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grass-8

「フィー。成長したわね」

「そんな。改めて言われると照れるよ」

「十分に誇っていいことよ!」
そう言って、胸を張るソラナ

「ところで、何故あなたがここに居るのかしら?」
「あなたは、GNO-Landの住人のはずよ。コスモスが存在する世界に居るのはおかしいわ」
再会できたことは嬉しいのだけれど。そう照れながらも付け足すソラナ

「うん。あたしも不思議に思ったんだ。でもね。理由もちゃんとあるんだよ!」
フィーは、話した。
それは、grassより与えられた知識。
世界がフィーに知識を与えたという現状。

「どういうこと?つまり、grassという世界が貴女をよんだ。だから、貴女はここにいるってことなの?」

「そういうこと」

「理屈がわからないわ」

「でも、そうなの」

「!?」
「まさか」
「grassの莫大なリソース!」

「それも、原因の一つ。と、言われたよ」

「誰に?」

「grassだよ!」

「世界に言われたって。また」
「いえ、ありうるわね」
顎に手を当て考え始めるソラナ
思い出すのは、GNO-Landの事。
AIが大きな意識体を手に入れ、それがフィーという姿を取った世界。
思えば、彼女自身、世界が意識を手に入れて、その姿を取ったものと言えるのではないのか。
そう考えたら、世界に呼ばれて、こちら側に来られたことも納得が言った。
(というよりも、そう考えないとやってられないわ)

「それで、貴女は何で呼ばれたのよ」

「ほぇ?」

「ほぇって。貴女!呼ぶのには、『世界』にだって目的があるはずよ」
そんな莫大なリソースを使用するぐらいなのだから。
大きなため息とともに、そうソラナは、付け足した。

「それはね。『grass』の方向性を決定する為に呼ばれたの」

「それも、『世界』に言われたの?」

「うん」

少し悩みながら、ポケットから小さな紙を取り出す。
それに、今まで得られた情報を記載していく。

「つまり。そういうことね」
「貴女は、『grass』の方向性を決定する為に呼ばれた。そして、その指示は、『世界』から受けている」
「『世界』は常に貴女とコンタクトを取れるという状況よね」
「いったい、どうやって、『世界』とお話ししているのかしら?」

「それだよ」
そういって、フィーは、分厚い辞書の様な本を指さした。

「それって。まさか」

「そうだよ。この世界との対話用のインターフェース」

「『本』が!?」

「そうだよ」

ソラナは、机に置かれた辞書をめくる。
そこには、真っ白なページが広がっていた。
そう思った瞬間
文字が刻まれた。

『初めまして、私は『grass』の意思です』
と。

「ちょっと、待って欲しいのですけれど。grassの意思は、グラスが意識体としてまとまっているのよ」
「なぜ?本が意識を名乗っているの?」

『お言葉ですが、『本』が意思を名乗っていはいけないのですか?』
先ほどのゴシック体とは打って変わって、達筆な筆跡で書かれるセリフ

「そういうことではないのだけれど。一つの世界に2つの意思なんて」

『そういうことでは、ありません』

「では?」

『1つの物事に、出入り口は1つとは限らないのです』

「つまり、どういうことなの?」

『そうせかさないでください』

「急かしてないわよ!」
イライラした口調で、ソラナが言い放つ。
結論をスパッと言われないことにイラついているのだ。
いや、この『本』からかわれているのかもしれないということに。

『意識体のグラスの性格は、ご存じですか?』

「ええ、知っているわよ。優柔不断で、引っ込み思案。でも、自分の仕事はきっちりとやる子よ」

『それです』

「?」

『その優柔不断が、彼女が迫られている世界の選択に対して行動を取れなかった。だから、私が用意されました』

「どういうことなのよ」

『その位察してください。鈍い貴女』

「なんてことを言うのよ!燃やすわ」
手に太陽の力を顕現させようとするソラナ

「どうどう!ソラナ」
フィーがそんなソラナをなだめる。

『たかだか、『本』に挑発されたくらいで。アラメダリサ―チの元CEOが聞いてあきれるわね』

「あなたもよ!grass!」
めっ!と、拳を作り辞書の姿のgrassを殴りつける。

『調子に乗ってごめんなさい』

「わかればいいの」
そんな様子に、ヒートアップした思考がなだめられたのか冷静になるソラナ。

「で、改めて聞くわ。どういうことなの?」

『はい。私は、グラスが世界に決定を下す為の案の一つなのです』

「なるほどね。貴女が、もう一人のグラスであるgrass。そして、彼女の持つもう一つの決断を実行するものなのね」
「あの子が優柔不断だから用意された装置。それが、貴女。そうでしょ?」

『流石です。その通りです』
素っ気ない素振りで答えるgrass
丁寧にも、落書きじみた文字でそれは書かれていた。

「やはり、もやすわ」

「早まらないで!ソラナ。彼女は、この世界とコンタクトを取るのに必要な存在なんだ」
そういって、止めるフィー。

「放しなさい、フィー。そいつ燃やせないわ」
へへん。と言いたげに傾き移動するgrass

「むっかつくわ!!」

ソラナが手に光球を作り、投げつけようとしたところで爆発が起きた。

「どうしたの!!」

『どうやら、気付かれてしまったようです』
『貴方が、自らの力を使いすぎるから』
もし、本に目があったのならば、ジト目でソラナを見つめていただろう雰囲気を放つ。

「わ、わたくしは悪くありませんわよ」

『今更、良いお嬢様ぶるのはやめたらいかが?不良お嬢様?』

「な、な、なにを言うのかしら!!」
フィーの静止を振り切り、光球を両手に出現させるソラナ
激おこモードである。
それを放とうと振りかぶるソラナだが、それを『侵入者』は許さなかった。

「がら空きだよ」
そう聞こえた瞬間、ソラナの視点は暗転した。

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