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grass-2

そこには、金属質で茶色の大きな円筒状の機器が立ち並んでいた。
円筒状の機器には、次々と緑色の液体が注ぎ込まれていく。
複数の機器が連結されており、最後の機器を通り抜けて出てきた液体は、透き通る様な無色となっていた。

「これが、『grass』から精製されたリソースよ」
そう緑色の髪をした少女。
グラスは、エブモス達に説明した。

ここは、ファクトリー
彼女が、grassからリソースを精製している場所だった。

「ファクトリーね」
「いつ来ても、ファクトリーというよりは、錬金術師の工房。または、酒蔵と言った方が似合っている名前だと、わたくし思うのよね」

「ソラナちゃん!これ、すごけいい香りがするね」
「まるで、アイスクリームみたいな香り!」

「そうよ。少しこうばしいような。それでいて甘さを感じる香りでしょ?」
「これを更に寝かすという工程をふむと、使う樽によって、最終的な香りが大きく変わるのよ」

「なんだか、『リソース』っていうよりは、お酒みたいだねっ!」

「その認識は、あながち間違いではないわね。リソースでもあり、趣向品でもあるの。grassって」
「だから、需要があるのだけれど。さいきんは、AIやボットを育成するのに、この草自体が利用されているわ」

「どういうこと?」

「それは、『グラス』あれを見せてあげて頂戴」

「はい、ソラナさん」
「エブモスさん。こちらへ」

「うん!」

ファクトリーの横には、小型の上映室があった。
そこには、スクリーンとプロジェクター
スクリーンには、先ほどまで採取していたgrassとボットの映像が映し出されていた。

=grassファームへ、ようこそ=
そう、タイトルには書かれていた。

「へぇー」

「じゃあ、説明するわね」
「ソラナさんも、座ってください」

「わたくしは、いいわ」
「もう、既に知っていることだもの」

「視聴された方には、こちらもお付けしています」
そう言って、さっと、カップが渡された。
そこには、白い塊。
先ほどまで、ほんのりと漂っていた香りが凝縮され成熟された良い香りを放っていた。
ひんやりと冷気を放つそれは。

「アイスクリーム!grassのアイスクリーム!?」

「エブモスさん、正解!」

「わかったわ。そういうことなら、わたくしも『視察』として聞きますわ」

「すなおじゃないんだー!ソラナちゃん」

「ですよねー。まぁ、ソラナさんらしいと言えばそうですけど」

「二人とも!」

「「まぁまぁ」」

「ほら、はじまるよ!」
画面が動き始め、ナレーションが流れてきた。

「まぁ、ゆっくりしましょ」
最初は、むすーっとしていたけれど、grass のアイスをぱくっと食べていたら、そんな表情もどこへやら。
ソラナは、笑みを浮かべながら画面を見始めた。

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「なるほど!そういうことだったんだね」

「そうなの。grassの表面には、コントラクトで発現された特殊な力場があってね。それをボットなどの学習に利用しているの」
grassの解説ムービーを補足するように、グラスがエブモスに説明する。

「ソラナちゃんは、知っていたんでしょ?」

「もちろんよ。わたくしは、ここの外部監査役よ?」

「うそ!?」

「ほんとよ」
ちらっと、証明書であるNFTを提示する。
そこには、確かに『外部監査役 ソラナ』と書かれていた。

「あんな凄い笑顔でアイスをほおばりながら、監査する監査役なんてはじめてみたんだよ」
しらーっとした生暖かい視線をソラナへと向けるエブモス

「あっ、貴女だって、美味しい!って言ってたでしょ!?」

「美味しかったけど、ソラナちゃんみたいにとろけた笑顔はしてないんだよ」

「美味しいものを食べたら、それを全力で表現する。それが、命を頂くということ。感謝なのよ!」
頬を真っ赤にしながら、腕を組み、ぷんすっと音が聞こえてきそうな表情で、全力の主張をするソラナ

「なんか、また、正論っぽく言い始めたんだよ」

「まぁまぁ、あまり揶揄わないであげてください」
「ソラナさんがgrass好きなのは、私としては、ありがたい事なので」
そう正直すぎる意見を述べるグラスに『ナイスアシストよっ!グラス』と声にしているあたり、ソラナのテンションも相当上がっていた。

「あっ。忘れないうちに渡しちゃいますね」
そう言って、グラスはソラナに透明な液体が入った瓶を渡す。

「ありがとう。これだけあれば、なんとかなりそうだわ」

ピーーーーー
汽笛の様に音が鳴り響く

「グラス!」

「はい。ソラナさん」
「どうやら、ファームの方で異常が発生したようです」
端末を取り出し、カメラや検知機器を高速で参照するグラス。

「これは!」

「どうしたのよ?」
さっと、画面を見るソラナ
顔色が変わる。

「不味いわね」

「ソラナさん。いけますか?」

「ええ、行けるわ」
「エブモス、行きますわよ」

「うん!」

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