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4.10章 星空の夜

温かな布団にくるまって、寝床につく。
「まさか、本当に戻ってくるとは思いませんでしたわ」

「だから、言ったでしょ?いい香りがしたら戻ってくるって」

「人のことワンちゃんみたいに言わないでくれるかしら!」

「でも、美味しかったでしょ?」

「美味しかったです」

「うん、素直でよろしい」

「ニトロって時々、お姉さんみたいね」

「ソラナに言われるとくすぐったいよ」

「そうかしら」

「そうそう」

「ネルは?」

「ネル姉ぇなら、もう寝ているわよ、ほら」

「むにゅーーー」
「むにゃむにゃ。いい気持ち」
「おにゃかいっぱい」

「えっ!うそ。寝言!しかも、可愛い!」

「ネル姉ぇは、可愛いんだよ」 
「ネル姉ぇも、眠ってしまった事だし、私達も寝ましょう。もう、遅いのだから」

==========
(眠れないですわ)
眠れないソラナは、布団を抜け出して廊下に出る。

「眠れないんだね」

「えっ、ニトロ。なんでいるの?寝たんじゃないの?」

「寝ていたよ。でも、ソラナが布団から出た音で起きちゃった」
「ソラナ、眠れない?」

「眠れないわ」

「うんうん。わかるわ。いつもとは異なる場所での睡眠。なかなか寝付けないよね」
「こういうときは、少し外気に当たった方が眠れるの」
「私のとっておきの場所に案内してあげる!」

「とっておきの場所?」

「そう!」
「ネル姉ぇでも招待したことないんだから!」

「いいの?」

「いいわよ。なぜか、ソラナには、そんな感覚を感じるの」

「ついて来て」
ニトロは、ソラナの手を引き歩いていく

扉もない、何もない突き当り、そこでニトロは、コントラクトを紡ぎトランザクションを放った。
既にあったかのように扉が現れる。

「気配も何も感じなかったわ」

「それはそうよ。これ、私の得意技!」

「さあ、行きましょう、ソラナ」
扉を開けると急な階段が有り、それを登っていく。
急な配の階段は、まるで梯子の様で、ほぼ垂直のものを登っていく。
3階くらいの高さを登り切ったところで、天井の板にたどり着いた。

「ニトロ、何もないんだけれど」
「ひょっとしてここも?」

「もちろん!」
そういうとニトロは、トランザクションを放つ
トランザクションの成立と同時に天井への窓が現れ、それが開かれる。

「行こっ!」
窓を抜けて、手を差し出すニトロ
それをにぎり、体を安定させ窓から外へとでるソラナ

ひらけた空から溢れる温かな輝き
「うそっ!」
満天の空にちりばめられたほし、ほし、ほし。
星で構成された空の川
川の水が太陽によって輝く光の様なものが星でできた空の川

「綺麗、なんて言葉すらいらないわね」

「うん。そうだよ!」
そういって、ニ人で空を眺める。

「てっきり真っ暗な空だと思っていたわ」

「でしょ!でも、真っ暗な空が多いのは本当よ」
「ただね。方向によっては、こうやってよく見えるところもあるのよ」

その言葉を聞きながらも、星から視線を離せなくなっているソラナ
その瞳からは涙が流れていた。

「どうしたの?悲しいの?」

「ううん。そうじゃないの」
「でも、言葉にできないの」

「いいんじゃない。そういうこともあるよ」
そういって、パタつかせていた足を静かにさせて、ソラナに寄り添う。
寒空の下で、ニトロに寄り添われ、その体温を感じる。

(あたたかい)
その温かさをもらい近くのニトロを感じることが出来ても、空に輝く光から目を離せなかった。

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