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grass-14
グラスの声が聞こえなくなってから随分進んだと思う。
草木をかき分けた先にコテージがポツンと立っていた。
それは、金属製だが、その表面にはツタが絡まり、自然と融合とまではいかないものの、その一部として受け入れられていた。
「ここで、少し休みましょう」
だれとはなく、そう呟くソラナ。
コントラクトによる身体強化をせずに踏破した影響か、無意識化に少し疲れが滲んでいた。
扉を見つけ、迷うことなく手を翳す。
そうすれば開くとわかっている様に。
すると、金属製の扉はスライドし中へと入ることが出来た。
(どこか、そういうところ真面目なのよね。あの子)
グラスのことを考えながら、部屋へと入る。
手前には、生活感のある家具。
そして、テーブル。
奥には、ベッド。
少し曲がったところには、バスルームが見えた。
「とりあえず、シャワーね」
汗をかいてしまったから。
と、ソラナは、バスルームに向かった。
(ここまで、用意するなんて。あの子何を考えているのかしら?)
風呂場の手前には、ソラナの体にぴったりと合う部屋着があった。
そして、洗濯機と思われるものも設置されていた。
(せっかくなのだから、使わせてもらいましょう)
自分の服を脱ぎ、洗濯機に入れ、乾燥までをセットし風呂場へと向かった。
=====
「ひっろい!!」
それは、ソラナの記憶からしてもすごい広い風呂だった。
彼女の優れた視力を持ってしても、果てが見えない。
(空間をいじったわね)
「リソースの椀飯振舞ね」
「まぁ、いいわ」
そういうと、ソラナは一番近いシャワーを動かし体を洗い、風呂へと入った。
「んーーーー!気持ちいわぁ!」
そこにはソラナしかいないが、独り言が漏れる。
丁度良い温度に草木の良い香り。
バスエッセンス代わりのアロマ。
どれもソラナの好みに調整されたものだった。
ゆっくりくつろぎ、その大きな胸を湯に浮かべる。
2つの浮かぶ丸い球体は、まるで水球の様に浮かんでいた。
玉の様な汗を浮かべながら。
ガラッと、扉を開ける音がする。
湯煙に隠れてその本体は良く見えない。
気配から察するにソラナより大きく3mくらいはあるかと思われた。
ソラナは、ゆっくりとくつろぎながらそちらに意識を向ける。
そして、声を放った。
「あなた、何者なの?」
「わたくしは、ソラナよ。ここ。grassの外部監査役をしているわ。あなたは、だれ?」
堂々と、しかし、相手から引き出すように言葉を紡ぐ。
「先約がいましたか。失礼しました」
それは、紳士然とした静かな声で答えた。
「あなたは?」
徐々に湯煙が流されていき、その姿があらわになる。
そこには、おっきなデフォルメされた熊の姿があった。
「私は、ベア。と申します」
「こちらの小さな子は、ハニーさん」
横には、小鳥の大きさの蜂の格好をした女の子がいた。
「小さいは、余計よ!」
「あいたっ!」
「いきなり刺さないでください。ハニーさん」
「あなたが、小さいなんていうから悪いのよ!」
「それは、もうしわけない」
頭をかきながら、ハニーさんとよばれた存在に謝る熊。
「コントでも見ているのかしら?」
ソラナは。その平和だが、異様な存在のやり取りに額を押さえながら声を漏らした。
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