見出し画像

grass-4

立ち尽くすエブモスに追いついたグラスが声をかける。
「大変なんだよっ!ソラナちゃんが消えちゃった!」
あわあわと手をばたつかせ慌てるエブモスにグラスは、ゆっくりと話しかけた。

「エブモスさん。まずは、落ち着いて」
そう言って、エブモスに緑色の液体を飲ませる。
それは、温かく湯気が上がっていた。

「良いお手前で」
ふぅー、と一息で飲み込むエブモス

「って、そうじゃなくて」
「これを見て」

そう言って、グラスにデータを渡す。
それは、索敵のトランザクションにより描画したファーム一面のデータだった。

ところどころ、ポツポツと点になったものが線で繋がれて、矢印で向きが記載されていた。
空間跳躍も含め、移動を記録したログデータだった。

「すごいですね」
「これなら、すぐに探せますよ」

「ソラナちゃんの消えたところには、何も点がなかったんだよ!」

そう言って、再び慌て始めたエブモスにグラスが諭す様に言う。

「点が無いのならば、無いということを見ていけば良いのでは?」

「?」

「エブモスさん。あなたのこのデータ。素晴らしいわ」
「grassが放つ小さな力場ですら、描画されているわ」

「でも、肝心のソラナちゃんの転移が記載されてないんだよ」

「まって、責めているわけではないわ」
「むしろ」
「この、grassの力場。相当小さなものなの。それが、こうもびっしり描写されているの」

「だから」

「ほら、ここを見て」
そこは、綺麗に何も描かれていない場所があった。

「ここだけ、綺麗に点も線もないでしょ?」

「そうだよ。そこは、ソラナちゃんが消えた場所だから」

「なら、それを起点に解析していきましょう」
「ほら、よく言うでしょ」
「情報に溢れているのであれば、無いところを疑えと」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?