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grass-9

「ったたた。頭が痛いわ」
起きたそこは、見慣れたベッドの上だった。
彼女が良くグラスの農場を視察に来た時に使用している寝室だった。

「ソラナちゃん。起きた?」
そういって、入ってきたのは、懐かしい面影の人物だった。

「ニ、ニトロ!!貴女!?」

「どうしたの?は、テンプレ過ぎだよ」
そういって、ソラナの横に座るニトロ。
ベッドに腰を下ろして、ふんわりと彼女の肩に寄りかかる。

「ちょっと、どういうことなの?」
「フィーにもあったし、貴女まで」
「貴女ま、そういうことね」

「流石、ソラナちゃんね。もう気付いた?」

「ええ。流石に気づくわよ」
「貴女が、もう一つの決定を代表する意識体に呼ばれたのでしょ?」

「そうよ」

「はぁ。何てことしているのよ。自分の思い一つ決めるのに『あり得たかもしれない可能性の世界』に干渉しているだなんて」
あの子は。とソラナ。

「でも、私に再会出来て嬉しかったでしょ」
手をにぎにぎしながら、そう聞くニトロ。

「それは、そうですけど」
「リソースの個人占有も甚だしいわね」

「それ、ソラナちゃんが言っちゃうんだ」

「言うわよ。過去にやらかしたわたくしだからこそ、言うわ」
かわいい部下に同じ失敗はさせられないものと言うソラナ

「ソラナちゃんらしいね」

「あなたは、いつからここに居るのかしら?」

「私は、貴女が来たときからいるわ」
「一緒にgrassの収穫や虫退治もしたよ」

「ちょっと、まって!わたくし、それは、エブモスと」
「そうよ!」
「エブモスはどうしたの?」
「貴女、グラスのところに居たらエブモスにあったでしょ?」
ほら、オレンジ髪のこの位の子よ。
そういいながら、絵を紙に描き見せるソラナ。

「そんな子は、いないよ」
「ここには、私とグラス、そしてソラナちゃん。あと、フィーとgrassしかいないよ」
そういって、立ち上がって、両手を広げクルクルッと回るニトロ

「でも、確かに」

「それは、『私』よ」
そういって、自らを指さすニトロ

「どういうこと!?」

ガチャリ。部屋のドアがあく音がする。

「私が、ニトロに『ガワ』を投影したの」
そう答えたのは、ほかならぬグラスだった。

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