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4.15章 前線基地

(これだけの数、これは中々)

「閣下、この数は!」

「うん。インジェ君。これは、ちょっと、多すぎるかなぁ」
彼女達がいるのは、前線基地
今から、増えすぎたボットを斃すといらう重要なミッションなのだが、その数は、想定を大きく上回る数だった。
ボット達は、かつてセンチネルが張り巡らせた防護壁により、一定範囲からは踏み込めないものの、ぎちぎちと音を立てては、彼女達を威嚇している。

(こんなに増えているだなんて)
(事前に検出されていた未知の粒子、ひょっとしたら関連している可能性もありそうね)
(解析は、まぁ、後でクレセントにお願いすればいっか)

「インジェ君」

「何でしょうか」

「本隊の指揮、よろしくね」

「また、前線に出るおつもりですか!」

「はじめから、そのつもりよ」

「閣下は、後方でゆっくりと構えていてください」

「私から、仕事を取り上げる気?」

「いえ、そのような事では、決して」

「ごめん、からかっちゃった」
「でも、私が前線に出てインジェ君がサポートに回った方が安全だってわかっているでしょ?」

「ですが」
 
「それに、これはジノとの約束でもあるの」
「前線に私が立ち続けることを許可する」
「それが、将軍を拝命したときの条件よ」

「」
「わかりました」
「今回も、無事帰還してくださいね」

「もっちろん!」
「さぁ!みんな行くわよ!」
「インジェ君、後方支援お願いね」

「わかりました。いってらっしゃいませ閣下」

「おっけー!」
そういうと、センチネルは駆けだしていた。
ポットがひしめく最前線、シールドを横なぎに振り払う
すると、透明な被膜である防護壁へとシールドが作用し、センチネルの通行を許可する。
センチネルのみがボットの集団へと接敵し、もう一度、シールドを難ぎ払う。
彼女の周辺にいたボット達がシールドの一撃によってなぎ倒される。
同時に彼女の展開した新しい防護壁が数百メートル先までを囲う、丁度、前線基地と彼女がいる間に互いに引くことの出来ない戦いの場が設定される。

「さぁ、みんな、倒しちゃって!」
そういうと、センチネルはシールドよりトランザクションを放ち、予め登録しておいた意識体に対して通行許可を与える。
通行許可を得た意識体は、センチネルの防護壁を潜り抜け、前線へと降り立ち、センチネルの近くに並び立つ。

「みんな!閣下を援護しろ」
「敵を打ち倒せ!」
怒号か響き、弓兵が銃を構える。
巨大なガトリング砲の様な銃は、対ポット用に特化した殲滅兵器だった。

それを次々と撃ち放つ。

高速でガトリングは回転し、鋼の嵐でボット達を撃ち抜いていく。
鋭利な攻撃用器官を持つボット達が一歩も進む事を許されず打ち倒されていく。

「交代!」
その一言と同時に量前列の兵士たちが後面の兵士たちと入れ替わる。
後衛の兵士たちが持っていたのは、遠距離用のライラル
巨大なアーモンド状の弾丸が装填されたそれを構え、掃射する。
ガトリングで掃討された後衛に控える中型ボット達のコアを撃ち抜く。
次々と正確な狙いで放たれるそれは、中型ボットのコアを射抜き殲滅させていく。

「交代!!」
巨大な剣を持った兵士たちが隊列を組み、剣を肩に担ぎ構えをとる。

銃と剣が一体化したような武器、いや、それは銃というには巨大であり、まるで大砲だった。
大砲と大剣が一体化したような破壊兵器
それを持ち微動だにしない兵士たち

「みんな!強化いくから、一斉に!」

「「「はっ!」」」」
答える兵士たちの体が碧色の被膜に包まれる。
彼らは奇声を上げながら、センチネルが新たに張り巡らせた防護壁の一番奥にいる大型ボットへと切り込んでいく。
巨大ボットは、銃撃で彼らを蹴散らそうとするが、それらはセンチネルの張り巡らせた碧色の被膜と彼らの鍛え上げられた筋力の前では意味をなさなかった。

「キェーーーー!!!」
肩に担いだ大型の剣を大声とともに両手で振り下ろし放たれる。

「チェストォーーー!!!!!」
一瞬必殺のその斬撃に大砲の様な銃撃が一体となり巨大ボットを両断する。

一人一殺

巨大ボットを両断すると、剣を地面に突き立て、砲身を冷却する兵士たち。

大剣の様な破壊兵器は、赤色を放ち、放熱を行う。

強力な一撃は、武器にも彼らにも強い負荷を強いるのだった。

「みんなお疲れ様!ゆっくり休んでね。じゃあ、領域。広げてくるから」

「はっ!」
兵士の号令を背に受け、センチネルが再び駆け出す。
そして、再びシールドを薙ぎ払い戦線を拡大していく。

展開される戦いを解析しながら、トランザクションを放ち支援をするインジェと複数の部
下たち。

「副官、閣下はいささか前に出すぎているのでは?」

「知ってるよ。ただ、止めても聞かないだろうさ。あの人は」

「だから、僕たちが全力で、その分を援護すればいいんだ」
「そんなのいつものことだろう?」
やれやれ、とでも言いたい雰囲気で言うも、
その言葉には、自分たちが『この勇ましくも明るい英雄様を支えるのだ』という思いが滲み出ていた。

「さぁ、後ひと頑張りだよ。やろうか」

「はい!」

「君は、ガトリング砲部隊のメンテ」
「君は、長距離砲撃隊のメンテ」
「君と君は、そうだな。このコントラクトと薬を使って、強襲隊の大剣と兵士のケアをしてくれ」

「じゃあ、いってきて!」

「はっ!」

「よし!後は、戦力分析部隊のみんなは、僕と一緒に継続して戦況の分析と支援だ」
「いいね!」

「はい!」

「よし」
そこから、細かな支持も含め、全てを数分で終えて、最前線のセンチネルに連絡を入れる。 

「閣下、戦線の基盤が整いました。次の一撃、お願いします」

「おっけー!インジェ君、ありがとう!」

「いえいえ、恐れ多いです」

「じゃあ、前線のみんな、いっくよー!」
そういって、センチネルが再びシールドを振り上げる。

この繰り返しだった。

それを敵ボットの状態に応じて、細かく作成を変更して領士を広げる。

それが、センチネルの戦い方だった。

まさに、守りをする事で攻めを行う。
そんな戦いだ。

人員に余裕は無いが、しかし、無駄もない。

それが、1つのイレギュラーによって、破綻することになった。


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