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Cinderellaでカオスを描く:面積保存型カオス

前節「Cinderellaでカオスを描く:繰り返し関数の分類」で分類した中の「(1) 面積保存型カオス」です。
式は,「Cinderellaでカオスを描く:鳥の翼」と似ています。$${x_{n+1}}$$ の$${y_n}$$の係数は 1  に固定で末項(定数)がありません。$${y_{n+1}}$$ の$${x_n}$$ の係数も$${-1}$$に固定で,可変とするのは $${x_{n+1}}$$ の第2項の$${x_n}$$の係数だけです。

   $${x_{n+1}=y_n+a x_n+\dfrac{5}{1+x_n^2}}$$
   $${y_{n+1}=- x_n}$$

この係数を−2から2まで変化させるとさまざまなアトラクタができます。
「カオスCGコレクション」(川上博著:サイエンス社:以下「この本」)には,係数を小数点以下2位までにしたものを34個載せています。次がその一例です。(51,53ページ)

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放射状のものから花のようなもの,鳥の翼で出てきたようなもの,顔のようなもの,シンボルマークのようなものなどいろいろあります。
どれも正方形の中に対称形に描かれていますが,実際にはそうではありません。図が小さくて見えませんが,縦横のスケールが異なるのです。左上の放射状のものは縦横比が 3:40 になっています。縦のスケール30に対し,横は400です。それを横方向に圧縮して縦横を合わせると放射状に見えるのです。(すこしわかりにくいでしょう,あとで実際に試します)
係数$${a}$$ を−2から2まで変化させるのですが,0.01 ごとに変化させると401($${a=0}$$も含む)の図ができることになります。実際には,0.01 増減してもあまり変わらないこともあれば,ガラッと変わってしまうこともあります。見出し画像は,はじめは閉曲線だったものを,係数を0.01 ずつ変えていったときの図の変化です。 
また,関数の反復回数などによっても異なる図ができ,着色すると趣の異なる図になります。したがって,バリエーションは400には収まらないでしょう。

では,これを「実験」しましょう。

リンク先を開くとつぎの画面になります。

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初期値は$${(1,0)}$$です。係数は $${a=0}$$ なので,$${x_{n+1}=y_n+\dfrac{5}{1+x_n^2}}$$ です。この場合は閉曲線になるわけです。
係数のスライダを動かして,この本に掲載されている図の1番目にしてみます。$${a=-1.98}$$ です。斜めに点が散在しています。着色は256色です。

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この本に掲載されている図とは似ても似つかないものです。何が違うのでしょうか。
前述のように,縦横のスケールが異なるのですが,それだけではありません。この本のプログラムでは,$${(x_n,y_n)}$$ をそのままプロットしているのではなく,変換してプロットしているのです。プログラムはちょっと違いますが,原点周りに135°回転すると同じ結果が得られます。
そこで,左にある円形スライダで135°回転し,縦横比を小さくしていくと次の図が得られます。回数も増やしました。

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回転と縦横比でここまで変わるのです。再度,念のために書いておきますが,計算のときにはこの図の点の座標を使うのではなく,プロットするときに変換してプロットしています。
このまま回数を変えてみましょう。いったん少ない方に戻すと,図の大きさが変わります。はじめは小さい図なのです。これがあるところから大きくなり,模様も変化していきます。

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初期値(緑の点)によっても図は変わります。次の3つは初期値以外は同じです。

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3つ目はカオスにはならず2つの閉曲線です。このスクリーンショットだと点に見えますが,Zoom で大きくしていくとわかります。

このようにして動かしていった様子を動画にしました。

こうしてみると,係数,初期値,反復回数,回転角,縦横比によって実にさまざまな図ができることがわかります。


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