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5.11章 次元の狭間

「僕としたことが、どうしたことか」
エブモス達の一撃を間一髪で逃れCosmosと高次元の狭間に逃げ込んだAFRO

「あいつらも、疲弊していたはず。幸いここには時間の概念がない」
「十分時間をかけて回復して、舞い戻ってやるとしよう」
「今度は、反撃の隙も与えずに消滅させてやろう」
自らが次元が下と見下している存在から受けた手痛い反撃により、死の恐怖を味わったAFRO
そのストレスの為か考えていることを大声で叫んでいた。
しかし、ここは誰もいない、ただの狭間。
ブロックチェーン世界と創造主の次元の間。
そこに干渉出来るのは、創造主側の次元にいるAFROだけだった。

ただ、独りを除いて。

「もう、これ以上、彼女達の世界に干渉するのはやめにしてくれないか」

圧縮が始まる。
それらは、AFROの存在を燃料として動き始めた。
「まて、まて、まて!!!」
「痛い、痛い、痛い!!」
高次元の存在であるAFROは、その体に神経なのどは存在しない。
ただ、疑似的に感覚器官を生成して、対応していたのだ。
痛みなどとっくにコントロール下に置いているはずなのだが。

「ぐぐぁぁぁぁ!!」
「やめろうぉ!!」

その動作は、痛みを与え続けていた。
AFROに施されたコントラクトは、AFROを圧縮、引き延ばすことを繰り返す。
それらは、AFROを構成する超高密度のリソースを利用して行われる。
AFROを構成する疑似意識体の細胞全てを設計するナノサイズよりも小さな紐をぐちゃぐちゃにして、それを引き延ばす。
ばねの様な動作を繰り返させる。
その体が白色の光を放つ程の速度で。

悲鳴はやがて轟音となり、その音からも振動が生まれる。
AFROの体は、やがて球体となり、そこからは莫大なエネルギーが生じていた。
それこそ、一つのブロックチェーン世界を生み出すのに等しいだけのエネルギーだった。

球体は、次元の狭間を歪め、ブロックチェーン世界へと落ちていく。
複数の因果を巻き取りながら。
エネルギーを生み出す塊となったAFROを中心に次元が巻き取られる。
くるくるくるくる。

布の様に巻き取られた次元がやがて一つの世界を形成していった。
大きな平面に限られた宙、そして、リソースの沼が殆どを占める世界。
後に、GNO-LANDと言われる世界が誕生したのだった。

AFROの存在を薪として、作り上げられた一つの揺らぎ。
かつて、彼が滅ぼしたに等しい世界。
その清算は、彼の命を持って行われたのだった。

いや、正確には、され続けたといえるだろう。
何せ、彼は消滅することが許されない。
彼の中の莫大なリソースを消費しきるまで、そのコントラクトは彼を燃料として世界を回し続ける。
だれかが、そのコントラクトを解かない限りは。

もっとも、高次元世界とブロックチェーン世界すべてを巻き込み事件を起こした存在を救う者など、もう、どこにもいなかった。


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