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3.75章 イーサさん

「エブ子には、手を出させないわ」
そういって、キャプテンの武器を受け止めるノノがいた。

「反応速度は、上がったようだね。でも、それで続くと思うのかい?」
自らが抱える取り込んだフォーク体達の膨大なリソースに身を任せ身体強化を行うキャプテン
深紅の光に包まれ攻撃の起点として超加速でノノへと伸ばした腕は、叩き落された。
彼女の腕の一振りで。

「ん?おかしいなぁ。今のはいけるはずだったんだけど」

「キャプテン、あなたの我儘もここまで。そろそろ終わりにしましょう」
全く別人なのに、どこか懐かしい話し方で語り掛けてくるノノ
その様子は、まるで

「PoWか」
「なるほど、君が依り代に選んだのは、その少女なんだね」

「それは違うわ、キャプテン。私は、私のままよ」
「PoWという子は、私に機会だけ提供して消えていったわ」

「ほう、ならお前はだれなんだ?ノノか?ゼロなのか?だが、そうすると僕の一撃を躱す事が出来たのもおかしな話だ」

「何故、おかしな話なの?」

「だって、自分で言うのもなんだけど、あのスピードだよ。よけられるものじゃないよ」

「やっぱり、違和感に気付かないなんて、キャプテン。あなた、借り物の力で戦っていたからね」

「借り物?何を言っているんだい?これは、僕の力だ」
捻るように自分の体を使い、片手に構えた剣から必殺の一撃を繰り出す。
それをノノは、難なく受け流す。

「なんだよ。これも受け流すのかよ。PoWの力を借りて、パワーアップなんて王道すぎるんだよ!」

「あなたが邪道すぎるのよ。キャプテン。自分で鍛えた力で戦ってみなさい」

キャプテンが連撃を放つが、そのすべてがノノに受け流される。
まるで、一番初めに対峙したときのように。

「ちょっと、待って」

「何?って言われても、待ってなんてあげないけど」
ノノが放った掌底がキャプテンのコアを捉え、勢いのままにキャプテンが吹き飛ぶ。

「僕の技術、戦闘経験。その全てをどこにやった?さっきまであったヴィジョンが全く浮かばないぞ!」

「やっと気が付いたのね」

「何をしたんだ」

「私は、何もしていないわよ。ただ、あなたが奪ったフォーク体やMakerDAOの技術や経験があなたから離れただけよ」

「おい!だけって。どういうことだ!」
「あれは、僕の力だぞ!」

「違うわ、あの力はフォーク体、そしてMakerDAOが研鑽して手に入れた経験と力よ」
すかさず距離を詰め、キャプテンの右腕付け根へと体を密着させ、重心に体を合わせ投げ飛ばすノノ
キャプテンは、抗議の声も上げる事が出来ず、そのまま地面へと叩きつけられた。
ノノは、そのまま、キャプテンを押さえつけた手とは反対側の手を握り、拳から深緑の光を放ち、キャプテンの右手のライフルと結合した部分に一撃を放つ。

「1つ目」
そう言って、放たれたストレートはライフルと腕の融合した箇所に炸裂し、彼の武器をバラバラに破壊した。

「ったい!」
武器破壊と同時に緩んだ手の拘束を力ずくで振り払い、ノノから間合いを取る。
左手に残ったライフルから射撃を連続で放ち、ノノを仕留めようとする。
連続で放たれたとは言え、一撃一撃がかすっただけで致命傷を負うくらいのエネルギー量を保有した射撃だった。

「何言っているの?あなたに経験を奪われたフォーク体やMakerDAOはこれくらいじゃ根をあげなかったわよ」
そういいながら、射撃をかいくぐり間合いを詰めるノノ
波の流れに身を任せる様に、攻撃の合間を動いて移動してくる。
必殺の一撃は、どれもノノにはとどかない。

「2つ目ね」

そういうと、ノノは手を伸ばし、キャプテンの左手のライフル部分へと打つ。
まるで、日常的な動作のように自然と行われた一撃は、キャプテンの武器へと至ると貫き破壊した。
一見、自然すぎる動作
しかし、その実は、ノノの全身の運動エネルギーが乗った一撃だった。

「何をした!」
高速でノノから距離を取り、残った片手剣を狙撃用ライフルに変形させ、ノノのコアを狙い高威力の弾丸を放つ。
音を置き去りにした物質の塊が、ノノのコアへと迫る。

「普通の貫手よ。そんなこともわからないの?」
まるで出来の悪い生徒に諭すように告げるノノ
狙撃用ライフルから繰り出された一撃を躱し、弾丸に指をあてトランザクションを作用させ回収する。

「3つ目ね。これで終わり」
そういって、弾丸を放り投げるとストレートを叩き込む。
ノノによって運動エネルギーを新たに得た弾丸は、音速を軽く超えライフルの銃口へと入っていき、破壊した。

「くっ」
武器を放棄し、ノノとの距離を更に確保するキャプテン
(接近戦は、まずいな)
(ならば、遠距離から攻める)

体内のリソースを励起させ、トランザクションを放ち身体能力を更に強化し手を前にかざす。
彼のかざした手から、数百メートル先、ノノの目の前に巨大な火球が出現する。

「消えてしまえ!」
掛け声とともに、それらが収縮、爆散しようとする中、ノノは火球へと手を突っ込んだ。
入れた手を火球内のエネルギー対流とは真逆に動かし、巻き取り、解体した。
彼女の手の動きとともに解体された火球のエネルギーは、彼女の手に回収された。
回収されたエネルギーがそのままノノの両手に付与される。
彼女の手はまるで太陽の様な眩しい光を放っていた。

「くそっ!そんなことができるのかよ!」
悪態をつきながら、再び手をかざそうとするキャプテン

「だったら、もっと大量に高速で」
しかし、その腕がかざされることはなかった。
一瞬で、数百メートルを走破したノノは、自らの腕を高速でキャプテンの頭へと伸ばし、掴み、勢いのままに地面へと叩きつけた。

「!!!!!」

「痛がる暇なんてあたえないわ」
そういうと同時にノノの左手から放たれた連打がキャプテンの全身に降り注ぐ。

余りの痛みと打ち付けられる衝撃に声すら上がらない。

「あなたが八つ当たりで消してきたdappsとフォーク体は、これ位じゃ諦めなかったでしょ?もっと抵抗したら?」
手を一切緩めないノノ
刹那の間に放たれる連撃の雨は、数秒間にも及んだ。
極限まで身体強化したキャプテンの体も、ノノが吸収した火球のエネルギーにより、普通にダメージが通る状態になっていたのだ。
しかし、それはキャプテンにとって災いでしかなかった。
もし、強化していなければ一瞬で死ねたものを永遠とも思える苦痛が繰り返される事になったのだから。
(痛い痛い痛い!、ちょっと、もう無理!これ)

もし、彼に思いと覚悟が十分にあったのならば痛さに打ち勝ち、無理やり体を動かしてノノに体当たりをすれば、事態をひっくり返すことが出来たのだ。
それ程までに彼の身体強化と能力は完璧だった。

だが、彼には覚悟と思いが足りなかった。

「あなたの思いに応えるわ、キャプテン」
「すべての行いを清算しなさい!」
そういって、頭を押さえつけていた手を放し、予備動作無しで放たれた渾身のストレートは彼のコアを打ち砕いたのだった。

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