でも、これだけは言える)
(この勝負、もらった!)
笑みを浮かべ、2人を見つめるシークレットだった。


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