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学び直しの算数:1年:数の表し方

4月初めの算数

 小学校1年生の算数,教科書は「10までのかず」からスタートします。
絵を見て1から10までの数字の書き方,読み方を学びます。説明はほとんどありません。国語でひらがなを学ぶので,4月入学時点ではひらがなも読めない前提なのでしょう。入学時には自分の名前はひらがなで書けるように,といわれているようですが,前提としてはすべて「これから学ぶ」のです。
 しかし,実際にはどうでしょうか。ひらがなの読み書きがすでにできる子,まだほとんどできない子,数を数えることはもちろん,たし算もできる子,できない子,と差があるのです。生まれた日も関係するでしょう。早い子と遅い子では1年近い差があります。保育園や幼稚園に行っていたかどうか,そこでどんな教育が行われていたか,そして何よりも家庭で何をしていたかによって,かなりの差があるわけです。ただし,その差は1年で解消可能です。解消できるかどうかは先生の指導によることが大きいのですが。
 それはともかく,4月初めの算数では,1から10までの数を学びます。おとなにとってはなんということない内容なのですが,「学び直し」という観点から,もう一度見てみましょう。

かぞえる

 家庭環境(保育園にいくかどうかや友達も含めて)によりますが,3歳ころにはものがかぞえられるようになるでしょう。ものを指しながら数えたり,単に数を指折りで数えることもできるようになります。指は5本ずつ10本ありますから(このことはまたあとで意味を持ってきます)10まで数えられるでしょう。こどもによっては,それ以上数えられるようになるかもしれません。したがって,小学校入学時点ではほとんどのこどもが10までは数えられることでしょう。そして,たとえば,3つのみかんを前にして「みかんはいくつあるの」と聞けば「3つ」あるいは「3こ」と答えるでしょう。水槽に金魚が4ひきいれば「4ひき」と答えるでしょう。このような,具体的な「3こ」や「4ひき」から,数としての「3」「4」を認識するのは抽象化と呼ばれます。そして「かぞえてごらん」と言ったとき,「いち」「に」「さん」「し」・・・ とカウントするのはこの抽象化ができているということなのですが,ほんとうにそうでしょうか。単に言葉として暗記しているだけかもしれないのです。
 たとえば,1から順に言うことはできても,「8の次は何?」と聞くとすぐには答えられなかったりします。1から数え直すからです。もちろん即答できる子もいます。
 数えることと,数の構造を理解していることは別だということを,まず頭に入れておきましょう。

「おおい」と「おおきい」

 たとえば,学校図書の教科書では,10までの数と0を学んだあと,「どちらが おおい」と「どちらが おおきい」という項目があります。これも説明文はないので,先生が説明するという前提です。ここで,先生がどのように説明をしているかが問題なのです。というのは,おとなにとっては「おおい」も「おおきい」も同じですが,こどもにとっては違うからです。
 「どちらがおおい」は1ページを使って,2通りの物(みかんや動物)の絵をならべています。ほとんどのこどもは,これを正しく答えることができるでしょう。

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(学校図書 さんすう1ねん 21ページ)

 次のページには,2つの数を並べて,「どちらがおおきい」と聞いています。

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(学校図書 さんすう1ねん 22ページ)

説明文はありません。はたして,先生はどのように説明しているのでしょうか。
というのは,「どちらがおおい」は簡単でも「どちらがおおきい」はそうではないからです。
 「どちらがおおい」は「6ぴき と 7ひき」のように具体的に比較ができます。数を数えて,「おおい」「すくない」というのは,日常でも使っていますね。しかし,「パンダ6頭とコアラ7頭はどちらがおおきい?」とは言いませんね。個数を数えるとき,「多い少ない」はあっても「大小」はないからです。
 したがって「6と7はどちらがおおきい?」と聞かれたら,数の大小とは何か,ということがわかっていなければ答えられませんね。「多い・少ない」と「大きい・小さい」は異なる概念なのです。
 「数に大小がある」ということを自然に理解するのはむずかしいでしょう。ここをきちんと説明して,その意味を理解させるのが授業の役目なのですが,はたしてちゃんとなされているでしょうか。このことは,次の「かあどならべ」にも関係します。

かあどならべ

 「どちらが おおきい」の次に,「かあどならべ」があります。0から10まで,ひとつづつ数字を書いたカードを順に並べるのです。「どちらが おおきい」が理解できたとしての次のステップなわけです。

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(学校図書 さんすう1ねん 22ページ)

 筆者は,数年前から小学校の先生と一緒に算数ドリルを共同開発しています。まず,先生から注文が出ます。教科書のここにある練習ができるようなソフトを作ってほしい,と。児童は何ができて何ができないか,何が苦手かは,現場の先生がよく知っているからです。それは,普通のおとなの考えとはかなり異なっています。「なぜこれがわからないのか」と思うことが多いのです。そこから,「数の概念をどのように認知しているのか」ということへの探求が始まります。

集合数と順序数

 ここまで読んで,「数」には,ものがどのくらいあるかを表す場合と,順序を表す場合があるということがわかったでしょう。前者が「どちらが おおい」で後者が「どちらが おおきい」「かあどならべ」です。銀林浩編著の「どうしたら算数ができるようになるか」(日本評論社)では,前者を「集合数(基数ともいう)」後者を「順序数(単に序数ともいう)」と呼んでいます。
 集合数については,次のWebページに説明があり,練習ページへのリンクもあります。

練習ページはこちらです。

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順序数については,次のページに説明があります。

練習ページはこちらです。

リンク先を開くと緑の「やさしい」「ふつう」「むずかしい」というメニューボタンがありますが,これが表示されていない場合は再読み込みをしてください。

10までの数について,数字の書き方,多い少ない・大きい小さいという順序性の理解ができたら,次はたしざんとひきざんです。