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grass-7

(視界は、回復したみたいね)
ボヤけた視界が回復し、辺りを見回し、状況を正確に把握しようとする。

そこで、見つけてしまったのだ。
懐かしい、エメラルドグリーンの髪の毛。
姿をみつけた。

「フィー!」
思わず叫んでしまった。
テーブルには、本が開いたまま伏してあり、ただ、所々に続きを読もうと努力した後が見える。
古めかしい本の端には、付箋が貼り付けられており、続きを読もうと栞が挟み込まれていた。

机に俯して、眠る、見慣れた友人。
かつて、ともにGNO-Landを駆け抜けた友。

説得しながら、隙あればヘッドショットを狙うソラナをして、叫ばざるおえない状況だった。

もう会えないと思った友人との再会。

駆け抜けた日々の思いが胸に込み上げてくる。
そこからの行動は、早かった。

ソラナは、フィーを抱きしめた。
ギュッと。
俯した彼女の小さな背中を強く。

「うぅーん。ん?にゃ?」
「お日様のぽかぽかした香り」

「フィー!」

「えっ!ソラナちゃん!?」

——————-
よいしょ。よいしょ。
「ちょっと待ってねっ!」
「作っちゃうから」

「いいわよ。そんなに気を使わなくて」

「ううん。いいの。久しぶりにあったソラナに振る舞いたいんだ!」
エプロンをつけて、キッチンに立つフィー
傍目から見たら、パタパタと母親のお手伝いをする子供。
しかし、手つきは違っていた。
きちんとした手際で食材を切り分け、料理していく。
魚の骨と肉を綺麗に切り分ける。
うすーく切った魚の切り身を皿に盛り付け、オリーブオイルを思わせる透明で薄い緑色の液体を一回りかける。
最初に煮込んでいたのか、鍋の蓋がコトコトと揺れていた。
火を止め、中身をお皿に盛り付ける。
そこに、こんがりとした色々の丸いパンをバスケットに入れテーブルに配置していく。

「はい!出来上がり」
「ソラナちゃん。めしあがれ」

「すごいわ!フィー!」
「いつの間にこんなに料理出来る様になったの!」

目の前の食事からは、良い香りが。
しかし、それ以上に友の成長が嬉しかったのか、キラキラとした目でフィーを見つめ、讃えた。

「破壊することしか知らなかったあなたが」
「こんなに立派なものを作れる様になって」

「そ、それは言わない約束でしょ!?」
思い出される惨劇
食材を粉々にし、焼けこげた物体へと変えた事件。

「フィーの食卓」

「それは、いっちゃだめ!」
うー、と涙目で抗議するフィーと笑顔で受け止めるソラナ。

互いにあり得ない再会を祝ったのだった。

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